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Straphangers’ Room2022

旧Straphangers' Eyeや習志野原の掲示板の管理人の書きなぐりです

京都市の迷走

2011-10-02 16:54:00 | 交通
前に「歩くまち」を標榜する京都を批判しましたが、その際に四条通の交通規制がクルマよりもバスやタクシーに影響が出ると指摘しました。

超満員でろくに乗れないバスを待つか、鉄道駅まで延々と歩くかしかなく、健常者にしか「おいでやす」とほほ笑まない異常な政策になってしまっている現在の政策ですが、10月1日からまた妙な政策の社会実験を始めたようです。

JR京都駅烏丸口で、タクシーの客待ち渋滞が深刻になっているとして、空車タクシーの乗り入れを8時から20時までの間全面禁止したのです。
烏丸口のタクシー乗り場に来るのは京都駅で客を降ろしたタクシーだけ、という徹底ぶりですが、実験初日、秋の観光シーズンの土曜日とあって、10時過ぎにはタクシー乗り場に100人を超える長い列が出来て、一時規制を解除して対応したとのことです。

もうここまで来ると「正気の沙汰」という言葉がまず頭に思い浮かぶわけで、駅のタクシー乗り場においてはまず需要があるというのに、駅に来るタクシーの数次第で供給が決まるというシステム自体がありえません。100人超の行列となると、10秒に1台が来ても1人1台なら16分かかります。これはそれこそ潤沢に空車があって捌く数ですから、降車するタクシーが来てから、という話だといったい何時間待たされるのか。

これから秋の観光シーズン本番とあって、休日どころか平日も相当な観光客が集中しますが、こんな状態で耐えられるのかどうか。206系統のバス待ちとタクシー待ちの行列が烏丸口の広場を埋めつくさないことを祈るのみです。


(2つの乗り場で206系統、急行100系統と臨時系統で捌いても行列が消えない:2007年12月)

それにしても鉄道網が不十分、バスは輸送力不足、という京都においては、タクシーへの依存度が高いのですが、それが使えないのではどうしたらいいのか。
もうこうなると「交通」というものは何のためにあるのかを履き違えた政策であり、「歩くまち」なんて気取らずに、「ガタガタ言わずに歩け!」とでも言ってくれた方がすっきりします。


(清水寺のあたりでは乗るのも一苦労:2011年1月)

今出川通、四条通、そして今回の京都駅烏丸口と、ものの見事に企画唐黷ノなっているのに、なんかやけになって目的と手段を取り違えてでも「結果」を手にしたいという歪んだものを感じると言ったら言い過ぎでしょうか。


(バス、タクシーが便利だって?:2007年4月頃はこんな宣伝をしていたんですけどね)

クルマが悪い、公共交通を使うべきだ、と美辞麗句を重ねても、そもそも「利用者の移動需要」にどう応えるのか、という原点を忘れてはいけないという好例だと言えます。

【訂正・補遺】
この社会実験ですが、京都市主導ではなく、業界団体とJR西日本が主体とのことです。
だから「歩くまち京都」は京都市主導だから正しい、という結論は早計で、こういう「実験」が罷り通るのは、やはり京都市の責任も大きいと言えます。

京都市に調整能力があるのであれば、今回の社会実験に対して何らかの「指導」はしているでしょうし、子供でも分かるような結果になったということは、市のベクトルも業界と大差がなかったということでしょう。

実験は10日間の予定を短縮することになるようですが、何とも不細工な結果です。




老後が危ない

2011-10-02 16:19:00 | 時事
厚労省の社会保障審議会年金部会は、9月29日に夫の保険料の半分を妻が負担したとみなし、厚生年金を夫婦で2等分する案を示しました。

これを受けた各メディアは相も変わらず「不公平な3号年金」と絡めた報道にしていますが、この改革案、とんでもない大改悪ということに気付いているのかどうか。そしてもしこの通りになると、最悪の場合サラリーマン世帯の老後は壊滅します。

そもそも3号国民年金自体が1号側に全く依存しておらず、1号側の負担で3号が賄われているというが如き「不公平」論はまさに為にする議論です。3号の負担はサラリーマンの2号だけで支えており、2号の保険料は3号導入時に上がっています。

ですから、サラリーマンの妻はずるい、という1号加入の自営業者の妻は、1人15000円の定額負担しか払っていないのですから、だったら収入比例で「2人分」を払っているサラリーマン並みの負担をしてから文句を言うべきであり、文句を言えるのは独身サラリーマンくらいでしょうが、こうした制度は「世代間扶養」であり、自分達を支えてくれる次世代を「再生産」しないのに受益できるだけでもありがたいと思うべきとも言えます。

さてこうした毎度の話はともかく、今回の改革案の最大の問題は厚生年金の「分割」です。
3号受給者がいる世帯の場合、夫(もしくは妻)の甲斐性で稼いでいるわけですが、その収入比例で決まった年金を半分渡すというのはどう考えても腑に落ちません。

その程度ならまだ感情論の世界ですが、最悪なのは、夫婦どちらかに先立たれた場合です。
というか、夫婦が同時(年金制度の話で考えれば同月)に死ぬということは、不慮の事故でもない限りそうそうあり得ません。しかし、今回の改革案ではどちらかが先立つと、収入が激減するのです。

現在、厚生年金受給者の夫婦がいるとして、それぞれの老齢基礎年金と、2階部分となる厚生年金の収入があります。
ここで夫が先立つと、世帯収入は妻の老齢基礎年金と、厚生年金の3/4の遺族年金になります。夫の老齢基礎年金が無くなるので、俗に言う「3/4」を割り込むのですが、それでも2/3以上は確保できます。
妻が先立つと妻の老齢基礎年金が無くなるだけなので、まあ8割程度は確保できます。

ところが改革案では、個人帰属になりますから、夫が先立つと、妻は自分の厚生年金だけ、つまり、現行の半分です。厚生年金部分で比較すると、75%→50%ですから、2/3になってしまいます。
妻が先立つともっとひどく、100%→50%と半分になってしまうのです。

こうした問題は、自分がそういう立場になったり、親世代に不幸があり、親の生活設計を見直すような機会でもない限り見えない話であり、現役世代にはピンとこない話だけに、老後の生活費が半減とか2/3になる可能性があるという今回の改革案がどれだけ危険かをもっと認識して声を上げるべきでしょう。

世帯の生活費が、完全に人数比例になっているとでも思っているのでしょうか。今回の改革案を出したボンクラどもは。一人身になったら家賃が半分とか、現役時代に購入していた家の固定資産税が半分になるわけはないでしょう。水道光熱費だって半分にはなりませんし、電化製品その他も1人1台じゃないでしょう。変動費である食費だって、2人の方が効率的に購入できますから、半分にはなりません。

この改革案、国の負担は減るし、厚生年金の半額を負担する企業も負担が減りますから、あの手この手を使って成立を図る可能性があります。しかし我々はこの段階で老後の収入が場合によって半減です、と言われても対抗策はありません。

そしてこういった不安に乗じて金融商品を売り付けて損をかぶせて儲けようとするハイエナどもが、「将来の年金激減!それに備えた資産づくりを!」と無知な中高年を騙すケースが多発することは火を見るより明らかです。

そもそも年金制度は世帯収入を前提にしています。そして世帯が次の世代を育成して、次の世代が負担するという世代間扶養の考え方が基本です。
まさに家庭、夫婦といった「健全な」社会をベースに置いている制度ですが、それが気に食わない原理主義者と、負担を減らしたい政府や企業の同床異夢が、この制度をどんどんおかしくしているのです。

北朝鮮のような家庭という概念が破壊された社会を目指すのか、と言いたくなるような改革です。
そして夫婦で働いてようやくかつて夫だけで稼いでいた収入になるまで労働分配率を下げるのでしょう。「家庭」である限り、一定の収入が確保されていれば、それが夫だけの収入でも夫婦フルタイムの共働きでも不満を感じにくいので、いつの間にか一人当たりの収入が激減するでしょう。

こうやって中国並みの労働コストを実現する気なんでしょうね。同床異夢、呉越同舟のベクトルが、不幸な一致を見せている。その表れが今回の改革案です。




まさかの差し替え

2011-10-02 00:44:00 | 交通
前にご紹介した山陽電車東二見駅の「明石のみなさん!いってらっしゃい!」ですが、驚いたことに半月も経たないうちに差し替えになっていました。


(先月下旬からこのデザイン)

通常ベースのデザインですが、せっかくの工場の地元らしいキャッチコピーが無くなってしまい、何か物足りませんね。


(前はこうだったのに...)




上海地下鉄事故

2011-10-01 23:59:00 | 交通
上海の地下鉄事故ですが、中国の体質に問題があるのは事実とはいえ、事の本質を理解せずに「中国叩き」に安住している感じが否めません。

中国のシステムはパチモンだからこんな事故ばっかり、とか、隠蔽体質や安全軽視が、と言う批判に溢れているわけですが、はっきり言ってしまえば、今回の事故、日本でも起きうるし、日本で類似の事故を何回も起こしているのです。

そういう意味では「どこでも起き得る事故」であり、日本も他山の石として認識すべき事故ですが、今の流れではそういうこともありません。

今回の事故ですが、大惨事となった高速鉄道の信号システムと一緒といった話は直接の関係はありません。要はシステムトラブルが発生した時の対応が杜撰だっただけです。
つまり、日本でもある「代用閉塞」「無閉塞扱い」での事故であり、閉塞システムが機能していないときの大原則である「間隔の確保」とそれを担保する「速度制限」が不十分だったがゆえの事故です。

ちなみに日本でも東海道線と鹿児島線で無閉塞扱いで進行し、制限速度を守っていなかったために前方の列車に追突した事故が発生しているのです。

こういうとき、日本ではどうしているか。故障したら復旧するまで動かさない、という一番ベタだけど確実な対応が主流ですし、動かす場合の安全確保は今回の上海と大差が無い、つまり、連絡を取りあって徐行するのです。

抑止を食らう側の立場で考えれば動いてくれるに越したことは無いのですが、安全確保という意味では非常に原始的な手段しか取りえないため、「止める」というベタな手段が一番確実であり、復旧を迅速にすることが本筋でしょう。