min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

マーク・グリーニー著『暗殺者の飛躍(上・下)』

2017-11-12 11:58:53 | 「カ行」の作家
マーク・グリーニー著『暗殺者の飛躍(上・下)』ハヤカワ文庫 2017.8.20第1刷
 
おススメ度 ★★★★★

「目撃しだい射殺」の真実を米ワシントンDCにグレイマンが単身乗り込んで解明した前作で本シリーズは終焉か?と思ったのは私だけではなかったと思う。
しかし、最後の場面で元SADの部長、今はカーマイケルの後釜に収まったマット・ハンリーから思わぬ提案があった。
それはCIAの秘密作戦を契約工作員として働かないかというものであった。
ジェントリーはしばし考えたのち、2年間の期間を限定したうえでその後は米政府が自分の身を保護プログラムに組み込んでくれるのであれば、という条件で同意したのであった。
ここに追われる一方のグレイマンであったジェントリーの新たな章が始まろうとしていた。
ハンリー本部長と待ち合わせた空港には既に香港へ向かうプライベートジェットが用意されていたのだ。
ジェントリーがこのミッションに同意した理由は香港でかって彼のハンドラーであった英国人のフィッツロイの命運がかかっていたからだ。

中国サイバー戦部隊に属する范という天才ハッカーが亡命を望んで台湾に向おうとしている。彼を見つけ出し保護したうえで米国の手勢に渡せ、というのがハンリー本部長の命令であった。
しかし、ジェントリーの本音は中国の諜報機関に囚われたというフィッツロイの救出にあった。
逃亡した天才ハッカーを追うのは中華人民解放軍の諜報機関と更にこのハッカーの横取りを狙うSVR(ロシアの対外情報庁)の秘密精鋭部隊ザスロンのコマンドチームであった。
CIA、中国そしてロシアの諜報員そして戦闘コマンドたちが三つ巴となって繰り広げられるジェットコースター・スーパーアクションが東南アジアをまたにかけて繰り広げられる。

対ジェントリー対策チームのリーダーとして辣腕をふるったあのスーザン・ブルーアが今度はジェントリーのハンドラーとして登場し彼らのやり取りが見ものだ。
それと前作のレビューでは言及しなかったCIAのSAD部隊の上司であったザック・ハイタワーが同僚のトラヴァースの登場、活躍でますます賑やかになっている。
更に特筆すべきはこの三つ巴激戦中に起こったジェントリーと〇〇(秘密)恋愛模様。この辺りにジェントリーの隠された特質が現れて面白い。
それは恋愛だけを指すのではなく、一度恩を受けたフィッツロイへの献身的な義理がたさとか、自分の身を賭してでも無辜の女性たち(特に知り合いというわけではないが)の救出などなど。
とまれ、本シリーズはいましばらく続く模様だ。

マーク・グリーニー著『暗殺者の反撃(上・下)』

2017-11-09 16:35:06 | 「カ行」の作家
マーク・グリーニー著『暗殺者の反撃(上・下)』ハヤカワ文庫 2016.7.15第1刷 

おススメ度 ★★★★★


前作『暗殺者の復讐』の最後の場面でグレイマンことジェントリーはヨーロッパを脱出しアメリカ本土に向かう決心をする。
それは「目撃しだい射殺」命令がCIAから出され、その後5年間というものCIAはもちろん、世界中の諜報機関から繰り出されるグレイマン暗殺部隊の攻撃をかわし続けたものの、逃げ回ることにも疲れ果てこの件に決着をつけようと決意したためであった。
「目撃しだい射殺」の命令を下したのはCIA国家秘密本部のダニー・カーマイケル本部長であることは間違いなく、その命令が何故出されたかの真相をジェントリーはどうしても知りたかった。
かくしてジェントリーは米国の首都ワシントンDCに単身乗り込んだのであった。
彼の首都侵入を知ったカーマイケル本部長は万全の体制をしいてジェントリーを迎え撃つのであった。かくしてワシントンDCを舞台としたグレイマンとCIAとの激烈な最終戦の火蓋が切って落とされた。
カーマイケル本部長が用意した迎撃部隊はISOCと呼ばれる統合特殊作戦コマンドたちであった。CIA直属のSAD(特殊活動部隊は米国内では法規上運用出来ないからであった。
だがカーマイケルはこれだけでは戦力が不足だとの思いからワシントンにあるサウジアラビア情報部アメリカ支部が運用する特殊部隊の応援を手配した。実はこの部隊を運用するサウジ人運用者こそが最大のキーパーソンとなる。
とかく、ジェントリーの立てた作戦はあまりにも突飛で我々の想像力の遥か上をゆく。唖然茫然とはこのことを言う。
こうした実践部隊とは別に「CIAヴァイオレーター対策グループ戦術作戦センター」も人的な補強がなされる。その筆頭がスーザン・ブルーアという凄腕の指揮官であった。この人物は次回作に登場するようで、是非記憶に留めておきたい女性だ。
さて、「目撃しだい射殺」の引き金となったのが「バックブラスト作戦」なのであるが、この6年前にイタリアのトリエステで行われた作戦の真実が全ての問題の核心をなす。この真相は最後の最後まで二転三転するのだがこのあたりの下りは正にサスペンスそのものだ。
とまれ、本作はワシントンDCを中心に物語が進行することから、アクション的にはこじんまりしたものになるだろうと当初思ったのであるがなんとナント本シリーズでも最高最大の見せ場が満載!改めてグレイマンの凄さを認識した次第。その他ジェントリーの幼少時代から青年期にかけてのエピソードがあったりでとても興味深い一遍となっている。