Straphangers’ Room2022

旧Straphangers' Eyeや習志野原の掲示板の管理人の書きなぐりです

不足と無理を自覚することから

2019-07-05 21:09:00 | 交通
その神戸空港の国際化ですが、2500m滑走路というのがなんとも悩ましいです。
欧米線は無理としても、関空国際線の弱点を考えると東南アジア線が欲しいところで、シンガメ[ル、バンコク、ホーチミンあたりへの便が可能かどうかで将来像は大きく変わってきます。

どうしても総需要が少ない関西では便数を揃えることができない。ゆえに運行時間帯というメニューを揃えられない関空には「穴」がありまくるわけで、伊丹や神戸、さらには当の関空から羽田に飛んで羽田から深夜便など、という方が選択肢が多いという現実をどう打破するか。


(関空のNH国内線にある羽田乗り継ぎ専用カウンター)

関空だと0時過ぎの「真の深夜便」が少なく、ゆえに関空でチェックインする時間、ひいては大阪などの市街地を出る時間が思ったよりも早く、伊丹20時20分、神戸20時55分の羽田行き最終便で十分乗り継げる羽田経由のほうにアドバンテージがあったりします。


(羽田発の深夜便。神戸最終からも余裕で接続)

国際化された神戸に深夜便があり、さらに発着時間帯を緩和できれば、神戸23時前の出発なら21時頃のチェックインで十分間に合う。関空に向けて移動する、羽田便に乗る、という時間が丸々省略できるイメージです。


(PY席から見たC席。これら高収益席を埋められる需要が都市型空港にはある)

A321や737NGといった小型で、しかしC席をしっかり確保できる機材を投入できるのは、やはり都市型空港であり、郊外型でそれが可能になるのは総需要が圧涛Iな首都圏にある成田くらいでしょう。それとて羽田に食われてLCC偏重傾向が顕著であり、関空に至っては羽田に食われている現状では、伊丹が無理なら神戸を活用して、「関西からの直行便」を確保しないと、直行便が無い、という不戦敗状態になります。


(Y席で変更不可のカテゴリーKやLとかで埋めても採算はしんどい)

前も指摘しましたが、関空は残念にも程があるんですよ。深夜便に乗るというビジネスパーソンにとってラウンジにシャワーが無い、ラウンジもしょぼいが故に逆に混み合う、というのは、どうしても余裕を持って空港に向かう傾向になる郊外型の国際空港の特性を全く理解していないわけです。


(イミグレ出たところの免税店も少なめ)

手土産にしてもリピーターが多いビジネスパーソンの手土産として、品揃えが悪いのは「好適品」が無いうえにいつも同じという二重苦状態で、しかもイミグレを抜けたら早々に新交通に乗ってしまう構造が、小規模で総花的な店舗しか許さない状態で、目先の変わったものを用意できない関空のバッグを現地(ホテルで出張者がこれから現法や顧客を訪れる、というシーンはよく見ますよね)で見かけることが少ないのです。悲しいことに羽田TIATのバッグはよく見るというのに。


(早々に新交通に乗せられ、着いた先は小さな免税店だけ)

神戸が国際化すれば、国内線以上にコンパクトな構造になるのは間違いなく、C席やY席を変更可能なカテゴリーBなどの料金で座るようなビジネスパーソンが多ければそれに見合う免税店も出てくるでしょう。預け荷物を極力回避するビジネスパーソンにとって、特に駐在員への好適品(依頼を受けることも多い)となる酒類はセキュリティの関係で制限エリアで買うしかないですし、タバコのお土産もまた免税店で買う代表です。関空はタバコこそそれなりにありますが、酒類は弱いですね。あとお菓子類も。


(総合的な免税店は数も多くなく内容は一緒)

関西の国際線は関空に一本化すべき、となにも理解しないで言うのは簡単ですが、上記のように関空の努力が足りないだけでなく、関空ではどうしても対応できない部分がある以上、関空に固執して羽田に逃げられるくらいなら、関西の需要は関西で、という意味でも神戸を活用することは理に叶っています。国内線も含めて関空延命、もとい、関空優遇策で今までどれだけの不利益を利用者に与えてきたのか。それを考えたら、ようやく始まった「正常化」を全うすることこそが、関西の明日を考えることになります。



神戸空港の「第二章」はじまる

2019-07-05 21:08:00 | 交通
FDAが神戸就航を公式に発表しました。10月27日からの冬ダイヤということだけ決まっていて後は未定という状況ですが、報道では松本と高知という話になっています。

FDAにSKYのような「総じて安い」メリットはなく、普通運賃や変更可能運賃はそれなりに高いというのは神戸就航の「別働隊」に近く、しかし「別働隊」のようなアライアンス的なメリットはそこまで無い状態で(JALとのコードシェアがあるが)、マーケットにどう受け入れられるか興味深いところです。

一方でSKYは神戸空港の発着枠拡大を早速活かして8月1日から茨城、那覇、長崎を1往復ずつ増便とこれはダイヤ付きで公式に発表がありました。

茨城の増発は想定外で、日中の1往復にどれだけの需要があるのかという謎がありますが、茨城を使った新千歳への経由便とか、神戸を使った九州沖縄への経由便とか、SKYならではの奇策も可能であり、実際茨城行きは長崎発、茨城発は沖縄行きを絡めることができる時間になっており、展開可能性が高いです。

なお茨城線は朝の神戸発、夕の茨城発で何回か使っていますが、満席こそ無いですが、びっくりするくらい乗ってますよ。それこそFDAの規模なら満席にできるというか取りこぼすくらいの需要を掴んでいます。茨城側で公共交通に乗り継ぐのは東京線と水戸線にそこそこいるくらいなので、クルマを使える茨城ベースの需要がかなり太いことと、東京線の需要を見ると、時間は羽田線や新幹線の比ではなくかかるが、「たす得」「いま得」でアクセス込みで10000円を切るコスパが評価されているようです。

FDAは神戸でのグラハン求人で就航が確実視されていましたが、やはり気になるのは就航地とダイヤです。神戸でのナイトステイが無く、かつ神戸と行き来する空港でのナイトステイも無い状態では、神戸着が朝の二番手の時間で、神戸発も昼前、というビジネスにも観光にも中途半端な設定しかできないはずです。

松本は確かに妙味ですが、長野新幹線(当時)開通の段階で長野市内へは新幹線乗り継ぎというフリークェンシーを確保したルートが確立しており、北陸新幹線開通で金沢回りでも同等以上の速さとなり、航空が優位なのは松本や諏訪方面に限定されます。上高地などの観光需要が太いですが、季節波動が大きいのも微妙です。

高知もどうか。確かに岡山乗り換えで新神戸から3時間15分程度、高速バスで4時間ですから、1時間かかるかどうかという空路は確実に速いでしょう。しかし両者ともフリークェンシーが十分で、高速バスは実勢片道5000円ですから、時間帯の悪さも想定される中、どういう需要が空路を選択するかが見えません。

ナイトステイが出来れば空路ならではの利便性の高い便設定が可能なんですけどね。そういう意味ではSKYの米子線は神戸ナイトステイを活かしてうまく需要を掘り起こしていました。
そういう発展がないのであれば、限りある発着枠をFDAが費消することへはネガティブです。



「私戦」とは

2019-07-05 21:06:00 | 時事
ISに参加しようとした大学生などが刑法の「私戦予備陰謀」で送検されました。
刑法の歴史上初の適用となった歴史的な事態ですが、なんか引っかかるものを感じます。

もともと2014年に発覚して任意で事情聴取したうえで家宅捜索などを行った事案で、当時も「私戦予備陰謀」?と話題になっていましたが、立件して送検したことで歴史的な出来事になりました。今後の刑法各論の基本書に掲載される事件でしょう。

それはそうとして「私戦予備陰謀」って何?と考えたとき、刑法の「国交に関する罪」に外国国章損壊、局外中立違反と並んで規定されている罪が本件に馴染むのかどうか。

学説が対立していますが、国交に関する罪とは外国に対する侵害という説と、日本の外交を損なうという説がありますが、ISに参加することがどう影響するのか。
外国国章損壊はともかくとして、私戦予備陰謀と局外中立違反は、日本の外交方針に反する行動(戦争行為あるいは戦争当事者への支援)を行うと考えるのが妥当に感じますが、第三国にある組織に加入することが該当するのか。

個人の行動で外国を侵害する、保護の客体が外国というのは馴染まない気がしますし、その場合は私戦予備陰謀が、実際に私戦を起こすケースを規定しないと整合しない気がします。
逆に日本の外交を対象としたら、予備陰謀の段階で外交に影響を与えるという意味で罪が成立すると考えます。

ISに加入することを試みることで本罪の成立を認めるとして、国家として認めていないISに加担することがどう外交に影響を与えるのか。失言、発言その他でも外交問題になりますが、戦争に関する事項に限定しているわけで、さらには国家として認めるという前提にしても、第三国による戦争行為への参加を日本の刑法で縛り得るのか。中立違反と違い、間接的な行為への規制です。

これはやはり日本による戦争行為を念頭に置いているとしか言えないわけで、憲法の規定で戦争を放棄しているという建前に反して戦争を仕鰍ッる予備陰謀が前提でしょう。
そう考えると今回の起訴は成立するのか。平和国家として「兵力の輸出」も許さないという意味で規制するのか。じゃあ「傭兵」に応募しているケースはどうなのか。いままで一切摘発してこなかったこととどう整合性を取るのか。

第三国における「外人部隊」は「私戦」ではない、近年みられる「民間軍事会社」はグレーという議論もありますが、国外における戦争への参加形態で「公私の別」を分けるというのも違うでしょう。外国の軍隊に志願する目的は大丈夫で、ゲリラ等に身を投じる目的はアウトですか?
そもそも「私戦予備陰謀」ですから、実際に身を投じた段階を「私戦」と見做すにあたり、第三国やゲリラの戦闘を念頭に置いていないでしょう。

やはり、自衛隊の海外派遣のように公式に日本として兵力を派遣するのではなく、非公式に兵力を行使すること自体を対象とし手いると考えるべきであり、ゆえに本件は「私戦予備陰謀」としては成立しないと考えるのが妥当です。

もちろんこうした行動は我が国の外交にとっても迷惑な行為です。しかし事実上法律が想定していない行為をである以上、刑法改正か特別法で規定しないと罪刑法定主義の原則に外れます。
なお第三国の戦争(戦闘)に個人の資格で参加することを日本の法律では縛れないという割り切りも想定されるわけで、現行刑法の成立は明治年間ですが、もし第三国の戦闘に身を投じることが「犯罪」という認識であれば、辛亥革命やそれ以降の戦闘に日本人が少なからず参加していることが「刑法違反」とはされていないわけです。

もし「犯罪」という意識であればいわゆる「支那浪人」なる概念はもっとアンダーグラウンドなものになっていたでしょうし、第二次大戦後に復員せずに八路軍に参加した日本兵、インドネシア独立戦争に参加した日本兵はどうなのか。軍人としての命令違背は意識していても、「私戦」なる意識はなかったはずです。

ただ、これを縛ると微妙な面もあるわけで、独立運動への支援というか参加、革命(民主主義革命もありますからね)もそうでしょう。「独立運動はテロ」という勢力がほくそ笑みそうな事態になりかねないわけで、逆に正規軍への参加や正規軍の請負会社(民間軍事会社)への参加(就職)を規制するだけが限界でしょう。