min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

渡辺裕之著『新・傭兵代理店 欺瞞のテロル』

2016-11-30 22:12:58 | 「ワ行」の作家
渡辺裕之著『新・傭兵代理店 欺瞞のテロル』祥伝社文庫 2016.6.20 第1刷 700円+tax

おススメ度: ★★☆☆☆+α

九州鹿児島県にある川内原発のホームページがハッキングされ乗っ取られた。HPのトップ画面には散々報道でお馴染みのテロリストグループ、ISの旗がある画像が映っていた。その画面にはこの原発がテロのターゲットであり、決行日と思われる日付がありカウンターとなっていた。
慌てた日本政府は傭兵代理店の池谷に協力を求めた。池谷は森美香を通しリベンジャーズの藤堂に繋いだのであった。美香は以前の内調から新設の国の情報機関へと移っていた。
今回のリベンジャーズの任務は川内原発のHPに侵入したハッカーそれはISのサイバー部隊と思われたのであるが、それを突き止め彼らのテロルを阻止することにあった。
浩志をはじめリベンジャーズの主要なメンバーが先ず向った先はサイバー部隊が潜むと思われたフランスのパリであった。
一方日本に残っている美香は今は自分の夫である藤堂浩志の父の死亡を知ったのだがそれが自殺であったことからその真相を探るべく島根県まで足を伸すのであった。
物語はこうしてフランス、ベルギー更にシリアへと、また日本との二本の軸を並行して進めるのであるが、正直言って双方の場面とも進行が緩慢に思え疲れるほどだ。リベンジャーズの活躍の場はかなり後半のシリア国内での作戦行動においてであるが今迄のシリーズほど激しいものではない。激しければ良いわけではないものの、作戦行動、戦闘シーンもちょっとマンネリ気味である事は否めない。ISに関してはもう充分といったところか。
しかしISの欧州、なかんずくベルギーでの情勢、状況に関しては的確になされているので、パリやブリュッセルでの同時多発テロを理解するには重宝な分析だと思う。
またクルド人勢力の組織やその整形過程、歴史的背景などがストーリー展開に合わせ的確に説明がなされ、下手な中東専門家なんかの記事を読むより役に立つ。
ここで話はちょっとそれるのであるが、我が国の原発が某国の工作員やテロリストたちに狙われる危険性多いにあり得る。地震や津波だけが脅威なのではなくテロルこそ恐ろしい。というのも原発の警備があまりにもお粗末な点があげられる。もうかなり以前ではあるが、仕事の関係で東電の柏崎刈羽原発の敷地内に入ったことがあるのだが、メインゲートの警備には丸腰の民間警備員らしき2,3人が詰めているだけであった。これじゃ原発を襲い占拠するには一個小隊もあれば十分なのでは、と思った。先進国の警備状況はよく分からないが、途上国ではごく普通の火力発電所でも警察部隊、時には軍隊が警護に当たっているのが常識だ。
津波による被害は想定外であったというが、テロルの標的にされるのはもっと想定外なのであろうか?
日本がISなどのテロリストの標的になっていることは架空の空絵ごとではないことを政治家は認識してほしい。


矢月秀作著『狂犬』

2016-11-23 16:09:56 | 「ヤ行」の作家
矢月秀作著『狂犬』双葉文庫 2016.10.16 第1刷 648円+tax

おススメ度 : ★★★☆☆

ヴァイオレンス小説?「 もぐら 」で知られる矢月秀作の作品。妻子を三人組銀行襲撃犯に殺された神条刑事はその一味の頭目永倉を執拗に追いかける。私的復讐心とも思われるその捜査方法は時に常道を外れ黒社会から「狂犬」と呼ばれるようになった。
一方その狂犬から追われる永倉一味であるがこれまた野獣並みの凶暴性を持つ連中である。中でも永倉の凶暴さは図抜けて激しいものがある。銀行襲撃にしても拳銃だけではなくサブマシンガン、手榴弾あげくはバズーカ、グリネードランチャーまで用意し、警察ばかりではなく一般市民にまで発砲する無茶振りだ。このあたりが現代の日本犯罪事情からあまりにも遊離し、読者には現実感を与えない。
映画「lキルビル」の亜流版をみているようで時に鼻じらむほどだ。ま、フラストレーション解消を望む読者には良いかも知れない。

小川一水著『天冥の標7 新世界ハーブC』

2016-11-19 11:12:37 | 「ア行」の作家
本編の前に天冥の標6がある。1から3の三部構成なのであるが全編これクライマックスとも言えるおもしろさだ。内容は救世群が種の尊厳の為に全人類に対し宣戦布告し全面戦争に突入した。彼らは異星人カルミアンの技術により全員硬觳体となり、今までより更に強力な冥王斑ウィルス爆弾を巧妙に人類の元に送りつけた。
激烈な抗争の結果人類は死滅の淵にたたされたのであった。最後の人類の頼りの綱はシェパード号に乗り込んでいたアイネイアー・セアキであったのだが・・・・
あまりの面白さに感想をアップする間も無く月日が経ってしまった。このシリーズの最後まで読んだわけではないが、この三部作は最高に面白い!勿論オススメ度は★5だ。


で、本編の天冥の標7に移ろう。

小川一水著『天冥の標7 新世界ハーブC』ハヤカワ文庫 2013.2.20第1刷 760円+tax
オススメ度: ★4半

救世群艦隊との戦闘から何とも逃れたアインは恒星船ジニ号でミゲラと再会した。そのジニ号から生存している人類を求めて小惑星セレスへちゃくりくした。セレスの地下シェルターにはスカウトの連中が5万人の子供たちと共に避難していたのだ。
救世群の目を逃れ果たして彼らは生き延びることが可能か!?大人たちのほとんどが死滅し残ったスカウトの連中の年は18,19才というまだ少年とも言える若者たち。その連中が5万人もの子供たちを守る為には、ある種の国家を運営するにも等しい試練が待ち受ける。それは内部権力抗争であり、地下シェルターの維持、拡張、更に救世群からのぼうえいなどなど、未経験な難問が次から次へとスカウトたちの前に持ち上がる。
本編の最後の部分で読者はこのシリーズの第1巻の世界に舞い戻って来たことを知る。ここに至って今迄の謎の多くが解明されたかに思えたのであるが、まだいくつかの疑問は残る。ああ、先が読みたい!

米国映画『ジャックリーチャー Never go back』★ネタバレ注意★

2016-11-13 16:42:03 | 映画・DVD
米映画『ジャックリーチャー Never go back』2006年制作

オススメ度:星3半

原作: リー・チャイルド
監督: エドワード・ズウィック
配役: トム・クルーズ、コビー・スマルダーズほか

前作『アウトロー』の続編とあるがストーリィがそのままつながっているわkrじゃない。本編の原作はこのシリーズ18作目のようだが筆者は読んでいない。
主人公のジャックリーチャーは元米軍のMPの将校であり、相変わらず米国内を漂流している。何故か忘れたがその彼が元同僚であった女性将校に電話し会いに行ったところ、彼女はすぱいようぎで刑務所に収監された後であった。勿論リーチャーは彼女を脱獄させるのであったが、その二人を執拗に追いかけ抹殺しようとするグループが出現する。
この後はネタバレになるので読みたくない方はパスして頂きたい。

このグループは何者!?ここからは割とよくあるストーリーになるのだが、要は軍内部の高官とこの民間軍事会社との謀議でアフガンから撤退時に武器の横流しを計った。それをMPの女少尉の部下2に探らせて証拠をつかんだのだが、そこから民間軍事会社の暗殺部隊が暗躍し始める。
リーチャーと元同僚の女少尉はこの冤罪を晴らすべく奔走し、暗殺者の攻撃をからくも躱すのであった。
ところで前作アウトローでも感想を述べたのであるが、映画と原作のジャックリーチャー像は全く異なる。原作ではかなりの大男なのだが、演ずるトムクルーズはあの通りの小柄な男優 である。そのギャップを埋めるのはトムの俊敏なアクションだろう。特に今回は銃器に頼らずトムの拳が炸裂して小気味好い。
また前作の無表情な冷血漢とも取れるジャックリーチャーであったが、自分の落とし子かもしれない16才の少女を前にして、表情が一変し、情緒豊かな表情へと変わるシーンも見所か。
原作を読んでから観たいというお方には現在この作品が邦訳されている事をおしらせしたい。講談社文庫から今月発刊されたそう。
余談だがこの作品はトムの方から熱望して制作したものらしい。監督はかって『ラストサムライ』でタックを組んだエドワード・ズウィック。









池井戸潤著「下町ロケット2ガウディ計画」

2016-11-01 16:26:42 | 「ア行」の作家
池井戸潤著「下町ロケット2ガウディ計画」 小学館発行 2015.11.10第一刷 ¥1,

おススメ度:★★★★★

前作「下町ロケット」において国産ロケットのエンジン部分に使われるバルブシステムの採用を巡り大手企業帝国重工との激しい受注合戦の末、見事に勝利した東京下町の町工場・佃製作所の快挙に我々読者は大いに感動したのであった。
今度は「ロケットから人体へ」のキイワードの通りロケットエンジンから人工心臓へのバルブシステムへの転用を巡る熾烈な技術開発競争とその受注を巡り新たなライバルの出現を迎え、再び佃製作所の戦いが繰り広げられる。
冒頭物語は前作の流れをくみ帝国重工から新たに佃製作所製バルブシステムの試作品製作依頼があったのだが、試作品が完成し次の量産体制へ移行しようという段階になり、そこへNASAで培ったという技術を売りにサヤマ製作所なるライバルが割り込んできたのだ。この逆転劇の裏には前回佃製作所の持つ特許権で煮え湯を飲まされたと恨む帝国重工の調達部の一部の者たちの陰謀があった。
一端ロケットエンジンのバウブシステムの受注合戦に敗れたように思われる佃製作所に対し、同社が参入しよう試みる人工心臓「コアハート」のプロジェクトに対してもこのサヤマ製作所及びその上に立つ日本クラインそしてアジア医科大学の巧妙な陰謀が繰り広げられる。
更に福井の無名大学より要請のあった人工弁の開発に関してもアジア医科大学の金と権力に目がくらんだ貴船教授の妨害が始まり、佃製作所は会社の存続すら危うくなる窮地へと追いやられたのであった。
この医学界に於ける「白い巨塔」的な陰湿な権力闘争、大企業におけるあからさまな下請け企業への蔑視が行われる中、佃製作所は果たして反撃が可能なのであろうか?
ま、結果はある程度予測は立つものの、後半に描かれる「勧善懲悪」的物語の進行には思わず拍手喝采を叫びたくなるのであった。
下町企業の経営者およびその従業員が持つ技術者集団の矜持に対し心より感動した。皆さんに是非お勧めの一遍であります。