世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【雇用の「質」が急に議論され始めた理由】雇用を口実にバブルをあおり続ける米FRB①

2014-09-09 00:01:15 | アメリカ

 現在のペースでいくとこの10月にも終了する予定の米連邦準備制度理事会(FRB)の量的緩和策(Quantitative Easing:QE)第3弾ですが、その後、FRBはどうしようというのか? 市場関係者ならずとも大いに関心を惹かれるところです。

 QEをやめる、ということは金融引き締めにかかるということ、つまりFRBは市場にばらまいたマネーを回収する方向に舵を切ることになります。で、常識的に考えればその手段は(政策金利の)「利上げ」とか、過去最高の4.4兆ドル(約462兆円!)を超える規模にまで膨張したFRBのバランスシートの縮小―――これまでに買い入れた国債等の資産の売却―――となるわけですが・・・。

 こちらの記事を含めて何度か書いているとおり、個人的には「FRBは利上げしない」し、「資産の売却もしない」―――より正確には「FRBには利上げはできない」し「資産の売却はできない」だろう、と考えています。長らくQEマネーという「麻薬」がもたらす恍惚感―――超低金利の借金が現出した資産バブル―――にどっぷり浸ったアメリカ経済にとっては、その「麻薬」が断たれた後の強烈な禁断症状=金利上昇は耐えがたいほどの苦痛となるからです。

 だからFRBの本音は緩和的な金融政策の継続でしょう。したがって利上げのようにバブルに水を差すようなことはしたくはないはず。それでもQEがまもなく終わる以上、何らかのメッセージをいまから発しておく必要がある―――引き続きバブル拡大が求められている、という大義名分を・・・。どうやらそれが「雇用」ということになりそうです。

 先月、米ワイオミング州ジャクソンホールで開催された毎年恒例のシンポジウムで、FRBのイエレン議長はこのあたりについて、アメリカでは労働力の活用はいまだに極めて低い状況にあり、労働市場は大恐慌以来最悪のリセッションからまだ完全には回復していない、との見解を示しました

 イエレン氏の懸念は直近のデータにも表れています。このほど発表された8月の米雇用統計によると、同月の雇用者数(非農業部門)は前月比で14.2万人増と、労働市場の回復の目安とされる20万人増に遠く及びませんでした。また失業率は6.1%と先月よりも改善しましたが、広義の失業率(不本意なパートタイマーとか職探しを断念した人々を失業者数に加えた率)は12.2%と、賃金や待遇などの面から見た雇用の現場の実態は依然厳しいままです。

 「というように、問題は雇用なんです。だから金融緩和を続けなければならないんです。」とイエレン氏はおっしゃりたいのでしょう。でもそれにはこんな弁解が続きます―――「だからといって、アメリカにはバブル以外の手がないから、とか、FRBには長期金利を制御する力がないから、というわけではありませんからね~」。

(続く)


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【シティ再上陸!?そのとき・・・】米シティバンク日本撤退が意味すること⑦

2014-09-07 00:05:03 | 日本

(前回からの続き)

 日銀の「異次元緩和」のもと、わが国で今後も「マイナス金利」状態が意図的に続けられると、昨年から今年にかけての一過性の現象と思われていた(?)日米の実質金利の関係「ドル>円」が恒常的なものになるかもしれません。そうなるとわたしたちはアメリカ以上の、ブラジルとかインドなみの激しいインフレに苦しめられるおそれがあります。

 そして「アベノミクス」以前はどんな外貨預金よりもパフォーマンスの良かった円預金の優位性が失われ、ドル預金等のほうが実質の利回りが高くなります。となればどこかの新興国のように、多くの日本人投資家が邦銀の円預金を解約し、ドル預金をするために外銀にやってくるようになるかも・・・!?

 そのとき、いったん日本(の個人向け銀行業務)から撤退していた米銀大手シティグループはふたたびやってくるでしょう。今度は無理をしてリスキーな投資信託なんて売り込む必要はありません。「ドル>円」なので自然とお金がドル預金に吸い寄せられるからです。こうしてシティを含む欧米系銀行はジャパンマネーをゲットすることができるようになりました。これは彼らを通じて米国債やEU諸国債の投資に回り、彼ら母国を支える力となるでしょう・・・(その逆に日本国債は売られて、わが国の長期金利がジワジワ上がるという悪夢が現実となるかも!?)。

 自行の窓口に並ぶ日本人の顧客の列を眺めながら、再上陸を果たしたシティ幹部は「サンキュー、BOJ(Bank of Japan:日銀)」とつぶやくでしょう。なぜって、鉄板と思われていた「円>ドル」の関係を日銀が「ドル>円」へとひっくり返してくれたわけだから・・・。

 ということでシティは、日本法人である「新」シティバンク銀行の社長に、感謝の意を込めて、現日銀総裁である黒田氏を招へいするのでした・・・なんてことが(黒田氏が同総裁を退任する予定の)4年後、現実になったりして!?

 ・・・もっともこれは、このさき4年もの長きにわたりグローバルな「リスク・オン」モードが継続、つまり欧米諸国のQEバブル(中銀の量的緩和政策がもたらす資産バブル)が無事に膨らみ続けたら、の話ですが・・・。

(「米シティバンク日本撤退が意味すること」おわり)

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【アベノミクス「マイナス金利」政策の先に待つ社会は・・・】米シティバンク日本撤退が意味すること⑥

2014-09-05 00:02:30 | 日本

(前回からの続き)

 米銀大手シティグループの日本法人がわが国における個人向け銀行事業からの撤退を決定したというニュースについて、主要通貨でもっとも高い「」の実質利回りに関連付けて、日本人の資産運用のスタイル(円預金偏重)とその合理性などについて思うところを綴ってきました。

 アベノミクス」はこのスタイルとそれを支えてきたシステムを根底から覆そうとしているように見受けられます。こちらの記事に書いたとおり、黒田日銀の「異次元緩和」による円安誘導で輸入インフレが起こり、昨年から現在にかけてわが国の消費者物価は3%超も上がりました。一方で日銀による国債の大量買いにより、もとより低かった金利はいっそう下がったため、差し引きの実質金利は年3%程度ものマイナスに・・・。つまりたった1年ほどで日本人のすべての円預貯金はそれだけ目減りしたことになります。前回述べた、円預金が万人に薄く広く成長の配当を与えてきたという構造があっという間に雲散霧消してしまいました(!?)。

 安倍首相・黒田日銀総裁ともに、これによりジャパンマネーが円預金(日本国債)から株などにシフトすることを期待しているのでしょう。たしかにこの先、ずっと「マイナス金利」状態が続いたら、資産の目減りを回避するために多くの国民が内外の株投資に乗り出そうとするようになるかもしれません。

 しかしここで気を付けなければならない当たり前の事実があります。それは、100%の投資家が大なり小なり元本を増やすことのできる円預金とは異なり、株をはじめとするリスク資産投資では「損」(元本割れ)をしてしまう人が必ず出てくるということ。株の売買はしょせんゼロサムゲーム。誰かが儲かるためには誰かが損をしなければならない。そしてその損得の確率は50:50・・・。まさに「丁か半か」の博打に似ています。

 いや、実際には50:50ということはあり得ないでしょう、とりわけ個人投資家にとっては・・・。世界のどの株式市場も建前上はすべての投資家が等しく開示された情報に基づいて公平公正に株式を売買できるところと位置付けられていますが、その実態は・・・アメリカで話題となったマイケル・ルイス氏の著書「フラッシュ・ボーイズ」が指弾するように、インサイダーまがいの取引や株価操作を意図した高速高頻度取引ができる、つまり秘密情報の収集力や資金力のある欧米ヘッジファンドばかりが勝利を収める賭場になっているとはいえないでしょうか。そして泣きをみるのは、「安倍政府が熱心に勧めるから」という理由でNISA(少額投資非課税制度)で株を始めた小鳥のような日本の個人投資家たち・・・。

 かくしてアベノミクスの政策的なマイナス金利誘導は、円預金を実質的に無意味化し、多くの人々の資産をリスク資産投資で失わせ、結果としてわが国を貧富差の大きな社会に変貌させることでしょう・・・(!?)。

(続く)

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【成長の配当を万人にもたらす円預金】米シティバンク日本撤退が意味すること⑤

2014-09-03 00:04:42 | 日本

(前回からの続き)

 本稿でこれまで綴ってきたことを振り返ってみてつくづく思うのは、しつこくて申し訳ありませんが、やはり円>ドル>ユーロ>新興国通貨」つまりわが国の「」こそが主要通貨のなかでは最強の通貨だということです。

 Too Big to Fail(大きすぎてつぶせない世界の主要29行)」の一角、アメリカ屈指の金融機関で世界中から資金を集めることができるシティグループですら正攻法で―――主力のドル預金で―――円預金、それどころか円のキャッシュにすら勝てない・・・。で、「円」以上の利回りをゲットするためには預金という「安全確実」路線を放棄して一か八かのリスク勝負!ということで投資信託等の拡販等に打って出るもこれまた失敗・・・。その過程で不適切行為を繰り返し、金融当局から業務停止処分をくらい、そんなこんなで顧客の支持や信頼を十分に得られず、結局わが国を去ることに・・・。この背景には「円>ドル」、ようするに彼らシティの元手である基軸通貨ドルの価値保存力が円のそれに及ばないという事実があったことは疑いないでしょう。

 一方、わたしたち日本人のこのあたりの感覚はどうでしょうか。「たしかに外貨建て資産投資には危ない印象がある。実際、損をした人の話もよく耳にするし・・・。だからといって円預金に魅力があるようにも思えないな~。何せ利息がほとんど付かないし・・・」といったあたりではないでしょうか。まあごもっともですが・・・。

 それでもわたしたちは無意識のうちに「円>ドル>ユーロ>新興国通貨」、とくに「円>ドル」の恩寵を得ています。それにより、石油・天然ガス・小麦・大豆といった輸入原材料の円建て価格の上昇率がドル建て価格のそれ以下に抑制され、衣食住の必須コストが低い水準で安定するということです。これを言い換えると、食費、光熱費ガソリン代など、日常の生活費が少しずつ下がればその分だけ、趣味やレジャーなどに回すことができるお金が増え、ささやかながら生活の質が向上するということになります(それが個人消費を活発にさせ、わが国の実質GDPの成長に寄与します)。このあたりは100均で「へえ~こんなものまで100円[税抜価格!]で買えるんだ」といった商品に出会ったとき、あるいはスーパーで「50ml増量!」と書かれたペットボトルのお茶をいつもの金額で手にしたときなどに誰でも実感していることです(卑近な例ですみません・・・)。

 いまの円預金の金利はご存知のように本当に微々たるもの。それでも」はどの通貨よりもこうした小さな「おトク感」をたくさんもたらしてくれる―――これこそ預金通帳には表れない「受取利息」とはいえないでしょうか。生活保護世帯から富裕層に至るすべての国民が薄く広く享受するこの恩恵こそ、日本経済の実質的な成長の配当であり、豊かさの増分だと思っています。

 そしてわたしたちは本能的にそれを知っている―――円預金、つまり日本国債が万人のための「打ち出の小づち」であることを。それが本稿上段でご紹介の「保守的だ」と評される日本人の預金偏重の資産運用スタイルに現れています。保守的ですって? いえいえ、「道理に適っている」といってほしいですね、日本のメディアならば・・・。

(続く)

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【欧米系銀行、新興国では「強さ」を発揮】米シティバンク日本撤退が意味すること④

2014-09-01 00:03:19 | 日本

(前回からの続き)

 前回、通貨の実質の利回りが「円>ドル>ユーロ>新興国通貨」となっているため、日本では顧客や資金集めに苦労するシティグループなどの欧米系銀行も、ドルやユーロに対して「弱い」通貨の国々―――新興国では一転して「強い」立場となり、容易にマネーを調達できることになる、と書きました。こうした国々では自国通貨の信頼性が低い(つまりインフレ率が高い)ので、名目の金利の高い自国通貨建ての預金であってもインフレ分を差し引いた実質的な価値は時間とともに目減りするリスクがあります。だから多くの人々は、少しでも自分の資産価値の保全を図ろうと、ドル預金やユーロ預金をするためにこれら欧米系銀行の窓口にやってくるわけです。このあたりは新興各国、とくにいまのアルゼンチンウクライナなどで顕著にみられる傾向です。

 ということは、ドルやユーロよりも実質金利が高い円は、新興国では両通貨以上に強さを発揮することになります。したがって、「最近の円預金の実質的なパフォーマンスは他の通貨建て預金と比べてもトップクラスです!」なんて具合に日本の3メガバンクあたりが本気になって各国で「円預金」のPRをしたら、けっこうな額のお金を集めることができると考えられますが・・・。

 ・・・実際には邦銀各行はそんなことはしないでしょう。そうやって外国で集金したところで、そのマネーの運用先が見当たらないからです。こちらの記事にも書きましたが、現在、わが国の金融機関は深刻な運用難に陥っています。そんなときにさらに内外で自行の預金残高を増やしても、適当な投融資先がない・・・結局はそのお金で高いのを承知で日本国債を買うか、それともまるごと日銀当座預金口座に「ブタ積み」が、それくらいしかないでしょう。まあ欧米系の銀行ならば顧客から預かったお金でマネーゲーム―――世界中のリスク資産投資に邁進するのでしょうが、堅実な邦銀がそんな危ない橋を渡るわけがない・・・

 その意味で、わが国の銀行数行に対して売却が打診されているとされるシティグループの日本法人「シティバンク銀行」個人向け事業の買い手が出てくるのかどうかは微妙な感じがします。同行は預金量こそ約3.8兆円と中堅地銀並みの大きさだそうですが、買収する側にしてみれば、これを譲り受けて自分の総資産を増やしても、それが収益向上にどれだけ貢献してくれるのか不透明だからです。そもそも日本事業のパフォーマンスがなかなか上がらなかったからこそシティはわが国から撤退しようとしているわけだから、その資産の中身がどのようなものか、何となく想像がつきそうですが・・・。

 それはともかく、今月にはシティ同事業売却の入札が開始されるとのことなので、その成り行きに注目したいと思います。

(続く)


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