■「"アイデンティティー"/Identity」(2003年・アメリカ)
監督=ジェームズ・マンゴールド
主演=ジョン・キューザック レイ・リオッタ アマンダ・ピート レベッカ・デモーネイ
豪雨で何処にも行けなくなった男女が古びたモーテルに集まる。原住民墓地のすぐ近く、集まった中には囚人護送中の刑事もいた。そして次々と起こる連続殺人・・・。ヒッチ的要素、鍵のルームナンバーをカウントダウンに使ってだんだん人間が減っていくクリスティを思わせる仕掛け。う~ん、これは先達に敬意を表したサイコ・サスペンスなのだな・・・と思ったら大間違い。それはさらなる大仕掛けでひっくり返されてしまうのだ。これは誰もやったことがない方法だけに、なかなか面白い。実は思いっきり伏線は張られている(タイトルが既にそうなんだけど)けれど、巧くみんな引き込まれちゃうんだよね。
でもねぇ、あのひっくり返しかたによって、それまでの話はつじつまが合わなくても全くオッケー、何でもありってところが気になる人も多いだろう。正直僕もミステリーの謎解きを期待しただけに、ええーっ?それでいいわけ?というのが観た直後の素直な感想だった。おそらくこの映画を気にくわないとおっしゃる方々は、そのクチだろう。しかし、その大ネタをやっちゃった勇気には、恐れ入るし、ラストの結末だって一応の”おとしまえ”にはなっているから、よしとしましょう。
ジョン・キューザックはどうしても甘っちょろいお話が多い人だけに、この映画での彼は新境地ではないでしょうか(少なくとも僕には)。実はハードボイルド路線もいけるのかも?そう思えた。「フィールド・オブ・ドリームス」のクリーンなイメージがあるレイ・リオッタを、一度は信用させておいて観客を裏切る手は、もう「コップランド」で使用済みのネタだけに、こっちはまたか!と思ったけれど。
(2003年筆)