min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

ドン・ウィンズロウ著『仏陀の鏡への道』

2010-04-18 16:28:11 | 「ア行」の作家
ドン・ウィンズロウ著『仏陀の鏡への道』 創元推理文庫 1997.3.14 初版 880円+tax

オススメ度:★★★★☆

英国ヨークシャーの荒野で長いこと隠遁生活をしているニールのもとに、ある日突然養父のジョー・グレアムが訪れた。
もうそろそろ学業に戻ったら?というもの。もちろんそれには条件があるってわけ。
ジョーの差し出した復学の条件とは次の件をこなすこと、それはアグリテック社の生化学者をカルフォルニアから連れ戻すこと。この研究者はサンフランシスコの学会に出席すべく出かけたのだが、どうも現地で中国出身の正体不明な女性にいれあげてしまい戻る様子がない、というのだ。
彼は鶏の糞から作物を急激に成長させる成分を抽出する研究をしている有能な生化学者だという。その彼を説得し、会社に連れ戻せという任務であった。
ニールは一瞬「ちょろい依頼だぜ」と思い、自らの将来を描いた結果、この条件をのみサンフランシスコに向かう。
だが、ニールはその“彼女”になんと横恋慕してしまったのだ。彼女の色香に惑わされ危うく一命を落とすところであったのに加え、研究者と彼女を取り逃がしてしまうのだった。

養父がさかんに止めるのにも関わらず、養父を強引に振り切って向かった先は香港。
ニールの“横恋慕”が以降かれに降りかかる全ての厄災のもととなり、想像を絶する陰謀と過酷な運命がニールを待ち受けることとなる。

ストーリィ展開の上でこの一目惚れ的横恋慕には読者は戸惑うのであるが、彼のあまり良くない関係にある朋友社のNY支部長のニールの心理分析は興味深い。
いわく、
『ニールは心の奥深くで、自分の愛する女はみんな、最後には自分を見捨て、裏切るものだと思っている。女が裏切れば、それでやつの人生観は実証される。
女が裏切らなければ、自分で何かをやらかして、女が去るように仕向ける。それがうまくいかなければ、自分のほうから去って、女が追いかけてこないことに腹を立てる』
と。
ふむふむ、なるほど、これはある程度彼の奇妙な行動原理を言い当てているかも知れないぞ。もし、これが本当ならばニールは女性とはけっして結ばれてもハッピーエンドにはならない、ということだ。

ところで、このドン・ウィンズロウという作家であるが、やたら中国情勢に詳しいのだ。本編に登場する四川省を始め中国の地理・歴史・経済・文化に関する知識はたいしたものだ。この男何者???

とかくシリーズものというのは第一作目を第二作目以降のものが凌駕することはないのであるが、第一作目のインパクトがあまりにも強烈であったため、定石通り本編はその出来栄えはやや落ちる感がする。
とはいえ、我が愛すべきニールくんがこの後もいかに艱難辛苦を乗り越えて成長していくかはとても興味あるところで、まだまだお付き合いいたしますぞよ。

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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
同感です (バンコラン)
2010-04-19 12:38:24
ニール・ケアリーシリーズは最高ですよね。
「仏陀の~」はプロットがやや強引だけど冒険色が濃くって私は結構好きな作品。
実は私も本作までしか読んでなくって。
次作の「高く孤独な~」の評価が高いらしい。
買ってはあるのですが、「仏陀の~」のレビューをアップしてからでないと。
min-minさんに追いつきます。
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Unknown (アリーマ)
2010-04-21 02:16:16
つい全部読んじゃったんですが、この次くらいまでがいい感じで・・・という印象です。
出版社が変わったそうです。

ウィンズロウ、中南米&アフリカが強いのは聞いていたけど、中国にも長くいたのだそうです。そういえばアフリカ絡みの作品がないですよね・・・次作?
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ニール・ケアリーがスキ (min-min)
2010-04-24 15:13:35
バンコランさん、

そもそもこのシリーズの事を知ったのはバンコランさんのレビューを読んだおかげです。
本当に素敵なシリーズです。
はやく「高く孤高の道を行け」にお進みくださいませw

アリーマさん、

はぁ、全部読んでしまった?さすがぁwww

どうも著者はアイルランド系米国人のようですねぇ。
「犬の力」に登場するアイルランド系の赤毛の青年と本作のニールと重なる部分がある気がしてならないのです。

著者にはぜひぜひアフリカを舞台にした作品を描いてほしいものですね。
ますますこの鬼才の作家にはまりそうです。
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