夫が自社の蟹を食べに行く日帰りツアーへ行くことになった。
ブレザーを着たので、カジュアルな姿で行けばよいのにというと、挨拶もあるのでという。半分仕事がらみかと思うが、半分仕事という仕事は不可解だ。わたしは、日々8時半から夕方の6時半まで会社に拘束されている。時々ゴルフという仕事も理解しがたいが、若い頃から頑張っていたので、よいであろう。
さて、このツアーの帰りは、尼御前で降りるので、迎えに来て欲しいという。しかし、到着予定5時半頃というので、わたしが迎えに行くのは早くても、6時半過ぎになる。
そこで、お迎え隊として白羽の矢が立ったのが、実家の父である。尼御前から家が近いので、迎えにきてもらおうかと言いつつ、過去の辛い事件(事件簿 爺の高速道路失踪事件)が頭によぎった。尼御前というだけでトラウマになっているのではないか。夫の会社でのお客様対応事例の、稀な例に付け加えられた珍事である。あれから何年も経って齢84歳となった父に迎えを頼もうという娘夫婦に呆れはしないか。
恐る恐る電話すると、母が出た。わたしは、恐る恐るの気持ちだが、母は図々しくと思っているかもしれない。母はふたつ返事だったが、夕方とはいえ暗いので、大丈夫かと心配したら、「わたしがついていくから」とのことだ。しかし、あの事件の時も母がそばにいて、注進しても、耳を貸さなかったのだ。心配はつのる。
とりあえず、実家までつれてきてもらい、わたしが会社の帰りに夫を実家へ迎えに行くという算段になった。暗い北陸の夕方だ。急いで仕事を終えて行くと夫はすでに両親と夕餉を取っていた。もちろん酒つきで。迎えに来てもらい、夕食まで食べているとは、なんということ。
しかし、父にしたら、婿殿に頼られて非常に喜んでいる様子。そして、あのトラウマを克服した様子。
母の鯖の煮付けは最高に旨かった。生きのよい鯖が手に入ったとか。