Some Like It Hot

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キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

サン・セバスチャンへ、ようこそ

2024-01-23 | 映画(さ行)


◾️「サン・セバスチャンへ、ようこそ/Rifkin's Festival」(2020年・アメリカ=スペイン=イタリア)

監督=ウディ・アレン
主演=ウォーレス・ショーン ジーナ・ガーション ルイ・ガレル エレナ・アナヤ

アレン先生の新作が映画館にかかる幸せ。ハリウッドでのバッシング(自業自得ではあるけれど)から、出演を拒む人々もいるし、出演者からもよく言われない昨今。製作の場をヨーロッパに移して撮った本作は2020年の作品だけど、映画館にかかってよかった。観られないかと心配していた。いろいろあっても、作品は作品で楽しみたいもの。

本作を観て思った。アレン先生、ある意味やっぱり懲りてない(個人の感想です)。主人公モートを演ずるウォーレス・ショーン、撮影当時70代後半。彼を主役に据えて、妻の浮気に悩みつつ、旅先で会った女医さんにほのかな片思いをする主人公を演じさせるんだもの。90歳に近づいたアレン先生だが、自分の分身である主人公像にまだまだそういうキャラクターを登場させるのは元気な証拠かも。おっさんの片恋と言えば日本人には「男はつらいよ」だけど、最後の方は寅さんも恋愛最前線から退いていた。その頃渥美清はまだ60代だったんだから。

本作はスペインの観光映画としても良いだけれど、映画ファンをニヤリとさせる描写が素敵だ。妻の仕事で嫌々映画祭を訪れた主人公が、毎夜ヨーロッパの名作映画の中に自分が登場するモノクロームの夢を見る。ウェルズ、フェリーニ、ゴダール、アレン先生のお手本イングマル・ベルイマンなどなど名作がパロディとして示される。「市民ケーン」のパロディ場面では、ちゃんと窓の向こうにもピントが合っているパンフォーカスも再現する芸の細かさ。クラシック好きにはたまんねぇ…♡と思ったけれど、知性をひけらかす主人公と重なって、観る人によっては嫌味に感じてしまうかもしれない。かつて映画を教えていた主人公モートは、さらに日本映画の知識まで披露して、場を白けさせてしまう。

そう言えば、前作「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」でも、エル・ファニング嬢に黒澤明やビットリオ・デ・シーカについて語らせたりしていたな。アレン先生の趣味嗜好なのだろうが、もしかしたらこれは現代ハリウッドに対する皮肉なのかも。いや僕の深読みかもしれないけど、
👓「これこそが映画だぞ。」
と言ってるように僕には感じられた。だって、「勝手にしやがれ」のパロディ場面とか、すっごく楽しそうだったんだもの。

妻スーを演じるジーナ・ガーションの衰えぬ美貌、ゴダールを演じたことがあるルイ・ガレルが新進監督の役。男と女のドラマ、まだまだ撮れるぜ、というアレン先生の心意気が感じられた。それしか撮れねぇじゃん、という感想も聞こえてきそうだけど。でも、男と女の話を、ちょっと笑えてちょっと切実に、安心して観られるレベルで撮ってくれるのはアレン先生しかいないもの。
👓「これが男と女だぞ。いろいろあってちょっと懲りたけど…いや、やっぱり懲りてねぇぞ。」
とアレン先生は、スペインの太陽の下で笑ってる気がした。





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