min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

上田秀人著『奥右筆秘帳 秘闘』

2015-05-26 15:42:19 | 「ア行」の作家
上田秀人著『奥右筆秘帳 秘闘』講談社文庫 2010.6.15

おススメ度:★★★★☆

同シリーズ第6弾である。徳川将軍継嗣最大の謎、家基の怪死をめぐり、物語はいよいよ佳境を迎える。
家基の死の真相に迫りつつある奥右筆組頭立花併右衛門であったが、その彼を自らの陣営の手駒にしようと企む松平定信は立花のひとり娘瑞紀の元へ婿養子を送ろうとしていた。
だがしかし、奥右筆というものは不偏不党を持って成り立つもので立花併右衛門はひとり決然と覚悟を決めたのであった。
奥右筆組頭立花併右衛門が家基の死の真相に迫ることに良しとしないもう一つの勢力があった。それは乞食坊主に身をやつした覚蝉が本来所属する東叡山寛永寺円頓院の主公澄親王の一派であった。
親王はこのたびの家基の死の真相が立花によって暴かれるのを阻止すべく❝お山衆❞と呼ばれる武闘派僧侶の軍団を立花抹殺のため送り出した。
ここに至って奥右筆組頭立花併右衛門の動きを巡って三つ巴四つ巴の戦いが行われることになった。
そして家基の死の真相は思わぬ人物の口から明らかとなる。その真相たるものは誰もが想像すら出来ない深い深い闇の奥に存在した。今後どの様な展開になるのか全く予断を許されぬ事態となったのである。

望月諒子著『ソマリアの海賊』

2015-05-16 10:16:16 | 「マ行」の作家
望月諒子著『ソマリアの海賊』幻冬舎 2014.7.25 1800円+tax

おススメ度: ★★★☆☆


ある日本の自動車メーカーの青年エンジニアがひょんなことからアフリカはソマリアまで行くことになった。その理由がまったく面白い。こんな発想は大好きだ。アフリカといえどもあのソマリアだ。ソマリアといえば海賊だ。青年京平はもちろん?海賊に捕らえられるが、身代金を要求される訳ではなく、妙な事件に巻き込まれる。
さて、その事件であるが、どうも読者には訳が分からない内容と展開となっており、これは作者の意図的な振り回し?なのか、はたまた作者の力量がない故の混乱なのか判然としなくなる。
僕の目から見ると、やはりソマリアそしてソマリア人への馴染みのなさ具合が浮いて出てきた感が否めない。
現地での調査、取材のしようもないことでもあり、同情はするのだが。
それとこうした小説には欠かせない武器や戦闘車両、装置等諸々のディテールが必要となるのであるが、巡行ミサイルへの取材調査と同じ程度には他の武器、兵器への調査取材をして欲しかったなぁ。
中間中弛みは否定できないものの、後半の展開は非常に面白かった。このプロットの展開で作者が提示した中東・アフリカ情勢の分析はとても興味深いものがあった。

マーク・グリーニー著「暗殺者の復讐」⭐️ネタバレ注意!

2015-05-08 08:52:02 | 「カ行」の作家
マーク・グリーニー著「暗殺者の復讐」早川書房 2014.5.20 第1刷

★ネタバレ注意!★








★ネタバレ注意!★



おススメ度:★★★★★


前作でロシアンマフィアのシドレンコの抹殺を固く誓ったグレイマンはその目的達成の為、彼の牙城目指して飛行していた。
推進装置付きのハングライダーで!シドレンコのサンクトペテルブルクの牙城は50名を超える部下たちが護衛していた。
が、グレイマンは難なくシドレンコをぶち殺すことは読者の誰一人として疑う者はいないであろう。さて、問題はその後である。グレイマンはいつもの通り窮地を脱して逃れたのであるが、その彼を一部始終監視していた存在があった。それはCIAの民間下請会社とも言えるタウンゼンド・ガヴァメント・サーヴィシィズ。
監視手段は今流行りのドローンである。このドローンに顔認証のソフトを使って上空から捜査対象を瞬時に識別できる。さらに対象者の歩容(各人固有の歩き方)パターンを記憶させると、顔が見えなくても識別可能となる怖るべき追跡者となる。
かくしてグレーマンはシドレンコの牙城襲撃前から脱出した後も一部始終監視されていたのだ。こうなるともう従来のSDRの手法を駆使しての追跡排除など不可能となる。やっと安全と思われたストックホルムのやすやどで眠るグレイマンをタンゼントの暗殺チームが殺到する!グレイマンもいよいよダメか?と思われたその時思いもしない助っ人が現れる。その名はラッセル・ウィトロック。CIA時代の暗号名をデッドアイという。今回の原作のテーマがこのデッドアイとなっている。ということは彼こそが今回のキィパーソンなのだ。
そしてこの男実はタウンゼントの独行工作員なのであるが彼の真の目的はイスラエル首相の暗殺。それもグレイマンの名をかたっての犯行を目論んでいる。それを察知したモサドの機関員がわりこんでくる。それも飛び切りの美人工作員を含めて。
これ以上バラすと全部ばらすことになるので止めておくが、このシリーズのエンディングも近い予感がする。何故ならキエフの謎の他に一番のなぞである、なぜ「見つけ次第射殺」の決定が下されたのか?この謎だけが現在残った。そしてこの疑問を解くために彼グレイマンは合衆国の土を再び踏んだのであった。ああ、早く第5巻目をだしてぇ!

古川日出男著『アラビアの夜の種族 Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ』

2015-05-05 11:07:45 | 「ハ行」の作家
古川日出男著『アラビアの夜の種族 Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ』角川文庫 2006.7.25 第1刷 



古川日出男氏の著作で読んだ作品は以前「ベルカ吠えないのか」ただ一作のみであった。実はこの時点で本来読むべき作品はまさしく本書「アラビアの夜の種族」であるべきものと確信していた。
だが、おそるおそる手にした「ベルカ吠えないのか」を読んでぶったまげてのけぞったものであった。以来、本書を読むべく機会を探っていたのであるついに時期到来と相成った次第。
ところが読み始めてから時間のかかることかかること。実に3巻を読むのに一か月以上を要したのでは。したがってこの間の本ブログも更新されることは無かったわけだ。
この「アラビアの夜の種族」であるがきっと元本があるのではないかと思っていたがあとがきで作者が語っている。サウジアラビアの古本屋で見つけたとのこと。英語版で著者名はない。
皆さんは「千一夜物語」(アラビアンナイト)はよくご存じだと思う。女性不信に陥った王様から命を守るためにシエラザードが夜ごと語る世にも奇妙な面白い話を語って命拾いしただけではなく、夜伽の女性を朝には殺すという王様の悪習を見事に断った有名な物語だ。
今回の「アラビアの夜の種族」はその執筆目的が格段に意義が高く設定されている。それはこの本が「災厄の書」と呼ばれ、一国の運命をも決定づけるものと言われた。
時はヒジュラ暦の1213年。西暦の1798年、ナポレオン・ボナパルトは3万の兵士を艦船に乗せエジプトのカイロを目指していた。厄災を与え滅ぼさんとする相手はナポレオンであったのだ。
ここでエジプト側が取った手段というのが、ボナパルトがカイロを蹂躙する以前にこの「厄災の書」をなんとか作り上げボナパルトに届けるという計画であった。
エジプトを司る統治者の一人の支配階級奴隷であったアイユーブは一人のアラビア語書家とその助手を用意し、語り部であるズームルッドを夜ごと招き、ここに世にも稀なる物語が18夜に渡って語られたのであった。
第一部に登場する主人公は醜悪な面をしたアーダム。読者はいきなり彼の行動に振り回され最後には驚愕のあまりのけぞるほど。蛇神のジンニーアに魅せられたアーダムは自身が黄泉の国の魔王となる。
第二部は見目麗しい王様の嫡男として生まれたサフィアーンの数奇な運命の物語。さらに第三部に登場するのはアルビノとして生まれた美貌の快男児ファラー。
この三者が地下帝国の魔宮で時空を超えて邂逅することになる。この戦いは18世紀の「幻魔大戦」ともいえる人類の想像を超えた戦いが繰り広げられる。その壮絶な戦いの果てにどのような結末が待っているのか!?

ところでナポレオンはアラビア語を理解したのであろうか?

いつもだと冒頭部でおすすめ度を期すのであるが、これはちょっとさすがに記しがたい。この稀代の書は自分にとってはとてつもなく面白いと思うのだがけっして他人様におすすめしたい作品とは言えない。