Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

アジャストメント

2011-07-02 | 映画(あ行)

■「アジャストメント/The Adjustment Bureau」(2011年・アメリカ)

監督=ジョージ・ノルフィ
主演=マット・デイモン エミリー・ブラント アンソニー・マッキー テレンス・スタンプ

※結末に触れています。未見の方はご注意を。
 「フィリップ・K・ディック原作」と言われると、僕ら「ブレードランナー」世代はどうしても弱い。きっと面白くて斬新なSF映画に違いない・・・そんな過剰な期待がつきまとうのだ。アーノルド・シュワルツェネガー主演の「トータル・リコール」はアイデンティティ探しのサスペンスが楽しかったし、スピルバーグ監督作の「マイノリティ・リポート」も凝った演出が面白かった。しかし一方で、フィリップ・K・ディック原作の映画は、原作とはかけ離れた内容の映画になることが多いものでもある。電気仕掛けの羊をペットにする未来世界に僕はサラリーマン的悲哀を感じたのだが、それがあんなハードボイルドな映画になろうとは。

 この「アジャストメント」の原作は「調整班」という短編。人にはそれぞれ定められた「運命」があり、それを逸脱しそうなことが起こると、どこからともなく調整班と呼ばれる人々がやってきて記憶を消したり行動を改めさせたりする。そんな世の中の秘密を知った男性が、運命に立ち向かうというお話だ。帽子(これが空間移動の道具だったりする)を被った男達が突然現れて、時間を止めてしまい、記憶を消去したりと忙しく立ち回る。彼らは、運命の成り行きをモニターする本のようなものをもち、出会うはずのなかった者が出会えば引き離そうとするのだ。うーん。星新一がショートショートに書いてもよさそうな話だよね。

アジャストメント―ディック短篇傑作選 (ハヤカワ文庫 SF テ 1-20)アジャストメント―ディック短篇傑作選 (ハヤカワ文庫 SF テ 1-20)
フィリップ K.ディック 大森望

早川書房 2011-04-30
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 マット・デイモン扮する主人公デビッドは若手有望株の政治家。彼は上院議員選挙に挑むのだが、パーティで羽目を外し過ぎたことをマスコミに叩かれて劣勢に。パーティで下半身露出で劣勢?いや、それは同情の余地なんかないんじゃない?とも思うのだが。スピーチの練習をすべく男子トイレに行く彼の元に、結婚式に紛れ込もうとして男子トイレに逃げ込んだ女性エリースが現れる。意気投合した二人はキスを交わす。そして彼女の言葉に勇気づけられたデビッドは、選挙の裏側を素直な気持ちで語るスピーチで、選挙には敗北しながらも好感を残すことになるのだ。さぁ、そこで調整班がやって来るが、メンバーの一人がヘマをやったことからデビッドに班の存在を知られてしまう。「彼女とは出会うべきでなかった。忘れろ。」と怖い顔のテレンス・スタンプに言われるデビッド。しかし数年後に通勤中のバスで再会。調整班が異変に気づいて動き始める。「3年間も同じ路線で通勤しやがって、しつこいヤツだ」という台詞が出てくる・・・職場が変わらないなら通勤路線が変わらなくても当然じゃない!と映画館の暗闇でツッコミ入れてみる・・・。デビッドは覚悟を決めてエリースとつきあい始めるが、再び調整班の手で二人は引き離されてしまうのだ。そして調整班側にデビッドの気持ちを理解する者が現れて、追いつ追われつの逃避行が始まる・・・。

 何とも健全なSF映画。調整班は”天使”と呼ばれているし、彼らの上司は運命を書き換えることができる・・・つまり神様なんだね。そしてデビッドが立ち向かう運命は、エリースへの愛を貫くこと。ラストは予想を裏切ることはなく、愛が運命を変えてしまう。いやはや王道の展開だし、かなりファンタジー色が濃い映画だ。ひねくれた大人でなく、ピュアな中高生がこの映画を観るときっとストレートに感動できる気がする。ニューヨーク各所を駆けめぐる二人の逃避行。ロケ地観光にも一役買ったのだろうか。

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