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【国民総所得の増加に水差す異次元緩和】裏目に出た円安誘導③

2013-10-07 00:03:46 | 日本

(前回からの続き)

 前回までに書いたとおり、おもにエネルギー資源の輸入量の高止まりと円安誘導にともなう円建て支払額の増大のせいで貿易赤字は拡大傾向にありますが、わが国のトータルの経常収支はおおむね黒字を維持しています。こちらの記事にも書いたとおり、それは所得収支の黒字のおかげです。

 所得収支は円安になればそれだけ円で換算した受取額は多くなります。だから所得収支の黒字額を増やすためには円安が有利という見方もできるかもしれません。でも、人口減少の進行などの情勢から、中長期的にみて、わたしたちはもっと多くの利益を海外資産から得るための国家経済戦略をとるべきだと考えています。現状のレベルではまだまだ足りていないとも感じます。

 このあたりは安倍政権も重視しているものとみられます。6月初旬、安倍首相は「国民総所得を10年後に一人当たり150万円以上増やす」との方針を明らかにしました(勤労者一人当たりの賃金上昇目標額とは違うことに留意必要!)。

 「国民総所得」(GNI)とは国民総生産(GDP)に上記の所得収支を加えたもの。GDPには輸出額と輸入額の差がカウントされるため、「アベノミクス」の円安誘導で貿易赤字が増え続けている現状では、GDPは計算上は小さくなっていくおそれがあります(これに多くの国民が気が付きだすとマズいし・・・)。一方GNIならば上記の所得収支の黒字がプラスとして表に出てくるため、たとえ貿易赤字でも所得収支を加えた経常収支が黒字であれば日本経済は「成長」しているとみなすことも可能です。まあたしかに、所得収支の存在が大きくなってきた現状では、わが国ではGDPよりもGNIの動向に意識を向けた経済政策をとることは大切だと思います。

 しかしこの方向性は現行の「異次元緩和」とベクトルが合っているといえるのでしょうか。

 そもそも、貿易赤字を埋め合わせて経常収支を黒字にもっていけるほど多額の配当や利子収入を生み出した海外資産の多くは本邦企業や投資家が「円高」のときに購入等したもの。結果としてこうした投資行動がいまの所得収支の黒字という果実をわが国にもたらすとともに日本企業の「グローバル化」を促してきました。そしてそれはこれまでの円高、つまり強い円の購買力があったからこそできたことだといえるでしょう(円高外貨安で外貨建ての外国企業や鉱山権益等を相対的に安価で買収できたということ)。

 「円安」は一転、海外への投資等に対するわが国のアドバンテージを失わせます。円のバーゲニングパワーが外貨に対して弱くなるからです。したがってこのまま「異次元緩和」による政策的な円安が続けばわが国の企業による外国資産の買収等が滞るとともにこれらがもたらす利益が伸び悩む可能性が高まります。これは結局、上記のGNI増加戦略に水を浴びせることになるのではないか、と感じるのですが・・・。

 そして懸念されるのが、円高時とは逆の現象、つまり外国資本による日本企業や資産の買収攻勢です。

(続く)


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