(前回からの続き)
ところで、これまでの実質実効為替レートはどのように変動してきたのでしょうか。これについて、この10年間(2004/10~2014/10)の推移をみたものが下記のグラフです。青い線が名目上のドル円の為替レート、オレンジの線が実質実効為替レートになります(出典:日銀統計)。
これをみてまず気がつくのは、両者が一致する期間はじつは短く、むしろ両者が乖離する期間―――名目レートと実効レートが互いに離れる期間のほうがトータルでみて長いこと。つまり、(交易面からみて)「まあこんなものかな」と感じられるレートが続くよりも円安とか円高に行き過ぎることのほうが多い、ということです。そしてその過度な円安と円高の時期が交互に現れる傾向も指摘できそうです。もっともこのあたりは、実効レートがおもに貿易額に基づいて算定されるものなので、わたしたちの肌感覚とは少し違った面もあるかもしれませんが・・・。
つぎにこれを時系列で追ってみると・・・なかなか興味深いことが読み取れます。10年近く前の2005年初旬からの約3年半は実効レートに対して名目レートが大きく上方へ乖離、つまり「行き過ぎた」円安となっていることが分かります。このとき何が起こっていたのかといえば、アメリカの「サブプライム・ローン・バブル」。そしてこれが2008年秋に急転換し、今度は実効レートが名目レートを上回る円高の期間が2012年いっぱいまで続きます。そのターニングポイントで何があったのか?・・・ご存知「リーマン・ショック」。で、それから4年あまり経った2013年初頭、三度目のモード・チェンジがあり、それ以降いままでの約2年間、かなりの円安状態が継続しています。そのきっかけとなったのは・・・いわずもがなの「アベノミクス」の実質スタート(2012/11)・・・。
―――といった具合で、明らかな円安局面と円高局面が、大きな内外の経済事象とフェーズを合わせて繰り返されていることが分かります。そして前者のときは世界金融マーケットが「リスク・オン」モード、後者のときは「リスク・オフ」モードであることも。このあたりに「円>ドル」、つまり円がドルに対して基本的には強い(安全な・インフレ率控除後の実質の利回りが高い)通貨である様子が反映されていると思っています。
で、この過去10年間の推移に照らして、あらためて現時点(2014/10)のレート「名目:1ドル108.03円、実効:同75.03円:実効レートに対して30%あまり円安」がどんなものかをチェックしてみると・・・これほどの円安(実効レートに対して名目レートが円安方向に大きく振れた状態)になっていたのは、2007年10月以来、じつに7年ぶりということになります。その前後の時期は米不動産バブル末期であり、同年6月にはこの乖離値がこの10年間で最大となっています(その翌月、「パリバ・ショック」が起こって同バブルは崩壊に向かった)。
こんなところをみると―――ドル円の名目レートと実効レートの円安方向の乖離率が前回のバブル最盛期とほぼ同じとなっている現状をみると、やはりいまのレートは「バブル・レート」なのだろうな、と感じてしまうわけです。もちろんそのバブルとは、先日こちらの記事に綴った、株式と債券の「双子のバブル」のこと。それと同時に、だからこそこのレートが長続きすることもないのだろうな、とも・・・。