min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

夏見正隆著『要撃の妖精』

2009-11-24 07:44:03 | 「ナ行」の作家
夏見正隆著『要撃の妖精』 徳間文庫 2008.11.15 第1刷 1143円+tax
オススメ度:★☆☆☆☆

いわゆる「仮想戦記モノ」のジャンルに入るのだろう。このジャンルは総じて僕の趣味には会わないので避けてきたのであるが、本屋の店頭で何をトチ狂ったのか覚えてないが本署を手にしていた。
多分、気分転換のつもりか本の帯にあった女性F15パイロットという文字のせいであろうか。
内容に関しては一切論評しない、する気も起きない。かくもぶざまな小説が文庫本で千円以上の値段をつけて売られていることに対し驚きと憤りを抱くのみ。


垣根 涼介著『借金取りの王子 君たちに明日はない2』

2009-11-18 07:12:31 | 「カ行」の作家
垣根 涼介著『借金取りの王子 君たちに明日はない2』 新潮文庫 2009.11.1 第1刷 590円+tax
オススメ度:★★★★★
* 2007 年9月新潮社から出された単行本の文庫化

このシリーズ(まだ2作しかないのに。でもシリーズ化を強く期待してこう表現させてもらおう)の第一作「君たちに明日はない」が山本周五郎賞を受賞していたとは知らなかった。
でもそう聞くと「さもありなん!」と納得出来る作品の質である。今回の村上真介が取り組むリストラ企業はデパート、生保、サラ金業者そして旅館業界である。
どの業界も外から眺める印象と実態の間には大きな差異があり、こうしたある意味知られざる業界の裏側事情を作者垣根涼介氏は本当によく調べ上げているなと感心させられる。
裏事情を調べて書くだけなら単なるルポライターであるが、本書はそこで働く主に女性たちの群像を、彼独自の鋭い感覚と視点から掬い取って創造した珠玉の物語を我々読者に語ってくれる。

バブル経済がはじけて10年を越える“今時”であればこそ、同氏が表現する物語が具体的な説得力を持って我々に訴えかけてくるのだろう。
高度成長経済の時代、一体誰がこの日本で「リストラ代行業」を思いつこうか。
そもそも垣根涼介という作家はデビュー作から一貫して骨太な冒険小説を書く数少ないひとりの作家と思われていた。
そんな作者が作風というかジャンルを一変させ前作「君たちに明日はない」を上梓した時は本当に驚いたものであるが、本作を読み、同氏の人間観察眼は更に深化され、特に女性心理をここまで探れるのか?と舌を巻く思いがした。
ただその真偽は幾人かの女性に聞いてみたいところだが。

とにかく良く出来た短編集である。どこかの映画会社が映画化を企てるであろうが今しばらく止めて欲しい。今映画化されると登場人物のせっかくの素晴らしいキャラが壊されかねないから。

スティーヴン・ハンター著『黄昏の狙撃手(上・下)』

2009-11-13 07:05:37 | 「ハ行」の作家
スティーヴン・ハンター著『黄昏の狙撃手(上・下)』 扶桑社ミステリー 2009.10.30 第1刷 各800円+tax
原題:「Night of Thunder」(爆音の夜)
オススメ度:★★★★☆

言わずと知れた「ボブ・リー・スワガー」シリーズの最新作である。前作『四十七人目の男』にて現代日本を舞台にしたチャンバラ小説に挑戦?したもののあえなく頓挫。同シリーズの熱狂的ファンをがっかりさせたものだ。
著者のハンターさんもいよいよお終いか!?という周囲の危惧を覆すべく帰って来たのが本作である。
ボブももう63歳となり、往年の馬力、しなやかさそして鋭さは陰を潜めたかに描写されるも、「ここ一番!」という時の“爆発力”と“練度の高い技術”はしっかりと持っていることを証明した一書である。

さて、ストーリイであるが舞台を再びアメリカに移し、ボブは愛妻と新たな養子の女の子ミコ(日本人)と共に田舎暮らしを楽しんでいた。
そんな中、長女ニッキが交通事故に遭い意識不明の重態となった旨の一報が入り、ボブは一瞬自らの過去の亡霊の仕業か?と戦慄した。
ニッキはNYの大学を卒業しヴァージニア州ブリストルの新聞社に就職して記者となっていた。その彼女は最近地元に蔓延する覚醒剤を追って取材しており、どうも事の真相に近づき過ぎた為刺客が送られたものと思われた。
ボブは単身、独自の捜査に乗り出す。
正体不明の敵はそんなボブの命もつけ狙うことに。果たしてニッキは意識を取り戻すこが出来るのか、そしてボブは自らと家族を守り切ることが出来るのか!?ということになる。
原題からも推察されるが、舞台となるブリストルは「ナスカレース」が開催される地である。同レースには馴染がないが「インディー500マイルレース」のようなものであろう。
仕組まれた犯罪はこのレースに絡むようであることから、激烈なカーチェイスと銃撃戦が展開されよう事が期待できる。
だが、どうも本来のこのシリーズが持つ“重厚さ”に欠ける、という印象を持ったのは私ひとりであろうか?
この先本シリーズが存続する可能性を語る時、著者ハンター氏の健康上の問題さえなければ今後の展開は日本人の養子ミコの成長にかかっている!と断言しても良いのではなかろか?
というのもこれ以上スワガーサーガを続けるネタはなく、ボブ自身は引退せざるを得ないのが現状であるからだが。とまれ、異色でありかつ秀逸な同シリーズが存続することを切に願うものである。

鈴木光司著『楽園』

2009-11-09 22:59:20 | 「サ行」の作家
鈴木光司著『楽園』新潮文庫 平成8年1月1日第1刷 476円+tax
オススメ度:★★★★☆
(平成2年12月新潮社から単行本として出たものの文庫化)

先に谷甲州の『霊峰の門』を途中でぶん投げた読書録を書いたわけだが、当ブログを読まれたシルバーブルメさんのレスで本作品の存在を思い出した。
本作は鈴木光司のデビュー作で第二回日本ファンタジーノベル大賞を受賞した作品である。
鈴木光司の作品は一般的には「らせん」や「リング」などのホラー小説作家として知られ、僕はそのうちの1,2作しか読んだ記憶がない。

本作は3部構成となっており、はるか我等の祖先であるモンゴロイドのある一族の神話に近い物語と他部族の襲撃で生き別れとなった男女がはるか数千年の時空を越え、大航海時代の南洋の島で、そして現代の米国で再び邂逅するという壮大な物語である。
大きな特徴は登場人物に日本人がひとりも登場しないということ(今そう珍しいことではないかも知れないが)、輪廻転生を人類(モンゴロイド)のグレートジャーニーにからませ壮大なスヶールで描いている点である。
前述した谷甲州の『霊峰の門』と比較してもそのスケールの大きさと物語から得るカタルシスは本作品の方が圧倒的に上だ。


高嶋哲夫著『熱砂』

2009-11-04 16:35:52 | 「タ行」の作家
高嶋哲夫著『熱砂』 文春文庫 2009.10.10第1刷 800円+tax

オススメ度:★★★★☆+α

かって報道カメラマンとして一世を風靡した柴田雄司はいまはファッションモデルを主体とした商業写真家となってそこそこのビジネスとしている。
そんな彼の元に学生時代の親友で今は外務省の役人となっている早川がスタジオに突然訪れた。
学生時代、彼とふたりで奪い合った形のかっての恋人優子が、二人の子供と共にアフガニスタンで飛行機が不時着し行方不明になった、と告げたのであった。
更に驚愕すべき事実をも告げた。それは優子たちを連れ去ったのはかって行動を共にした反政府ゲリラの英雄ヘーゲルらしいと言う。
それと決定的に柴田を打ちのめした事実がもうひとつ告げられた。優子の子供のひとり15歳になる女の子は実は柴田の子であると。だからお前が探しに行くべきだと早川はせまった。
この時点では何故優子たち(日本人のフランス大使館員が夫)がアフガニスタンにて連れ去られたのかの理由は明らかにされない。
柴田は抵抗しつつも結局早川の要請で出かけることになるのだが、早川自身の裏で蠢く黒幕らしき組織と人物のほかにも、いくつかの不穏な影が柴田の身辺にちらつくのであった。
果たして柴田はかっての盟友となったヘーゲルと出会い、無事優子たちを救えるか?というサスペンスタッチの冒険小説となっている。
結末は見えているのだが、このエンディングが気に入ったので★4つプラスαとした。
モデルは故マスード将軍と彼を撮って一躍有名になった日本人カメラマン長倉洋海であることは明らか。それと優子たちが連れ去られた理由。この辺りの設定はちょっと安易ではある。