min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

スコット・スミス著『シンプル・プラン』

2011-03-20 15:45:50 | 「サ行」の作家
スコット・スミス著『シンプル・プラン』 扶桑社ミステリー
2000.2.28 第29刷 

オススメ度:★★★☆☆

もしもあなたが、出所のわからない大金を密かに発見した場合どうするか?
という割と陳腐かつ単純なテーマ?の作品。

米国の北部に位置する片田舎(ま、場所の詳細は不要でしょう)の飼料店で地道に働くハンク・ミッチェルは雪の降る夕方、兄のジェイコブと彼の友人ルーと共に自殺した両親の墓参りに向かった。
ひょんなことから果樹園の中に墜落した小型機を発見し、機内から死んだパイロットと共に440万ドルが詰まった袋を見つけた。
どのような出所のカネであるかは不明であるが、この墜落した小型機の状況からして“マトモな金”であることは考えられず、彼らは警察に届けることなく横領することに決めた。
金はすぐさま分配するのではなく、この金を追う者たちがいないことが判明するまでハンクが保管し、安全であることを確かめた上で、三人で山分けしようということにした。

この手の話で、こうした金を拾った者たちが一枚岩の団結でほとぼりが冷めるまで待つ、という事例はなく、必ず内部のだらしなく弱い者から綻びが生じるのが常である。
ハンクが当初から危惧した通り、三人の秘密が綻びだすには多くの時間は必要ではなかったのだ。
ひとは一度大金を手にすると(その人間が見も心も貧しければ貧しいほど)、一刻も早く使いたくなるものである。
やがて、状況はハンクが想像もしなかった事態へと進み、血みどろの連続殺人へと発展してゆく。

物語の結末は読みながら見えてくるのであるが、読者としてはどうみてもハッピイ・エンドに終わるわけがないとは思いつつも、どのような着地にするのか興味深いところ。個人的には作者の着地の仕方は気に入った。

ただ、かのスティーブン・キングが絶賛したというほど天性のストーリー・テラーとは僕には思えない。
むしろ殺人動機はあるものの、その発端が作り出す重大な悲劇を単なる結果論的に「こうなってしまったからしょうがない」と処理する作者の手法には納得できない。
巻末で訳者が「何気ない情景描写が次の犯罪の伏線になっている」と賞賛するのであるが、僕には上述のように説得力に欠けるストーリーとなってしまった。
一作品でその作家の技量を断定しがたいので、次の作品もそろえているので検証してみたい。