min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

藤田宜永著『鋼鉄の騎士 上・下』

2014-02-25 18:52:27 | 「ハ行」の作家
藤田宜永著『鋼鉄の騎士 上・下』新潮社 1998.2.1 第1刷 

おススメ度:★★★★☆

これぞ藤田宜永氏の代表作と言わずして何と言おうか!まず本のボリュームがハンパない。四百字づめ原稿用紙で2,500枚という長編大作である。ただページ数が多くて中味がスカスカなのか?とんでもない!基本は一級の“冒険小説”と呼べるものだが、その他“スパイ小説”“恋愛小説”“青春小説”“モーター・スポーツ小説”などのエッセンスがぎっしりと盛り込まれている。
物語の時代背景が1931年から1935年にかけての日本そして欧州。なかんずくフランスのパリが舞台である。
主人公の青年千代延義正は父親が子爵の大日本帝国軍人であり、学生時代兄の影響を受け左翼運動に走った。兄の官憲スパイ事件に巻き込まれ、大いなる挫折を味わう。虚無的な殻の中に閉じこもった義正を父はフランスへ連れていくことにした。父はフランスへ駐在武官として赴任したのであった。
だが義正は学業には一切の興味を示さず、日本以来の虚無的生活は変わらなかった。そんな彼がトリポリで開催されたGPレースを観戦したとたん、このGPレースの虜となり自らもレーサーを目指す。
だが、義正の行く手には父とも絡むソ連のスパイ諜報戦が待っていた。義正のレーサーへと成長して行く過程を縦軸とすると、数々の入り乱れた諜報戦が横軸となり物語が織り込まれ、最後には全てが見事に織り上がる筋立てとなっている。
主人公の生い立ちやら、当時の小国に過ぎない日本の名もない青年が、欧州のGPレースに参戦し活躍するなど通常の常識では考えられない物語設定であるが藤田宜永氏の手によって実に読み応えのある冒険小説となった。