円安への誘導によって、国民の多くが燃料費の増加の悪影響を受けているが、安倍政権はその痛みを全く感じていない様だ。
自分でガソリン代を払ったこともないし、軽油を消費するトラックや漁船にも縁のない永田町で過ごす政治家には、各地の国民の痛みはわからない。
石油が枯渇性の資源であり、新興国の台頭によって石油の需要が大幅に増加することは、判っている筈である。
何もしなければ、世界中で石油の消費増大で、価格がウナギ登りに上昇し、経済を圧迫してコスト高を招き、国民生活は苦しくなる。
中学生でも判ることを知らんふりして、円安に誘導するなどは論外の悪政だ。
アメリカ政府は、石油輸入に依存する国の体質が弱みとなる、と判断して、積極的バイオエタノールの生産増大政策を採用してきた。
トウモロコシ農家への補助政策になると批判されたが、お構いなしに国策として推進し、昨年には目標の普及量を達成した。
そこでアメリカ政府は補助政策を中止して、政府の関与をへらして、あとは自由市場の進展に任せる状況で、この政策によりガソリン価格は抑えられた。
その一方で、天然ガスの増産技術の成果もあって、石油の輸入を大幅に減らすことが出来て、アメリカの対外的な弱みをなくすことに成功した。
一方の日本政府は、2000年代の初頭から、「バイオ燃料の普及」を政策目標に掲げてきたが、具体的な普及促進政策は皆無の状態である。
未だに、バイオエタノールの製品には、大きな税金が課せられて、事業者にとっては、新事業としての挑戦意欲を失わせる政策である。
軽油の代替になる「バイオディーゼル燃料」についても、軽油取引税が課せられるので、よほどの製造コストダウンに成功しなければ事業化は無理だ。
従来の石油を輸入してガソリンや軽油に加工して、販売する「石油業界の既得権益」を守ることばかりに逃げ込んでいたのが日本である。
アメリカやEU先進国の「バイオ燃料普及」からは、大幅に遅れてしまった。
ブラジルの様な大陸国家では、膨大な無耕作地をサトウキビ栽培地に開拓して、サトウキビエタノールを地道に国産技術で育成してきた。
今では国内で消費するガソリン自動車の燃料の半分以上をエタノールで賄う。
さらに、このエタノールの増産製品は、海外に輸出される「輸出産業」に発展してブラジル経済に大きく貢献している。無策の日本とは大きな差が出ている。