min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

ダヴィド・ラーゲルクランツ著『ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女』

2016-01-08 19:58:22 | 「ラ行」の作家
ダヴィド・ラーゲルクランツ著『ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女』早川書房 2015.12. 20 第一刷 上下各 1,500円+tax

おススメ度:★★★★☆+α

スティーグ・ラーソンがミレノアム3部作を書き終えた時点で、その続編も考えており、内縁の妻によるとその遺稿も何ページか残されていたという。その内容はリスベットの妹のその後にまつわる物語だという噂もあった。今回はラーソンの父と弟そして出版社より著者ダヴィド・ラーゲルクランツに対し続編を書くよう要請があったという。
このようなケースは古今東西過去にもあったものだが、多くの場合作者が変われば作風も変わるのが当然で、今回もその可能性が大いに懸念された。
この新しい作者の作品は知る人は多くないであろう。だが彼が作品を書くにあたり過去のミレニアム作品とラーソンについて徹底的に研究したと言われる。結論から言えば彼の努力と才能は見事に結実し成功したものと思われる。
さて、内容であるが、当初ある意味ミレニアムのスピンオフ作品ではないのか?と思われるほど前作とは縁が薄い物語だと思っていたのだが、この件にリスベット・サランデルらしきハッカーの存在が判明することによって一挙にストーリーが加速する。
当初合衆国内の問題と思われた事案が人工知能を研究するスウェーデン人学者とその息子の命が狙われる事態となり、リスベットが直接的に強力介入してくる。何故彼女がここまで必死になるのか!?単に薄幸の障害を持った少年の命を救いたいだけなのか?実はその動機の後ろには更に強烈な彼女の介入理由が潜んでいたのである。
それは彼女いわく、亡き父の血というかDNAレベルでの戦いだと言うものであった。この辺りの詳細は重要なネタバレになりかねないので一切書けないのだが、ここで作者ダヴィド・ラーゲルクランツは見事にスティーグ・ラーソンの遺志を引き継いだと言えるだろう。
作品の出来不出来を過去作品と比較するだけではなく、この新たな物語を純粋に楽しめば良い。特に「リスベット萌え」に陥っているオジサンにとっては彼女が再び元気に暴れまわる姿を見ているだけで幸福感を得られる、というものだ。
あと2作、大いに期待したい!


ピエール・ルメートル著『その女アレックス』

2015-10-01 11:12:11 | 「ラ行」の作家
ピエール・ルメートル著『その女アレックス』文春文庫 2014.9.10第1刷 924円+税

おススメ度:★★★☆☆

巷ではこの作品は発行されて以来結構話題作となりそこそこ売れているようだ。横浜市立図書館の待ち受け人数を見ると350人以上おりとても待つ気にならないので書店で購入した。著者はフランス人とのことで、この題名から想像するに映画監督リュック・ベッソンあたりの女暗殺者ニキータのイメージを抱いてかなり期待して興奮してページを開いたものであった。
それと読みたいと思ったもうひとつの理由は英国推理作家協会のCWAインターナショナル賞を受賞した作品であったから。
のっけから衝撃的シーンで始まる。女が全裸で木のケージに閉じ込められ、いわゆる中世の拷問の一種らしいのだがその手法たるや恐るべきものであった。その名前は失念したが、要は急激な苦痛を与えるのではなく、不自然な姿のまま身体を拘束し神経・筋肉が緩慢に痛めつけられ、やがて筋肉は痙攣をおこし気がふれるほどの苦痛となる。更にその様を空腹な数匹の巨大なドブねずみがアレックスを食らおう隙を伺うという身の毛もよだつシーンが展開するのであった。
一体この作品は「沈黙の羊」のような猟奇殺人小説家?と思うのだが、その後第二部、第三部の展開によって予想もできない小説となってゆく。訳者あとがきで述べられているように、
「この作品を読み終えた人々は、プロットについて語る際に他の作品以上に慎重になる。それはネタバレを恐れるというよりも、自分が何かこれまでとは違う読書体験をしたと感じ、その体験の機会を他の読者から奪ってはならないと思うからのようだ」とあるのだが、まさにその通りである。確かに一つの斬新な手法なのかも知れないが、根が単純でこらえ性の無い自分にはかなり苦痛の時間を通過せねばならなかった事を告白せねばならない。
評価の★の数が普通なのはこの手法の好き嫌いだけの話である。






クリス・ライアン著『反撃のレスキュー・ミッション』

2014-12-28 15:33:25 | 「ラ行」の作家
クリス・ライアン著『反撃のレスキュー・ミッション』(原題:Strike Back)ハヤカワ文庫 2008.10.20第1刷 860円+税

おススメ度:★★★☆☆

今や路上生活者にまで身を落とした元SAS隊員ジョン・ポーターが店主に追い立てられる寸前にみたテレビニュースに映った顔は紛れもなくあのアラブ人であった。
あれは17年前のレバノンでの人質救出作戦。爆弾を身体に巻いた少年が突っ込んできた。ポーターはまだ小さな少年であることに気づき、瞬時に殺すことが出来なかった。彼は少年を殴って気絶させたのであったが、その事が同僚の3人を失う結果となりその責めを一挙に受ける形でその後SASを除隊したのであった。そうだ、あの時の少年だ。笑う時の口の歪み方があの時と寸分変わっていない。今は誘拐した組織ヒズボラの大幹部となっているではないか!
自分をここまで貶めた男ハッサド・ライミ。この17年間に及ぶ雪辱の落とし前をつけようではないか!
SIS(国家情報機関)に乗り込んだものの今のポーターの身なり、姿では相手にされる訳がない。しかし、イギリス政府もその救出の命を受けたSISも拉致された英国人ジャーナリストのケイティ・ダートマスを救いだす手立ては全く持っていなかった。
彼女は唯一人ヒズボラの手に墜ち、今はレバノンにいるのか隣国へあるいはイランに移されているのか全く不明だ。
あと3日以内に英国軍をイラクから撤退させねば、捕まったケイティの首が刎ねられる。その模様がネットで生中継されるのだ。
全英はこのヒズボラの脅しに震撼し、国民の多くは軍を撤退せよ!という世論が高まりつつあった。
レバノンには英国のあるいはアメリカの情報網は寸断されてから久しく無に等しい。
ジョン・ポーターは運よくSIS長官の目が止まったことで、自分はあのアラブ人テロリストを少年時代命を救った。だから自分には会ってくれるはずだ。アラブ人は信義に熱いのだ!と説得。あとの解決策は何もないのだから長官を彼に賭けてみる事に。
捕まったケイティの首が刎ねられるまであと3日であった。それまでに解決しないとネットで彼女の首が落ちるシーンが生放送される。
かくして成功の見込みなどほとんど無い人質レスキュー作戦が開始されたのだ。ポーターがこの絶望的ミッションに身を投じた直接のきっかけは、数日前に17年ぶりに自分を探し出して会いに来た愛娘サンディのためであった。
何としても娘の為に自らの汚名を払拭し、SISから相応の命の代価を得たかった。
そして結局ポーターは先方のハッサドの了解を得てレバノンへ単身のりこんだのであるが・・・・・・。
いや全くこのような作戦が(作戦などほとんどないに等しいのだが)有り得るのか?一体どのような話し合い(交渉の落とし所があるのか)で二人して帰国しようというのか!?
このにっちもさっちも行かない混沌からの脱出は見ものである。そして物語の大円団では読者の胸のツカエがきっと晴らされるでありましょう!

これでクリス・ライアン氏の元SAS隊員シリーズもののほとんどを読破したと思う。北アイルランド、フォークランド、そして中東各地の紛争地に送られるSAS隊員の任務の多くはほとんど地獄と言える戦場だ。間違ってもこんな職業には付きたくないものだ。




クリス・ライアン著『究極兵器 コールド・フュージョン』

2014-12-20 17:40:25 | 「ラ行」の作家
クリス・ライアン著『究極兵器 コールド・フュージョン』(原題:Ultimate Weapon)   ハヤカワ文庫 2007.10.20第1刷 

おススメ度:★★☆☆☆

湾岸戦争時特殊任務でイラクに潜入したSAS隊員ニック・スコットは捕えられ厳しい拷問を受けながらも何とか命を失わずに帰還した。だがニックの受けた肉体的、精神的な傷はあまりのも大きかった。
ニックは帰還後、SASを除隊しスイスでスキースクールを開くも酒に溺れ、更に妻を事故で失ったことで益々酒に溺れていった。だが残された愛娘のため生活を立て直し、娘はケンブリッジに進むほど優秀であった。
今のニックにとっては一カ月に一度海外勤務から戻って愛娘セアラに会うのが最大の楽しみであったのだが、そのセアラがどうも失踪したみたいだ。
周辺事情を探った結果、彼女の失踪理由は彼女の大学での研究内容のせいだろうと思われた。
そんな中、セアラの男友達である同じくSAS隊員であるジェドがSISの命令で開戦前夜のイラクへ仲間3人と共に潜入偵察を命じられる。大量破壊兵器を開発中と見られるバクダット郊外にある工場に潜入し兵器の詳細を探れというものであった。
その後、セアラが拉致されたのはイラクであった。彼女の研究テーマにからむ究極兵器がイラクで開発中でありその手伝いをすることが拉致の目的であったようだ。その究極の兵器とは何か?
セアラの救出のためSISがその任務を指名したのは父親たるニックその人であった。
かくして3人がイラクのバクダットへまるで磁石に吸い寄せられるように行くのだが、はたして彼らの運命や如何に!?

といった内容でスケールだけはやたらと大きい。イラク戦争におけるいわゆる「衝撃と畏怖」作戦が発動され、米国・英国軍本隊が侵攻する前夜に空爆(主にトマホーク巡航ミサイルによる)が行われた裏にはこの究極兵器を破壊する狙いがあった。との設定だが、いかんせん開戦直前の敵国内に白人4人がヘリで下され、工場プラント内に潜入するなんぞ、あまりにも荒唐無稽な物語ではないか。それになんぼ天才的頭脳を持った学生とはいえ、人類全体の行く末に影響を与えるような研究をしていること事態容易に納得できない。
ま、単なる戦争アクションものとして読むには面白いだろうが、その信憑性があまりないことから手放しで楽しむことは出来なかった、というのが正直な感想。



結城充孝著『プラ・バロック』

2011-10-04 16:29:52 | 「ラ行」の作家
結城充孝著『プラ・バロック』2011.3.20 第1刷 686円+tax

おススメ度:★★☆☆☆

本の背表紙の紹介文

「雨の降りしきる港湾地区。埋立地に置かれた冷凍コンテナから、14人の男女の凍死体が発見された!睡眠薬を飲んだ上での集団自殺と判明するが、それは始まりに過ぎなかった。
機捜所属の女性刑事クロハは、想像を絶する悪意が巣食う、事件の深部へと迫っていく。斬新な着想と圧倒的な構想力!全選考委員の絶賛を浴びた、日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。」

に釣られて購入したのであった。が・・・・・・

些細な事柄なのかも知れないが、何故、主人公を含めた登場人物の名前がカタカナなのか!?
確かに日本人の姓名をカタカナ表記する他作品での事例はある。ひとつは、姓名の表記が定かでない場合(口頭で聞いただけの場合)に使われ、その後表記漢字が判れば、以降カタカナは使用されない。
いまひとつはその人物が日系人であり、オリジナルの姓名が外国語表記の場合。
また、SF小説で未来の時代の日本人であることを示したい場合に使われている。

では本作でカタカナ人名を使わねばならない理由はどこにあるのであろう。
この小説は“近未来”小説であることを主張したいのであろうか?
本作で重要な要素としてコンピューター上の“仮想世界”が登場し、主人公始め犯人らしき人物も存在するのだが、クロハが捜査する上でもこの“仮想世界”が重要なカギとなってくる。この仮想世界での登場人物たちはそれぞれ「アバター」の形で登場し名前も本性も秘匿している。
本作の登場人物たちが「リアル社会」と「仮想社会」を行き来しているうちに何時しか同化してしまっていることを表現する為にカタカナを使用しているのではないか?ともちらりと思ったりした。
実際、描かれるリアル社会の風景描写や登場人物のキャラ造形が何か現実社会に根ざした描かれ方とも思えず、いかにも“つくりもの”としか思えない、一向にのめり込んで読む気力が湧いて来ない。






スティーグ・ラーソン著『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士(上・下)』

2010-03-27 13:30:30 | 「ラ行」の作家
 
スティーグ・ラーソン著『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士(上・下)』 早川書房 2009.7.15 初版 1,619円+tax

オススメ度:★★★★★

ミレミアム3は公安警察の陰謀を暴く諜報ミステリーと裁判小説?ともいえる展開となる。
ある連続殺人事件の容疑者となったリスベット・サランダルはマスコミによって“小学生の頃から暴力的で、精神を病んでおり、売春容疑で何度か検挙され、悪魔教を崇拝するレズビアン”の連続殺人鬼と報じられる。
ミレミアム3ではこうした彼女の嫌疑を晴らし名誉を挽回する壮絶な戦いが描かれる。
シリーズを通してのテーマは「虐げられた女性の解放」であることは明白。女性の尊厳を傷つけるあらゆる男たち、機関・組織、国家に対して敢然と立ち向かうミカエルとリスベット、そして彼らの仲間たち。

本編で繰り広げられる公安警察、刑事警察、更にミカエルや彼を支援するセキュリティー会社間のエスピオナージ戦は圧巻だ。

スティーグ・ラーソン著『ミレニアム2 火と戯れる女』

2010-03-27 13:08:00 | 「ラ行」の作家




スティーグ・ラーソン著『ミレニアム2 火と戯れる女(上・下)』 早川書房 2009.4.15 初版 1,619円+tax

オススメ度:★★★★★

冒頭、少女が革紐で小さなベットに縛りつけられ、胸郭はハーネスで押さえられているシーンで始まる。このおどろおどろしさは、まるでサイコ・ホラー小説を想起させる。
果たしてこの少女は何者かによる新たな犠牲者となるのか、はたまたリスベット・サランダルの回想シーンであるのか。
ミレミアム1で登場したリスベットは全くの謎の女性だ、と前回記した。どのような謎を持った女性かと言えば、彼女は次のように描写される。
“頭脳明晰、映像記憶能力を備えた天才ハッカーでありながら、どういうわけか中学校を中退、一人前の成人として生活できないとの烙印を押され、後見人がついている”
こんな彼女の過去に一体何が起こったのか?彼女の言葉を借りると“最悪の出来事”とのみ語られる謎の過去なのである。
ミレミアム2では彼女の“最悪の出来事”が単に過去の出来事ではなく、現在も彼女の前に立ちはだかる最悪、最大の敵であることが徐々に明かされる。
その内容はここで明らかに出来ないのが残念であるが。
本編は彼女の最大の敵との対峙が中心となって描かれ、極めてハードボイルドなタッチで物語が進行する。この結末を知るまでページをめくる手は止まらない、たとえ夜を徹しても・・・
本編のラスト部分で考えられないようなドンデン返しがあり、読者を狼狽させるのであるが、この続きは更なるスエーデンという国の闇の部分へ足を踏み入れていくことになる。


スティーグ・ラーソン著『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女(上・下)』

2010-03-13 15:56:15 | 「ラ行」の作家
スティーグ・ラーソン著『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女(上・下)』 早川書房 2008.12.10 初版 1,619円+tax

オススメ度:★★★★★

2005年にこの本がスエーデン国内で刊行された時、センセーショナルな話題が沸き起こり空前の大ヒット作となった。その後世界中の主要な国々で翻訳され、今や全世界でシリーズ本が2千万部を越えて売れているという。
我が国でも昨年当りから「このミス・・」初めいくつかのメディアの読書欄で第一位となったことはご承知の通り。
なにか一時の「ハリポタ」現象みたいな様相を呈し、ヘソが横を向いている僕なんかは最初のうちは完全に無視してかかった。
その後やはり気にはなっており、札幌時代は市の図書館に予約したものの、半年以上待っても順番が回ってこなかった。
が、つい先日読書仲間からシリーズ全作を借りることができ読み始めた。当初、シドニーシェルダン的安易なエンタメ物かと高をくくっていたのだが、全く別物であった。

ストックホルムにある「ミレニアム」という経済雑誌の編集長を務めるミカエルは友人からの情報提供でスェーデンでも屈指の実業家のひとりであるヴェンネルストレムに関する告発記事を掲載したのだが、友人の情報の裏をしっかり取らなかった事に加えヴェンネルストレム側からのガセネタの策略にひっかかり、名誉毀損という逆提訴の攻撃を受けあえなく裁判で敗れた。
「ミレミアム」からは広告主が相次いで去ってゆき、本人も懲役刑を待つ中、同国の歴史ある大企業であるヴァンケル社の会長から奇妙な調査依頼がミカエルに舞い込んだ。もう40年近くも前の孫娘失踪に関する調査依頼であった。

いわば密室犯罪に例えることも出来るような孤島、ヘーデビー島での謎の失踪事件。調査を進めるうちに照射される一族であるヴァンケル家の隠された闇の部分、そして浮かび上がる連続殺人魔の存在。物語は意外な展開を見せ始める。
この小説は単なる謎解きミステリーではなく、スェーデンの現代史をも語りながら意外と外国人には知られていない闇の部分(性犯罪、経済犯罪)を抉り出していく社会派ミステリーとも言える。

とにかく登場人物の数が尋常ではない。また、見慣れない名前(スェーデン人の名前は我々には馴染がない)に戸惑い読み進めるのにかなり難儀する。

だが、登場人物、とりわけ主人公のひとりミカエルの魅力と途中で運命的な出会いの後ミカエルの命の恩人となる“ドラゴン・タトゥーの女”ことリスベット・サランデルの存在に魅了されてしまう。
この一見少女に見えるリスベットは全く謎の女性で、何と形容してよいのやらほとんどわからない存在なのである。
ミカエルばかりではなく読者である僕も彼女の虜となってしまった。

とにかくアメリカの小説にはみられない読後感というか、この小説世界のテイストは例えるなら初めてA.Jクィネルの作品世界に触れた時の感情に似ているかも知れない。
それはやはり英米とは馴染のない北欧の国と人々の生活様式や行動、考え方がもの珍しいせいなのか?

『ボーン・レガシ-(上)』

2009-01-05 11:30:10 | 「ラ行」の作家
『ボーン・レガシ-(上)』ロバート・ラドラム/原案 エリック・ヴァン・ラストベーダー/著
ゴマ文庫 2009.1.10 667円+tax
オススメ度★★☆☆☆

ラドラム原案「暗殺者」の続編と称するこのシリーズ。映画のノベライズ本とは違う(まだこのストーリーの映画は公開されていない)のであるが、テイストとしてはやはりその類か?と思わざるを得ない。
逐一どこが、とは指摘しないが全体のトーンがやはり違う。これは単に訳者の相違とかではない。
そして公開されたマット・デイモンのボーンシリーズとはまたストーリーが違うのではないだろうか。何故なら妻となったマリーが生きており子供がふたりいるのであるから。
ボーンが現在米国で言語学の教授として生活しているところから本編はスタートする。
話の筋を明かすわけにはいかないし、また(上)だけではまるで筋道が見えてこないのであるが、これはまさに映画を前提にして描かれている、と言っても過言ではない。
はて、このまま(中)及び(下)に進もうかやめようか思案中。



特別執行機関カーダ

2007-02-25 21:41:16 | 「ラ行」の作家
この1ヶ月のうちクリス・ライアンの作品をふたつ紹介いたしました。
もし、この作家に興味がわいた方がおりましたら是非この作品も読んでみてください。
この作家の最高傑作のひとつである、と確信しております。尚、本文は過去の読書感想から流用させていただきました。

『特別執行機関カーダ』★★★★★ 読了日6/29
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題名:特別執行機関カーダ
原題:The Hit List
著者:クリス・ライアン
訳者:伏見威蕃
発行:ハヤカワ文庫 2002年5月31日 第1刷 
価格:940+Tax
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デビュー作『襲撃待機』やその続編『偽装殲滅』の感想は、どちらかといえば小説というよりも硬質な戦闘ルポルタージュを読むといった感じで、読者としてはいまいち主人公の元SAS隊員、シャープ軍曹に感情移入できないものがあった。
しかし本編では同じく元SASの軍歴を持つ主人公、ニール・スレイターと彼が所属することになった「カーダ」という組織が展開する物語内容は、今までの「特殊軍事作戦」から更に「防諜戦・暗殺任務」へと変質して行く。
双方どちらも血生くさい死闘を繰り広げるのではあるが、この「カーダ」という組織は英国情報部MI6の下部機関でありながら、ある種独立組織の「暗殺部隊」であることからよりいっそう陰惨さが滲みだされる。
チームは新入りの主人公を入れて6名、中に2名の女性を含む。それぞれ計画立案、資材調達、監視、実行のプロ達であり、小人数の組織であるため時には全員が武器をとり戦闘に加わることになる。
今回のミッションの目的はある人物の「暗殺」と英国にとって不利益となる「CD」の回収で舞台はパリ及び近郊。フランス国内で頼りとなる組織は一切なく、孤立無援の戦いを余儀なくされる。作戦はいったん成功するかに思われたのだが.....。
息をつかせぬスピーディーなストーリー展開と手に汗を握る迫真の戦闘場面、思わぬどんでん返し。この作者クリス・ライアンは前作とは打って変った力量を発揮し読者である我々をあきさせることがない。
登場する人物達の造形も素晴らしく、切ない「恋」をもサービスしてくれる。
なんか続編がありそうな予感がする一篇。