min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

米映画『ドラゴンタトゥの女』

2012-02-19 15:37:49 | 映画・DVD
映画『ドラゴンタトゥの女』


2011年アメリカ映画
原作: スティーグ・ラーソン
監督: デビッド・フィンチャー
キャスト: ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラ、クリストファー・プラマー、ステラン・スカルスガルド ほか

スウェーデン映画「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」(2009)を、「セブン」「ソーシャル・ネットワーク」のデビッド・フィンチャー監督がハリウッドリメイクしたミステリーサスペンス。

作品内容の説明は↓の原作小説の我が感想を参照願います。

http://blog.goo.ne.jp/snapshot8823/e/2099c928e90c3297ecdb8760b63ac70c


スウェーデンといえば、森と湖そして白夜の国。社会保障制度が整い、フリーセックスの国。近年ではヴォルボを代表とする北欧随一の自動車王国また優れたIT産業の盛んな国家。
そんな我々のスウェーデンという国に抱くイメージを根底から覆すような作品である。

日本人が抱く理想的国家スウェーデンの闇の部分がかくもあからさまに描かれようとは夢にも思わなかった。
女性への暴力、人種差別、売春買春の実態、今も存在するナチズムの影響、不正蓄財会社の存在などなど、スウェーデンが他の普通の国家が持つと同様の“闇”の部分が抉られる。

本作の主人公リスベット・サランデルは謎を秘めた過去を持ち、自分はもちろん女性に対する虐待に対しては異常とも思える反応と行動にうって出る。
本編はリスベットの過去を明らかにしないまま、ミカエルと接点を持った後、ふたりはスウェーデン北部のヘーデビー島で起こった40年前の少女の失踪事件を調査する。
孤島といういわば密室に近い場所で起きた謎の事件はやがて猟奇連続殺人事件へと発展してゆく。
だが、これは後に続く怒涛の物語への“導入部”に過ぎない、と言える。

さて、作品の出来であるがスウェーデン映画「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」が原作に限りなく忠実であったのに比べ、監督デヴィッド・フィンチャー流にある程度脚色されている。
それはタイトルバックからして本編の始まりを告げるインパクのある音楽と映像であり、本編中に出てくる息を飲むようなスウェーデンの自然の映像が戦列である。
主人公のリスベットに関しては個人的好みから言えばスウェーデン映画のノオミ・ラパス嬢に軍配を上げたい。彼女のほうがより原作のリスベットのイメージに近いと思うからだ。
一方のミカエルだが、スウェーデン版の男優マイケル・ニグヴィストがあまりにもしょぼい中年オヤジだったので今回のダニエル・クレイグに大いに期待した。
ま、それなりの味は出していたと思う。
だが彼の場合、007シリーズのボンド役のイメージを我々の側で払拭しなければならない。

行方不明の少女に関する脚色とエンディングでリスベットが取る行動に関する脚色はいただけないし、何よりこの長大かた煩雑な物語をわずか2時間超の時間でまとめることは至難の技であることは明らか。

いずれにしても「原作小説」の面白さにかなわないということだ。



佐伯泰英著『居眠り磐音江戸双紙 東雲ノ空』

2012-02-12 00:07:00 | 時代小説
佐伯泰英著『居眠り磐音江戸双紙 東雲ノ空』双葉文庫 2012.1.15 第1刷 

おススメ度:★★★★☆

姥捨ての郷での死闘を切り抜けた磐音一統はいよいよ江戸へ戻る決意をした。
しかしこの時おこんに第二子が宿っていることが判り、第二子もここで出産するよう住民から強く勧められたのだが、おこんの望郷の念は強く妊娠が安定するのを待ち江戸へ旅たったのであった。
磐音一行は真っ直ぐに江戸へ向かったわけではなく、往路にて多くの助力を得た京の茶屋本家中島屋に立ち寄り、高野山奥の院光然老師の縁で帝にも会うことが出来た。
この地で帰京後の対田沼一派の対応策を協議した。
また尾張名古屋では尾張徳川家の重臣たちとも会い、今後の田沼降ろしの秘策を練ったのは言うまでもない。ある程度の根回しを終え、磐音一行はいよいよ江戸へと向かった。
一行の江戸入りを阻む田沼一派の目を欺き、わりとすんなり上京した磐音らはおこん、空也と共に両国橋の上から江戸の町の賑わいを眺め、万感胸にせまるものがあった。
更に磐音を驚かせるものが待っていた。それは江戸随一の両替商今津屋が江戸郊外にある御寮の一角に新たに尚武館を建て、磐音の再興を図っていたのだ。
弟子の再結集を阻むべく、それぞれの所属藩に圧力を加えたり、刺客を差し向けることも怠らなかった。だが、そのような嫌がらせに屈する磐音ではなかった。
江戸に再結集した旧尚武館の門弟たちと早速稽古に打ち込む磐音であったが、一方、愛弟子の二人デブ軍鶏こと利次郎と霧子との恋の行方やヤセ軍鶏こと辰平の恋も描く。
また早苗の尚武館奉公の復帰やら磐音を取り巻く人々の人間模様がとりこぼしなく描かれてゆく。
前述の対田村意次戦の端緒は“山流し”に会った速水左近の江戸への復帰工作であった。この裏には磐音の徳川御三家への準備周到な作戦が功を奏した。
かくして対田沼一派との最終戦争がいよいよ始まろうとしている。今後の展開が楽しみになってきた。