なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

困った人たち

2015年12月25日 | Weblog

 先月若い外科医が当直の時に、三つの市町を隔てた地域の救急隊から、30歳代後半の男性の搬入依頼がきた。10数箇所の病院から搬入を断られていた。主訴は全身浮腫で動けないというものだが、家庭内暴力で警察沙汰になった人だった。外科医は引き受けた。

 結局、糖尿病・糖尿病腎症・ネフローゼ症候群だった。かなりの肥満があるところに全身浮腫が加わっていた。動けなくなってから、すでに日数が経過して背部に褥瘡ができていた。身体的な病状以外に、言動が問題だった。動けなくなって、家族は暴力を振るわれなくなったので、その点では幸いだった。しばらく放置していたが、さすがにまずいと思っての救急要請だった。家族の希望は、あまり動かれると危険だが、せめて自力でトイレまで行ってほしいというものだった。糞尿の扱いに困っての要請だったようだ。

 内科系に主治医を頼むのを遠慮したのか、そのままその外科医が主治医で診ていた。利尿剤などの治療で浮腫は軽減してきた。現在よりもさらに肥満がひどく、相当に血糖が悪化した時期があったのだろうが、数年でネフローゼになるのかがわからなかった。腎臓内科医(大學病院から応援)に相談したが、一次性糸球体病変があるようではないという(正確には腎生検だろうが)。今は主に褥瘡の患者さんになったので、診療科外科にふさわしくなってしまった。糖尿病の治療としてはほとんど食事だけになっている。

 精神科的にはどうかというと、統合失調症ではなく、人格障害相当と思われた。地域の精神科病院に診療依頼をすると、いろいろ理由をつけて断られた。県内で一番大きな精神医療センターに紹介してくださいという返事だった。そこも単科病院なので、手のかかる身体疾患があれば、対応はできない。また精神科で診て良くなるというものでもないのだろう。

 このまま当院で治療を継続するしかないと思われる。浮腫と褥瘡が良くなった時に自宅に戻すことになるが、家族がどういってくるか。その家庭としては、今つかの間の安らぎを味わっているはずだから。怪我だけではすまなくなりそうな兄弟げんかをして、警察沙汰になったことが何回かあったそうだ。

 内科外来に通院している60歳代後半の女性も、夫の家庭内暴力で悩まされていた。先月末に外来に来たときも顔に傷があった。警察を呼ぶことになったそうだ。以前から夫の暴力で何度も警察を呼ぶので、近所では有名になっているらしい。それで離婚するのかというと、考えてはいるが、実際に離婚の手続きをしているわけではない。内科外来なので、話を聞くのも長くて5分で、それも一方的にこんなことがあったと話すのを聞くだけで、何かアドバイスできるということはない。息子さんは理解があるというが、具体的に夫と別れて生活することを考えると経済的な問題もでてくる。結局、今の生活を続けていくのだろうか。

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