◼️「アラベスク/Arabesque」(1966年・アメリカ)
監督=スタンリー・ドーネン
主演=グレゴリー・ペック ソフィア・ローレン アラン・バデル キーロン・ムーア
「雨に唄えば」「パリの恋人」「シャレード」などスタンリー・ドーネン監督作がけっこう好き。これまでなかなか観る機会がなかった「アラベスク」をBSプレミアムで鑑賞。007映画でお馴染みモーリス・ビンダーが手がけたタイトルバックと、ヘンリー・マンシーニの音楽。「シャレード」同様にオシャレな印象。
エジプト象形文字研究をする大学教授デビッドは、国家を揺るがす陰謀にからむ暗号解読を中東某国の首相に依頼される。さらに首相は海運王ベシュラムから同じ依頼をされたら内情を探って欲しいと言う。ベシュラムの屋敷で愛人ヤスミンに身の危険があることを告げられ、彼女の手引きで屋敷を逃げ出すが、複数の追手が彼に迫る。ヤスミンは信頼できるのか、デビッドの運命は。
製作された60年代はスパイ映画も人気だった時期。しかしハードな話は控えめにして、昔から華やかな映像で観客を楽しませてきたスタンリー・ドーネン監督らしく、グレゴリー・ペックの余裕すら感じる気の利いた台詞、ソフィア・ローレンの美しい衣装の数々、鏡やガラスを使った撮影のアイディアが楽しい。複数の勢力が入り乱れる話なので、ストーリーは単純明快ではない。
しかし個々のシーンでは、凝った映像を交えながらも、何が起こっているのかがきちんと伝わる編集がいい。水族館で追われる場面、アスコット競馬場の群衆で起きる殺人、解体工事現場でクレーン車に襲われる場面、そしてクライマックスのヘリコプターに追われる場面は、こうした編集が光る。逆に、替え玉を見破る場面や、ヤスミンが正体を明かす場面は唖然とするほどお気楽。でもこの軽さが娯楽優先のドーネン監督らしさなんだろう。