なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

肺癌・トルソー症候群

2019年03月11日 | Weblog

 今日はがんセンター呼吸器内科から、肺癌・トルソー症候群の71歳男性が転院してきた。脳梗塞で四肢の麻痺と失語がある。

 そのそもは1月末に高血圧症・糖尿病で通院している内科クリニックから、血清CEA高値(漸増)の精査目的で、当院放射線科に胸腹部造影CTの依頼があった。結果は、「左肺に腫瘤があり、肺癌が疑われる」だった。ただ、「脾臓と右腎臓に陰影欠損があり、脾梗塞・腎梗塞が疑われる」、もあった。

 その時点では肺腫瘤は緊急性がなく、脾梗塞・腎梗塞の方が緊急性を要する。CTのみの依頼なので、読影レポートが依頼元に送られた。CT・MRI依頼だけでも、たとえば脳出血がある場合は放射線科から院内の担当科に連絡が行くが、その時はなかった。

 内科クリニックでは、腫瘍マーカー高値の精査だったこともあり、(腹部の方は気にしないで?)がんセンター呼吸器内科に紹介した。そして受診時には左半身の麻痺と失語を呈していた。頭部MRIで多発性脳梗塞を認めて、緊急入院となった。

 心エコーで大動脈弁に疣贅があり、ヘパリンの持続点滴が開始された。血液培養は陰性で、感染性心内膜炎ではなく血栓と判断された。肺癌とも関連からトルソー症候群と診断された。

 ヘパリン持続点滴で大動脈弁の血栓消失を確認して、DOAC内服に切り替えたが、脳梗塞が再発した。心エコーで大動脈弁と僧房弁に血栓を認めて、ヘパリン持続点滴が再開された。

 この段階で当院に転院依頼の連絡が来た。ヘパリン持続点滴を皮下注に変更予定とあった。今日転院して来ると、皮下注になっていた。12000単位を朝夕皮下注している。

 診療情報提供書には、肺癌自体は小さく転移もないことから、担癌患者さんとしては長い予後になるだろうと記載されていた。むしろ血栓塞栓症の再発が予後を決めることになりそうだ。

 四肢の不全麻痺でベット上では盛んに体を左右に動かしていた。失語があるので会話はできない。ヘパリン皮下注継続となると、施設入所はできないので、病院入院を継続するしかない。この条件で療養型病床に頼めるだろうか。

 トルソー症候群がなければ、肺癌の手術ができたはずで、それも治癒する可能性がある。気の毒は患者さんだった。

 

 

 

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