Straphangers’ Room2022

旧Straphangers' Eyeや習志野原の掲示板の管理人の書きなぐりです

「あと1年」で顕在化する迷惑

2019-07-23 21:27:00 | 交通
またぞろ時差通勤の勧めということで「時差Bizライナー」などの臨時列車が走り出しました、とニュースになってましたが、本来あるべき輸送力増強をサボって利用者に早起きを強いる風潮を何とか撲滅したいものです。通勤流動が分散しないと効果が出ないということは、企業や部署単位で「時差」ができるわけで、うちは早出だからお仕事おしまい、と言い放てる強い立場ならいいんですが、総じて相手がまだ営業時間なら、ということで終了は変わらず、残業が早出になっただけどころか残業も減らないただの労働強化なんですよ。

この時差Bizだなんだという風潮、嫌らしいのが遅出でラッシュを回避するとならないこと。ラッシュ後の入庫運用などで比較的本数が多く楽に通勤できるフレックスが結構人気だったのに、「時差Biz」や「働き方改革」で早出が事実上強制される職場が多く、しかも交通事業者が早い時間帯の増発に全く不熱心なので、ピーク時よりも混雑する電車に揉まれるという誰得というかビジネスマンの疲弊そのものの運動になっています。

そして今夏はダブルで攻めてきます。「スムーズビズ」とかいって、東京五輪時の交通輻輳を回避する試行をします、と出勤時間の調整や、首都高の規制、環七以内への流入制限と、この7月、明日24日と金曜日26日の2日、8月も23日と25日の2日間、計4日、都内の交通を混乱させるようです。

2020年夏の五輪とパラの期間中だけ我慢すれば、と思っていたら、1年前の段階で4日ですよ。交通量低減の要請期間は実に24日。試行の域を超えていますよね、どうせ今後もなんだかんだと規制する気なんでしょう。すでに決まっている期間中の大幅値上げだって、それで首都高を回避した流動の確認とか銘打って何回も実験しそうだし、五輪・パラの終了後もTDMだなんだといって値上げする気満々なのが透けて見えるわけで、五輪を口実にした社会生活への迷惑が目に余ります。

夏休み期間とはいえ平日の実施、五輪開催時の予行だから平日でないと意味がないとはいえ、平日に当たりが出るのは非常に迷惑です。平日でありながら夏休みでもある、ということで羽田空港を利用する人も多い中で、首都高が利用できない、どうなるか分からん、となると自家用車はともかくとしてリムジンを使うわけにもいかないわけで、公共交通にも多大な影響をかけてきます。

さらに都市間高速バスにも影響が出るわけで、じゃあその分を鉄道その他に分担させて、と安易に考えているのでしょうが、効率化が要求されて余裕がない中で、受け入れを増やす余裕がどこにあるのか。都内の通勤電車だって混みあうでしょうし、都市間高速バスを回避して新幹線という流動もあるでしょう。

だいたい、大会成功のために、とか、頼んでもいない「国際運動会」の犠牲になれということ自体が間違っています。エコだからサービス低下にご協力を、というような香りを感じますね。「錦の御旗」を掲げて普段は到底できないようなことをやってしまう。そしてそれが先例になって「前もできたじゃん」とする姑息な手段です。

五輪自体は盛大に開かれるがあとがどうなるか、と「負のレガシー」を懸念する声が根強いですが、まさか1年前唐オでどさくさ紛れのクルマ規制とかが出てくるんじゃないでしょうね。移動は詰め込み主義の通勤電車でよろしく、座りたければ「乗るぜグリーン車」という世界が待っています。

東日本大震災に熊本地震、西日本豪雨と災害からの復興に必要な資機材に工数を奪い合って、絵にかいたような需要の先食いをして開催する時点で経済効果もあったもんじゃない話ですが、それに「負のレガシー」が懸念されて、社会生活も大きな影響を受ける。観戦チケットが全く当たらないのを横目にスャ塔Tーが、商品を購入すれば当たります、という「大人の事情」全開では嫌になります。

ロンドン五輪は経済効果が素晴らしかったから、というけど、じゃあ経済効果の大半を占める五輪後の発展も、そのプロモは五輪じゃなければ達成できなかったのか。確かに観戦客はロンドンを見て再訪を志向するかもしれませんが、ネットなどで効果的に宣伝したほうが多くにアピールしますよ。他の手段でも達成できた内容を五輪に付け替えているだけです。

国際交流にしても、長野五輪のように地方で開催されたのであれば幾許かの効果もあるのでしょうが、もともと国際都市の東京でわざわざ五輪を開催しないと効果が得られないなんて話はないわけです。
長野ですらその数少ない効果を得るのと引き換えに莫大な「負のレガシー」に苦しんでいるわけですし。
そして東京の尻拭いじゃないですが他県開催となる県なんて、「東京」の大合唱の陰で、まさに宴(ですらあるのか?)の後をどうするのか。

そしてNHKの21時のニュースでいけしゃあしゃあと出てきたのが宿泊問題。
関係者が押さえまくって全然足りないってバカですか。足りないんだし五輪だから、となし崩しで民泊を推進する気でしょうか。ドローンと民泊、メディアも一押しの利権モノですからね。
メガバンク系のシンクタンクの肩書で、東京以外での宿泊検討とか、出張は控えるとか、「国際運動会」の「公害」を東京以外にまき散らし、経済活動も押さえつける。そんな推奨をメガバンク系のシンクタンクがしてるんですからおめでたいですわ。経済にとどめを刺して、メガバンクだけは安泰のつもりなんですかね。


開幕まであと1年、引き返せなくなって隠してきたことがいっぱい出てきました。






「有志連合」への疑問

2019-07-23 21:25:00 | 時事
ホルムズ海峡での日本向けタンカーへの「攻撃」を受けて、米国が「有志連合」による護衛を提案してきています。
日本にも参加を呼び鰍ッているのですが、さっそく国益上参加すべき、という声が国士様系から聞こえてきます。

「攻撃」のほか拿捕などきな臭くなっているなか、シーレーンの安全保障の確保は我が国にとっての最重要課題であり、いろいろ疑念も少なくないとはいえ現実の「被害」も出ている状況では、形態はどうであれ商船護衛を考えないという選択肢はありません。

現在でもすでにアラビア半島を挟んだ格好の紅海側ではソマリア沖の海賊行為に対処するために編成された海上合同部隊(合同任務部隊)に艦艇を派遣しており、ホルムズ海峡での対応も同種のものといえます。
しかしながら今回の提案では、既存の対応で実を上げている海上合同部隊の編制と明言しておらず、また「有志連合」というあいまいな組織による武力行使(の準備)は、まさにイラク戦争の状態であり、紅海側のような海賊行為ではなく、イラン政府を念頭に置いた活動は、海賊対処法の域を超えていますし、言い鰍ゥりで主権国家を殲滅した二の前に加担するリスクがあります。

その意味では「国益」という主張も、今回の「仲介」が示すように中近東における自主外交の名残ともいえる「遺産」を完全に失うことを意味するわけで、親米とされる中近東各国にしても面従腹背の可能性がある中、例えイランを敵視しているとは言っても、イランを見捨てて米国についた、という日本の対応が中近東の各国や国民に受け入れられるのか。逆にプレゼンスを完全に失うリスクを考えるべきでしょう。

もしタンカーなど日本商船の護衛が必要であれば、いや、必要なのは間違いないのですが、どう護衛するのか。
それは「有志連合」ではなく日本自らで護衛をするしかありません、
あるいは参加するのであれば「海賊対応」として編成された紅海側のような組織の成立が必須ですし、それは国家を対象としたものではダメです。

そもそも海賊対処でも微妙なんですが、国家を念頭に置いた「護衛」については、特定の国家を刺激するわけで、本来であれば国連決議などの正当化できるエビデンスがなければ、難癖をつけて煽る、という行為にほかなりません。
そして海賊対処にしても、じゃあ海上合同部隊の編成と活動はどういう根拠に基づくのか。日本もジブチに拠点を設けていますが、どういう根拠があるのか。

必要な行動、やらなきゃいけない行動があるわけで、ホルムズ海峡も含めて我が国は積極的に参加すべきですが、一方でその「正義の行動」のエビデンスがないのです。海賊対処という目的と海賊対処法という根拠法規はありますが、じゃあそれで多国籍艦隊の編成に入ったり、その指揮をとったりすることが規定されているのか。

特に「有志連合」案は我が国シーレーンの防衛という「国益」がありますが、紅海側はどうなのか。
あるいは海賊が猖獗を極めている海域があったら世界中どこへでも行くのか。何が保護主体で、どこまでが範囲か。本来は国連が決議等で根拠を与えるとか、参加各国間で条約を締結するとか、参加と派兵に関する根拠を与えないと、それこそ正義の名を借りた海賊になりかねません。

もちろん海賊行為に関する海上警察権は総ての国に認められていますが、それが認められるのは公海上とはいえ、主権国家の領海の先で遠く離れた地域の国に属する艦船が取り締まりをすることはどうなのか。
日本が東南アジアで主導したように、沿岸各国を巻き込んだ国際協定と、沿岸各国による取り締まりがベストであり、今の海上合同部隊の展開は、沿岸各国が機能していない(どころか国家の体すらなしていない)ことによる特例的措置であり、沿岸各国が統制可能な状態であれば、勝手な展開は困難です。

ホルムズ海峡のケースは、建前上は沿岸国であるイランの革命防衛隊が警備行動をしているわけで、その状態で「有志連合」として艦船を派遣することは、沿岸国が海賊行為をしていると断じるに等しいわけで、確たる証拠がないまま日本がそこまで踏み切った場合の日本の立場をよく検討すべきでしょう。勝てば官軍じゃないですし、「有志連合」はイラクで大量破壊兵器はありませんでした、と大ミソをつけていますから。

あるいはイエメンのフーシ派による海賊行為として、イランにも取り締まりの強化と護衛を呼びかけると同時に艦船を派遣する、という手順でしょうか。イランもフーシ派への支援は認めても、その海賊行為までは大っぴらに容認できないわけで、そこまでやれば堂々と派遣が可能でしょう。

やるべき対応だが、イラン攻撃の口実のお先棒を担いではいけない。それを念頭に置いた対応ができるかというと無理でしょうが。