C.J.ボックス著『震える山』講談社文庫 2010.4.15 第1刷
819円+tax
おススメ度:★★★★☆
米ワイオミング州トゥエルヴ・スリープ郡の猟区管理官ジョー・ピケットシリーズの邦訳第4弾。このシリーズは過去「凍れる森」を読んでいる。
ジョーはある日上司よりジョーもよく知る隣地区の猟区管理官ウィル・ジャンセンが44マグナムをくわえ自殺したことを知らされた。
その報に驚愕したことは言うまでもないが、上司は更に彼の後任をジョーに命じたのであった。
その後任の管区とはジャクソンというところで、グランド・ティートン国立公園やイェローストーン国立公園の入り口にあたる、米国でも有数の観光地である。この地区はセレブ達が集まるリゾート地であるとともに、どこよりも広大で荒々しい自然を擁しており、現代の西部が抱える様々な問題の坩堝でもあった。それは過激な動物保護運動や違法な狩猟、そして金と権力の亡者とも言える開発業者の存在。
ジョーはそんな極めて難しい問題を抱えるど真ん中に放り込まれることになるのだ。それも単身赴任で。
ジョーには転勤を躊躇する家庭内の問題をも抱えていた。思春期を迎え、母親と何かと対立する長女のシェリダンの存在が頭をよぎる。更に最近幾度となくかかってくる不気味な無言電話。こんな状況の中、妻メアリーベスと二人の子供たちを残して赴任することに苦悩するジョーであった。
だが一方これは昇格へのチャンスでもあったし、何よりジョーはウィル・ジャンセンの自殺自体に疑念を持ち、その解明を是非したかった。結局、妻メアリーベスの心配をよそにジョーはひとり赴任した。
「凍れる森」を読んだ時の感想同様、主人公ジョーは極めて実直な管理官であり、目の前の不正を黙って看過できない男である。彼はけっしてアメリカン・ヒーロータイプの人間ではないし、腕力は銃器の取り扱いに優れているわけではない。どこにでもいそうな古きよき時代の西部男とでも言えば良いのかも知れない。
赴任先のジャクソンでは予想されたように、同僚や上司の冷たい視線にさらされ、ティートン郡保安官からも疎まれる。それは彼がウィル・ジャンセンの死の真相にせまるにつれ激しくなるのであった。
また、先に述べた違法狩猟者との衝突、過激な動物保護活動をするメンバーとの確執も生じたが、一番の難敵は開発業者の頭目ドン・エニスの存在であった。
著者C.J.ボックスはこうしたいわゆる“厭らしいアメリカ人”を描かせると抜群の才能を持った作家であり、そのことがより一層主人公ジョー・ピケットの実直さを鮮明にさせる。
果たしてジョーは新任地で責務を全う出来るのか?ウィル・ジャンセンの死の真相にせまることが出来るのか?残された家族はどうなるのか?
重厚な筆致で物語は進行し、ちょっとしたミステリー・サスペンス風味を加えながら終末を迎える。かなりお薦めの秀作である。
819円+tax
おススメ度:★★★★☆
米ワイオミング州トゥエルヴ・スリープ郡の猟区管理官ジョー・ピケットシリーズの邦訳第4弾。このシリーズは過去「凍れる森」を読んでいる。
ジョーはある日上司よりジョーもよく知る隣地区の猟区管理官ウィル・ジャンセンが44マグナムをくわえ自殺したことを知らされた。
その報に驚愕したことは言うまでもないが、上司は更に彼の後任をジョーに命じたのであった。
その後任の管区とはジャクソンというところで、グランド・ティートン国立公園やイェローストーン国立公園の入り口にあたる、米国でも有数の観光地である。この地区はセレブ達が集まるリゾート地であるとともに、どこよりも広大で荒々しい自然を擁しており、現代の西部が抱える様々な問題の坩堝でもあった。それは過激な動物保護運動や違法な狩猟、そして金と権力の亡者とも言える開発業者の存在。
ジョーはそんな極めて難しい問題を抱えるど真ん中に放り込まれることになるのだ。それも単身赴任で。
ジョーには転勤を躊躇する家庭内の問題をも抱えていた。思春期を迎え、母親と何かと対立する長女のシェリダンの存在が頭をよぎる。更に最近幾度となくかかってくる不気味な無言電話。こんな状況の中、妻メアリーベスと二人の子供たちを残して赴任することに苦悩するジョーであった。
だが一方これは昇格へのチャンスでもあったし、何よりジョーはウィル・ジャンセンの自殺自体に疑念を持ち、その解明を是非したかった。結局、妻メアリーベスの心配をよそにジョーはひとり赴任した。
「凍れる森」を読んだ時の感想同様、主人公ジョーは極めて実直な管理官であり、目の前の不正を黙って看過できない男である。彼はけっしてアメリカン・ヒーロータイプの人間ではないし、腕力は銃器の取り扱いに優れているわけではない。どこにでもいそうな古きよき時代の西部男とでも言えば良いのかも知れない。
赴任先のジャクソンでは予想されたように、同僚や上司の冷たい視線にさらされ、ティートン郡保安官からも疎まれる。それは彼がウィル・ジャンセンの死の真相にせまるにつれ激しくなるのであった。
また、先に述べた違法狩猟者との衝突、過激な動物保護活動をするメンバーとの確執も生じたが、一番の難敵は開発業者の頭目ドン・エニスの存在であった。
著者C.J.ボックスはこうしたいわゆる“厭らしいアメリカ人”を描かせると抜群の才能を持った作家であり、そのことがより一層主人公ジョー・ピケットの実直さを鮮明にさせる。
果たしてジョーは新任地で責務を全う出来るのか?ウィル・ジャンセンの死の真相にせまることが出来るのか?残された家族はどうなるのか?
重厚な筆致で物語は進行し、ちょっとしたミステリー・サスペンス風味を加えながら終末を迎える。かなりお薦めの秀作である。