Straphangers’ Room2022

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恵方巻に続く歴史の書き換え

2015-01-03 15:28:00 | ノンジャンル
流通や外食産業などが広めた「風習」も多いですが、近年の成功例といえば「恵方巻」でしょう。
大阪の遊郭におけるローカル風習(しかも「お下品」な行事という話も)に目をつけた海苔業界と、弁当類の売上アップを狙うコンビニがタッグを組んだ格好で、21世紀になって爆発的に広まったのですが、更に貪欲に、「節分」は立春だけでなく四季それぞれにある、と年4回のイベント化を目論んでいますが、二匹目のドジョウと行くかどうか。

この「恵方巻」も、もっともらしい理屈や由来をつけて伝統行事のような顔をしていますが、昨年末にはこの手の「修正主義」というか、歴史の書き換えが目に付きました。

クリスマスといえばケーキとチキンとあって、イブや25日の晩は街角のあちこちでこれらを売る店と求める客の長い列、というのが風物詩となっていますが、そんな中で、「日本でクリスマスにチキンを食べるのはKFC(ケンタッキーフライドチキン)が広めた」という「伝説」がネットで広まっています。
1970年代のお話として、黎明期のKFCのエピソードのように扱われており、Wikiでも書かれていますが、まさに「恵方巻」のように歴史が書き換えられる瞬間にいます。

KFCは1970年の大阪万博への出店とそれに続いての全国展開ですが、その頃に日本の家庭には残念ながらクリスマスにチキンを食べる風習はありました。ただ、ああいう「フライドチキン」ではなく、「ローストチキン」ですが、鶏の腿肉をこんがりとローストし、足先の細いほうにアルミホイルを巻き付けて手でつかんで食べる、というのはクリスマスの定番のご馳走でした。

ローストチキンを家庭で作るのは、大きめのオーブンが必要なので難しく、肉屋で購入するにしてもそれなりのお値段になるので、手軽なフライドチキンを代替品として求めるようになった、というのが事実です。もともとローストチキンを食べていたからフライドチキンが受け入れられたに過ぎません。

ちなみにローストチキンですが、欧米でも代表的なクリスマスのご馳走です。米国ではこれが七面鳥になり、クリスマスというよりもどちらかというと感謝祭でのご馳走です。ただ米国では感謝祭からクリスマスまでの約1ヶ月が「お祭り気分」なので、広い意味ではクリスマスにローストされた鶏肉を食べる風習があるといえます。

余談ですが、ネットで「クリスマスのチキン=KFC由来」説を書いた人は、KFC上陸以前からローストチキンがあったと反論を浴びたそうですが、それでも懲りずに、チキンは主役にあらず、とKFC以前のチキンを否定しようと躍起になっています。
クリスマスの主役はケーキ、とのことですが、ケーキとチキンは二者択一ではなく、両方食べるけど、印象に残るのはケーキ(誕生日とクリスマスしか食べられませんからね)ということに過ぎないのに、どうしてもチキンをクリスマスに食べていたことを否定したいようです。

ローストチキンがまずありき、ということからわかるように、クリスマスにチキン、という風習は、クリスマスそのものがキリスト教徒でない一般家庭に定着した段階で、原型を保った格好で(原型に忠実に)定着していたと見るのが自然です。
KFCなどによるフライドチキンがメインになるのは、家庭で手の込んだ料理をあまり作らなくなった、という時代の変化に伴い、手軽に買えて、量も多くないフライドチキンが人気を得たということでしょう。
そして普段はフライドチキンが食卓に上っても、クリスマスくらいはローストチキン、という家庭もあるでしょうし、だからこそ肉屋の店先にローストチキンが目立つのです。






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1 コメント

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Unknown (一愛読者)
2015-01-06 02:58:42
クリスマスにフライドチキンを食べる習慣がどこから来たのか全く知らなかったので,大変興味深く読ませて頂きました。
恵方巻のほうは「関西由来の風習」とは聞いておりましたが,関西でもメジャーな風習ではなかったのですね。

恵方巻のほうは確かに「もっともらしい理屈や由来をつけて伝統行事のような顔をしてい」るという評価にも十分理由があると思いますが,これはこれで伝統の一つの進化形なのでは。
これは専門家の間でも評価が分かれるようで,安村克己のように「真正でない文化」「まがい物」と否定的な評価もあれば,エドワード・ブルーナーのように「新しい文化の再構成(=伝統・文化が再び人々の中に根付き,新たな発展力を取り戻した)」と極めて肯定的な評価もあるようです。私の意見は後者に大きく傾いているというのが正直なところでしょうか。
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