Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

熱いトタン屋根の猫

2022-11-03 | 映画(あ行)

◼️「熱いトタン屋根の猫/Cat On A Hot Tin Roof」(1958年・アメリカ)

監督=リチャード・ブルックス
主演=ポール・ニューマン エリザベス・テイラー バール・アイブス ジャック・カーソン

牧場を営むビッグダディの誕生日に息子夫婦がやってくる。長男夫妻には多くの子供たち。即席楽団が退院してくるビッグダディを迎えようと待ち構える。足を骨折してアルコールに溺れる次男ブリックは、美しい妻マギーと関係が冷え切っている。原因は親友スキッパーの自殺、その親友と妻の浮気を疑っているから。ビッグダディの主治医は、息子夫婦にだけ父親の病状について真実を打ち明ける。
ビッグダディは財産目当てに取り入ろうとする長男夫婦を嫌っている。次男に譲りたい気持ちはあるのだが、アル中でクサっている息子は誕生パーティに顔を見せようともしない。

冒頭から短時間で、登場人物の置かれた状況と人間関係を観客に納得させる語り口が丁寧なのに長すぎない。そして、そこから続くのは、登場人物それぞれが抱く自分の考えや感情。妻マギーは愛情を示してくれない夫ブリックに。夫は許せない気持ちを。ビッグダディは次男を立ち直らせたい気持ちを。ビッグママは退院を祝って夫と場を盛り上げようとする。次男夫妻を口汚くて罵る長男の妻。

相続ってもめると本当に面倒。譲れない気持ちも、託したい気持ちも、投げ出したい気持ちもそれぞれだ。ブリックと語り合いたいというビッグダディの執拗さ。ブリックはついに黙っていた病状について口にしてしまう。

ブリックと親友スキッパーの間に同性愛的な感情がある、と匂わせる演出。映画が製作された当時は、性の多様性に寛容な時代でもない。マギーにキスされた口を拭く細かな演技でそれを示す。一挙一動から目が離せないし、台詞一つ一つを聞き逃せない。観ていて気持ちのいい家族関係ではないけれど、観客の集中力を途切れさせない。

エンドクレジットを迎えて思った。この映画に散りばめられた言葉が、どこまでが真実でどこまでが嘘なのか。医師がついた嘘からラストシーンで口にされる嘘まで、それぞれに思いがある。それは相手を信じさせるためのものであったり、相手の気持ちに沿うためのものであったり。嘘まみれの話の間に、本当の気持ちが示される。相手の気持ちを理解することの大切さが、この映画のメッセージなのかな。

なぜビッグダディは次男夫婦を可愛がるのか。「ビッグママと結婚した時、長男がお腹にいた」とのひと言の後、長男が相続について力説する場面で、実は長男は父親が違うのでは?と疑いながら観ていた。それは僕の考えすぎなんだろう。それぞれ思いのベクトルが食い違うけれど、そんな複層的な人間模様に引き込まれる。若い頃観てたらこの修羅場を見ていられなかったかも。

ビッグダディを演ずるのは、「大いなる西部」が素晴らしかったバール・アイブス。そしてビッグママは「レベッカ」のダンヴァース夫人(怖っ😱)役ジュディス・アンダーソン。







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