min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

マーク・グリーニー著『暗殺者の正義』

2014-09-27 20:18:24 | 「カ行」の作家
マーク・グリーニー著『暗殺者の正義』 ハヤカワ文庫 2013.4.15第1刷 

おススメ度:★★★☆☆

前作『暗殺者グレイマン』にて大暴れし、結果的に調教師であったフィッツロイ及び彼の孫娘を救ったジェントリーであるが、その調教師であったフィッツロイとは袂をわかった。
そして今はシドレンコ(シド)というロシアン・マフィアから仕事をもらうようになった。
そんな彼にシドが与えた新たな暗殺指令はスーダンの独裁者アブブード大統領。
その打ち合わせ準備をシドとロシアで行っていた最中、ジェントリーは何者かの集団に捕えられ拉致された。
彼らのリーダーはCIA暗殺チームのリーダーであったザックであった。何とCIAはこのアブブード暗殺計画を察知し、殺さずに捕えオランダの国際刑事警裁判所に身柄を預けろとジェントリーに迫ったのである。その見返りとしてCIAはジェントリーの「見つけ次第射殺せよ」という指令を解除し、もう一度CIAチームの一員として受け入れようというものであった。ジェントリーとしては拒む理由もなかったし何より断る状況下にはなかった。
かくしてシドの最初の指令に従うふりをして大統領を捕捉しCIAに寝返るべく現地スーダンに向かったのであるが・・・・

計画には不測の事態が付きものなのであるが、今回はジェントリーがあるカナダ人女性ひとりの命を救うため、一切の計画をふいにしてしまう。無辜の女性を救うためとは言え、ジェントリーの立場そのものを脅かす存在であったにもかかわらずその女性のために突っ走るジェントリー。
第一作目の冒頭でもイラクかどこかで暗殺ミッション終了後、あとは救援機にひろってもらう地点に向かう中、撃墜された米軍ヘリの乗員を救うためスナイパー・ライフルで周囲の敵に発砲してしまったことがあった彼。当然自らの脱出路を閉じてしまった。
その行動には彼の暗殺者としてのガイドラインみたいなものがあり、“基本的にそいつが悪でいなくなった方が世の為であると認識した者に限って殺す。もちろん女子供は殺さない。
窮地に陥った自国民、自国軍の兵士は救う。”といったような彼自身の不文律があるようだ。
だが今回の彼の行動の直接的動機はカナダ女に「惚れた」からであった。これはプロの暗殺者にはあるまじき行為ではなかろうか。
結局ロシアン・マフィアのシドばかりではなく、再度CIAをも敵に回す結果となり、一体彼はどのようにして生き残れるのか?
本作でのプロットの展開がかなり作者のご都合主義的に流れ、ちょっと興醒めした感が否めない。アクション場面の描写は相変わらず達者であるものの、もう少し緻密さがあれば良かったと思う。第三作はもっと面白いと聞くので楽しみにしている

DVD『アウトロー』米パラマウント映画

2014-09-16 17:10:05 | 映画・DVD
DVD『アウトロー』米パラマウント映画

おススメ度:★★★☆☆


監督:クリストファー・マッカリー
キャスト:トム・クルーズ(ジャック・リーチャー)
ロザムンド・パイク8ヘレン・ロディン)
ベルナー・ヘルツォーク(ザ・ゼック)


やはり2時間ちょっとで原作の内容を全てカバーするのは至難の技。特に物語の導入部から謎解きをやってしまうのは興醒めだなぁ。原作で読ませる主人公の謎解きの部分が面白いのだけどもね。
あと美人のローカルTV局ニュースキャシターを省いてしまったのは残念!それと人質奪回シーンは原作のほうがはるかにスリリング。
いつも思うのだけど、映画を観る前に必ず原作を読んでおいたほうが楽しめる。
さて、先日の原作を読んで、映画化を語った時の課題であった「原作主人公のジャック・リーチャーとトム・クルーズとのギャップ」であるが、トムのリーチャー役はけっして悪くなかったと思う。M.I.とはかなり感じが違う。こんな冷徹な役もこなせるんだ!と感心してしまった。

リー・チャイルド著『アウトロー 上・下』

2014-09-14 12:31:53 | 「タ行」の作家
リー・チャイルド著『アウトロー 上・下』 講談社文庫 2013.1.16第1刷 

おススメ度:★★★★☆

Amazonの本の紹介文によれば
「平和なダウンタウンで起きた、ライフル狙撃による無差別殺人。容疑者は6時間後に特定された。証拠はこれ以上ないほどに揃っており、誰もが容疑者の有罪を確信していた。だが容疑者は黙し、たった一言だけを発した―「ジャック・リーチャーを呼んでくれ」。全米ベストセラー・シリーズ、待望の最新刊。」

ということなのだが、このジャック・リーチャーとは一体何者なのであろうか?
彼は陸軍における元軍警察の捜査官であった。現在は何も持たず(持たない物;運転免許証、クレジットカード、携帯電話、連邦給付金、税還付金、扶養家族)、米国内の好きな場所を放浪?中、といった極めて特異な人物である。「どうやって食っているんだろ?」という素朴な疑問が涌く人物である。

さて、本編であるが、紹介文にもある通り、有る者軍人が起こしたと思われる無差別殺傷事件であったのであるが、この男ジャック・リーチャーが登場することにより、事件の背後には極めて大がかりな陰謀が隠されていることが判明する。
この陰謀を影で操る不気味な謎の組織があることも徐々に彼の手によって解明されていく。
このあたりはサスペンスの謎解きと言ってもよい。上巻では謎の部分の深化が進み、下巻中間あたりから一気に流れが収斂される。その間読者はページを繰る手を止められない。

さて、そんな本編を読みながら、主人公リーチャーが謎を解きながら最後に一挙に暴力的、それもかなり強烈な手段によって解決する様はどこかでみた記憶がであると思い始めた。195cmの大男、鍛えられた強靭な肉体そして明晰な頭脳。そして元軍人。

そう、スティーヴン・ハンターによる「ボブリー・スワガー」シリーズに登場する伝説的スナイパーのボブと、彼の父親アール・スワガー(元警官)のことを!
アメリカ人はこの手のヒーロー像が極めてお好きなようであるが、著者は英国人とのこと。
このJ・リーチャーシリーズは今までに17作も上梓されているようだが邦訳は本編を含めて5作品とか。本編は邦訳の5作目にあたるらしいが、この作品が一挙に脚光を浴びたのは昨年公開された同作品の映画化によるものではなかろうか?映画も原作同名の「アウトロー」で何とトム・クルーズが主演。
そういえばこんな映画のポスターを見た記憶がある。だがリーチャーをトム・クルーズが演じる?今原作を読んだ後では相当の違和感を抱くのは僕だけではないはず。
でも逆にこのイメージのギャップをどう処理したのかが興味深い。この後DVDを観たくなった。観てみよう!






マーク・グリーニー著『暗殺者グレイマン』

2014-09-02 14:13:53 | 「カ行」の作家
マーク・グリーニー著『暗殺者グレイマン』 ハヤカワ文庫 2012.9.20第1刷 

おススメ度:★★★★★

世界中のその筋の機関から、グレイマン=目立たない男と呼ばれ恐れられたCIAの凄腕の暗殺者がいた。
その名をコートランド・ジェントリーという。そんな伝説的暗殺者がある日何らかの理由でCIAより解雇通告を受けた。更にシュート・オン・サイト(見つけ次第射殺せよ)という最高のプレゼント?をもらって。
かくして彼はCIA全組織から狙われる運命となった。彼はCIAの追跡を逃れながら今はロンドンに籍を置く“民間警部会社(CSS)”に雇われ、その会社の闇の仕事(海外における暗殺を主とする)を請け負っていた。だが、彼が請け負った最後の仕事、ナイジェリアのエネルギー大臣を暗殺したことが引き金となってグレイマンは絶体絶命の窮地に落とされることになる。
CSSの最大の顧客であるフランスのローランドグループの米人弁護士がCSSの代表フィッツロイの元を訪れ、CSSが命じた暗殺を遂行したグレイマンの首を差し出せとせまったのだ。
ローランドグループはナイジェリア大統領とエネルギー資源獲得に関わる数百億円の契約を直前に控えていたのだが、暗殺されたエネルギー大臣は大統領の実弟であった。
米人弁護士のロイドはCSSのフィッツロイが命令に背けないように彼の息子夫婦及び双子の娘をフランスのノルマンディにある古城に誘拐した。
更にロイドは会社の軍事部門を通じ12カ国(けっして主要国ではない)の特殊部隊から選ばれた暗殺チームをグレイマンに差し向けたのだった。
かくして1人対数十人というバトル・ゲームが欧州で繰り広げられることになった。
果たしてグレイマンは特殊部隊の12の暗殺チームを撃破して幼い双子の娘を救出出来るのか?といったような内容の冒険小説である。

イメージとしてはクイネル著の「燃える男」クリーシィにプラス映画の「ジェイソン・ボーン・シリーズ」(元CIAの特殊任務についていたが記憶をなくしたまま欧米のCIAより抹殺指令が発せられた)の主人公ボーンを足して二で割ったような存在かしらん。
とにかく超人的にタフで強いのだ。しかし本編中では数限りなくあちこち負傷し、その傷の度合いと荒療治には血の気に弱い方は震えがくるほど。
主人公グレイマンは血に飢えた殺人鬼として描かれる訳ではなく、時に彼の人間性を表す言動がちらほら散見されるのが救いだ。
先に彼を“燃える男”のクリーシィになぞらえたのは自分と関わった幼い子に対する“無償の愛”を持っているからだ。
暗殺者グレイマンのシリーズはあと2冊邦訳されているようなので楽しみだ。

尚、本編は読書の盟友ディックさんよりオススメ頂いたものでこの場を借りて深く感謝いたします。