なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

血糖値スパイクとこころの不調

2017年10月17日 | Weblog

 昨日の夕方救急隊から連絡が来た。忙しくて忘れていたが、救急当番だった。患者さんは87歳女性で、脳梗塞後遺症・高血圧症などで当院の神経内科に通院している方だった。呂律が回らない、四肢の脱力があるという。発熱もあるので、脳梗塞再発よりは感染症の影響と思われた。

 搬入後に話しかけると、内容はずれるが、それなりに流暢にしゃべっている。横臥位で両上肢・両下肢がちゃんと挙げられた。普段は杖歩行だそうだ。酸素飽和度は正常域で、呼吸器症状はない。尿路感染症かと思いながら画像検査・血液検査を行った。尿混濁があり、肺炎はなかったので、やはり尿路感染症(急性腎盂腎炎)でよさそうだ。単なる膀胱炎+発熱は別の疾患という可能性は否定的だ。

 尿培養は提出したが、本来は行うべき血液培養は省略した。悪寒戦慄はなかったのもあるが、主な理由はこちらの疲労と、他の患者さんで看護師さんも忙しかったから(研修医は真似しないように)。 セフトリアキソンで治療を開始した。

 

 糖質制限に関する本(一般向けも)を読んでいる。「血糖値スパイクがこころの不調を引き起こす」は青春新書から出ている。主には江部康二先生・山田悟先生の本を読んでいるが、この本の著者溝口徹先生は、血糖の変動とこころの不調を研究されている。

 血糖スパイク(食後高血糖)は140mg/dl以上だが、血糖値の値そのものではなく、空腹時と食後の血糖値の差が60mg/dl以上あれば問題になるという。75gOGTTでは食直後と2時間以上経過した後の血糖が捉えられない。著者はきめ細かく5時間後までの経過をみているそうだが、一番いいのはCGMになる。

 血糖値スパイクに伴ってインスリンスパイクが起こり、過剰に分泌されたインスリンによって2時間後に低血糖状態になる。急激に血糖が下がると、今後は血糖を上昇させようと、コルチゾール・アドレナリン・ノルアドレナリンなどのホルモン(インスリン拮抗ホルモン)が分泌される。これが自律神経を介してイライラやうつ状態などの心のトラブルを引き起こすという。

 著者は血糖スパイクと、うつ・パニック障害・慢性疲労・不安・不眠が関係ありとしている。ありそうな話だが、学術的にはどうかということになるのだろう(けっこう信じる方だ)。食事としては糖質制限になるが、糖質制限は目的ではなくて血糖を安定させるための手段と述べていて、すぐには血糖制限が合わない人の例も記載している。

 今日も外来に来ている胃切除術後の女性は、うつ状態・心気症として治療を開始したが、この方の血糖変動はどうなっているのだろうか。胃切除術後の方はoxyhyperglycemiaになるが、胃切除術後の方が全員精神的に不安定になるわけでもない。

 夏井睦先生の新著(光文社新書)も出るので購入しよう。今日の午後は感染対策の相互評価で、地域の基幹病院に出かける。

 

 

 

 

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