なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

感染症学会

2016年04月16日 | Weblog

 昨日と今日は、感染症学会に出ていた。化学療法学会と、化学療法学会と感染症学会の合同学会には行ったことがあるが、感染症学会だけに行ったのは初めて。昨日は午前中消化器感染症のシンポジウムを聴いて、午後は総合診療科や集中治療科と感染症科のコラボのシンポジウムを聴いた。諏訪中央病院の佐藤泰吾先生が発表していた(山中克郎先生との共著「ダビンチのカルテ」を持っている)。今日は午前中はワクチンのシンポジウム、午後は結核病学会との共同シンポジウムを聴いた。本来の目的であるICD講習会は、疲れてすっかり休んでいた。印象に残ったのは下記のふたつの講演だった。

 「潰瘍性大腸炎(UC)は腸内細菌感染症」(東京慈恵医大柏病院消化器肝臓内科・大草克典先生)  免疫異常自然発症腸炎ラットは無菌状態では腸炎を発症しない、またUCでは腸内細菌叢microbiotaの乱れが起きる(gut dysbiosis)ことから、UCは腸内細菌感染症と判断される。Fusobacterium variumが起炎菌。これを抗菌薬(ATM療法=AMPC1500mg+TC1500mg+metronidazole750mg)で 除菌すると、ステロイド離脱率が改善する。またProbioticsによる治療は寛解維持に有効。つまりgut dysbiosisをantibioticsとprobioticsで改善させることができる。会場からの質問に答えたところでは、fusobacterium variumの保菌率は28%、テトラサイクリンは効くがミノマイシンは効かない、ホスホマイシンも効くようだ、サラゾピリンは抗菌薬だが効かない、再発してもATM療法がまた効く、という。

 「抗酸菌感染症の現状と将来展望」(新潟大学呼吸器感染症内科・菊地利明先生)  結核菌が飛沫核感染して胸膜下に初感染巣を形成する(肺門リンパ節への進展を合わせて初期変化群)。結核菌の増殖を免疫力で抑えられないと感染から引き続き発症する(一次結核症)。免疫力で抑えられても結核菌は生き続けて、潜在性結核感染症となる。90%はそのまま経過して一生発症しないが、10%が免疫力低下で発症する(内因性再燃=二次結核症)。

 潜在性肺結核感染症から、ステロイド・免疫抑制剤・生物学的製剤・血糖コントロールの悪い糖尿病・低体重(低栄養)・胃切除・喫煙などで内因性再燃が起きやすい。特に生物学的製剤を使用する時は結核に対する総合的な評価を要する。潜在性肺結核の診断には、IGRA(interferon-γ release assay)のQFT・T Spotを使用する。感度はそこそこ高く・特異度は高い(陰性的中率が高い)。今一つではあるが、診断するには今のところこれしかない(結核が発症しても陰性のことあり)。IHNで治療するが、発症防御率は93%で、100%ではない。

 非結核性抗酸菌症NTM(主にMAC症)。土壌の常在菌。ヒト-ヒト感染はしない。NTMは150種類以上あるが、全部がヒトに感染するわけではない。aviumとintracellulareのMACで80%を占める。NTMは増加していて、2000年からは結核を上回っている。治療はCAM600~800mg/日(15~20mg/kg)分1~2+EB15mg/Kg(750mgまで)分1+RFP10mg/kg(600mgまで)分1。これにSM15mg/Kg(またはKM)を週2~3回。菌陰性化はSMありで71%、SMなしで51%。2年間でも3割は陰性化しない。陰性化しても半数(48%)は1年以内に再増悪する。病像は二つに分かる。線維空洞型は、喫煙歴のある中高年男性に多く、1~2年で急速に進行、速やかに化学療法を行い手術も考慮する。結節気管支拡張型は、喫煙歴のない中年女性に多く、5~10年で緩徐に進行、治療開始の明確な基準がない。

 菊地先生の講演は東北大学の准教授のころに聴いたことがあり、分かりやすい講演をされるので好きだった。この後、シンポジウムで結核の基礎的な知識・診断・治療・潜在性結核感染症の治療と聴いた。学会場で「画像と病理から学ぶ結核・非結核性抗酸菌症」を購入した。

 ランチョンセミナーの「結核と非結核性抗酸菌症に関する話題」で「結核の基礎知識」の、イブニングセミナーの「感染管理ベストプラクティスを始めよう」で「感染管理ベストプラクティス」の小冊子をいただいた。感染管理の手技は個々人で大分違うので、文章だけではなくイラスト付きの張り紙を使用すること、どのくらいできているか個人ごとに項目別にチェックすることが重要だそうだ。花王で出しているその小冊子を看護師さん用に3冊注文した(たぶん病院に送ってくれるはず)。

 

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