水曜日にクリニックから、自宅で倒れていたという83歳男性が紹介されてきた。その日は内科の若い先生(自治医大の義務年限)が内科新患を診ていた。
一人暮らしで、ふだん食事を届けに来ている姪が自宅を訪問して、動けなくなっているのに気付いた。会話は普通に可能で、車で連れて来ていた。
血液検査でHb8.7g/dlと貧血を認めた。MCV97.9でBUN51.0(血清クレアチニン0.99)と急性消化管出血が疑われた。クリニックから直近の血液検査を送ってもらうと、8月25日Hb11.1g/dlだった。2週間の経過で低下している。直腸診でタール便とはいえなかった。
心房細動で抗凝固薬を内服している。PPIではなく、H2 ブロッカーのファモチジン20㎎1錠を内服していた。消化性潰瘍の既往はないが、2週間で貧血だと消化管悪性腫瘍よりは潰瘍か。
その日消化器科医(当院は1名だけ)は午後から不在だった。消化器センターのある専門病院から、内視鏡検査応援の先生が来ていたが、あっという間に上下内視鏡検査を済ませてすでに帰ってしまっていた。
明らかな吐血・下血ではないので、地域の基幹病院にも紹介しにくい。とりあえず当方が上部消化管内視鏡検査を行うことにした。
胃内に内視鏡を進めると、胃液に黒色の血液が混じっていた。胃角上部小弯に潰瘍があり、潰瘍底に黒色の出血点が多発していた。水を注入して洗ってみたが、鮮血の出血はなかった。明らかな露出血管はないと思われた。十二指腸球部は異常なし。
点滴とPPI注で経過をみて、翌日消化器科医に相談することにした。幸いに翌日の検査でHb9.6g/dlと貧血の進行はなかった(輸液で受診時より下がると予想していたが)。
消化器科医が内視鏡再検して、胃内に出血は認めなかった。それでも潰瘍底を洗うと、oozingがあったのでそこだけエタノール注をしていた。肉眼的には良性潰瘍に見えるが、一部辺縁に軽度隆起もあり、2か所生検していた(前日エリキュースは休止)。タケキャブ内服で食事も開始になった。
最近消化器の診療はほどんどしていないが、たぶん胃潰瘍は少なくなっていると思う。
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