min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

迎春

2015-01-03 09:00:11 | ノンジャンル
皆様、明けましておめでとうおめでとうございます。

当ブログは2005年3月に開始いたしましたのでもうすぐ10年となります。ご訪問いただきました人数も昨日の段階で199999でしたので本日で20万台に達したものと思われます。総閲覧数も50万台に達しており、ひとえに皆様のご来場に感謝する次第です。
今年も更に本を映画を取り上げて感想を書いていきたいと思いますので宜しくお願い申し上げます。

近況

2014-06-09 21:22:15 | ノンジャンル
この2,3カ月諸事情で本ブログの更新がされませんでした。特に今年に入って視力が衰え、長時間本を読むことが出来なくなったことが一番辛いことです。
そんな中、やはり読書はしたいもので次のような本を読んでおりました。
当ブログにても過去紹介したことがあるのですが、一番読んだのが渡辺裕之氏の「傭兵代理店」シリーズ。
このシリーズは外伝を含め11作もあります。外伝を除いて後半の2作「殺戮の残香」と「滅びの終曲」、更に昨年新シリーズとして始まった「新・傭兵代理店」の3作品を読みました。世界を舞台に戦い続ける藤堂浩司率いる傭兵部隊“リベンジャーズ”の活躍は胸を熱くさせます。
今まで日本人作家が描いた傭兵ものではトップクラスの作品群だと思ってます。
その他久しぶりに石田衣良の「池袋ウエストゲートパーク」を再読してみたりして「懐かしいなぁ」と感慨にふけったりしました。
特筆すべきは高野秀行著「謎の独立国家ソマリランド」と上田早夕里著「深紅の碑文 上下」の2作品でこの2作品に関しては近々感想を記したいと思っております。


10年前の今月に読んだ本

2012-11-06 11:17:06 | ノンジャンル
10年前の今頃、自分はどんな本を読んでいたのか?
暇にあかせて自分のHPの読書感想をのぞいてみた。



独断と偏見に満ち満ちた5★評価です。



2002年11月


11月に読んだ本のリスト

#55『新日本中国戦争第15部日中激突』★★☆☆☆ 読了日11/02
#56『D.o.D.』DICE OR DIE ★★★☆☆ 読了日11/05
#57『向こう側にすわった男』 ★★★☆☆ 読了日11/07
#58『残光』 ★★★★★ 読了日11/10
#59『孤立突破』 ★★★☆☆ 読了日11/13
#60『ニカラグア密航計画』★★★☆☆ 読了日11/16
#61『ススキノ・ハードボイルド・ナイト』★★★★★ 読了日11/17
#62『T.R.Y.』★★★☆☆ 読了日11/22
#63『探偵は吹雪の果てに』★★★☆☆ 読了日11/24
#64『日輪の翼』★★★★☆ 読了日11/29


#55『新日本中国戦争第15部日中激突』★★☆☆☆ 読了日11/02
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著者:森詠
発行:学研 2002年11月6日
価格:各\760+tax 
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もう読まないぞ、このシリーズは!と思いつつ出るとまた買ってしまう自分。もう15部目にもなるんか。
「日中激突」というサブタタイトルに惹かれた部分も今回はある。
台湾侵攻作戦に失敗した中国北京軍と日米PKF軍が中国本土で激突する。なかでも自衛隊のF-15イーグルと中国の最新鋭機殲撃13型とのドッグファイトがみもの。
森詠の「燃える波濤」以来の中国分割論が今又本作品でも展開される。覇権主義国家である中国は確かにその勢力を分散したほうが近隣諸国ばかりではなく世界平和のためにはよろしいのでは。他人にはけっしておすすめはできないシリーズだが、やっぱりまた出たら読むんだろなぁ......。


#56『D.o.D.』DICE OR DIE ★★★☆☆ 読了日11/05
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著者:沢井鯨
発行:小学館 2002年9月20日
価格:\1,100+tax 
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デビュー作のP.I.P.(プリズナー・イン・プノンペン)は相当強烈な内容の作品であったが、実体験を基にして書かれていたためある種凄みというか迫力のある作品であった。この作者、次回作はあるんだろか?と密かに思っていたのであるが、ここに全作よりエキセントリックなストーリーをひっさげて再び登場した。
舞台はフィリピン。マニラに巣くうドロップアウトした日本人達の描写が先ず面白い。そんな中にプノンペンから直行で飛び込んだ主人公イザワは日本の常識では計り知れない日本人たちに揉まれ、ついにはフィリピンの底知れぬ暗部に足を踏み入れることに。
ストーリー展開は“荒唐無稽”の一語に尽きるのだが、これもご愛敬といおうか、主人公の無軌道ぶりに唖然としながらもけっこう楽しんで読めた。
さて、次回作のために再びタイ、ミャンマーに取材行しているという作者だが、次はどんなストーリーを展開するのか今から楽しみだ。


#57『向こう側にすわった男』 ★★★☆☆ 読了日11/07
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著者:東直巳
発行:ハヤカワ文庫 1996年9月15日
価格:\520 
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ススキノ便利屋「俺」シリーズの唯一の短編集。標題の「向こう側にすわった男」を初め、「調子のいい奴」「秋の終り」「自慢の息子」「消える男」の5作が収められている。
この短編の中では「調子のいい奴」が一番面白かった。
が、やはりこのシリーズ、長編のほうがもちろん良い。あと、一作あるのみ?


#58『残光』 ★★★★★ 読了日11/10
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著者:東直巳
発行:角川春樹事務所 2000年9月8日 第一刷
価格:\1900 
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読み始めてしばらくして、『あれぇ~!』って思ってしまった。
榊原健三という男が主人公らしいのだが登場してくる人物がほとんど“おなじみの面々”である。そう、ススキノ便利屋「俺」シリーズの面々だ。だが、いつもと様子が違う。
ストーリーから文体までガチガチのハードボイルドじゃないの、これは。
読み出してから気づいたのだがこの『残光』の前に同じく榊原健三を描いた『フリージア』という作品があるらしいのだが探しても見付からない。
これまたハルキ文庫というところから出版されているのだが、どうもこの作家、出版社に恵まれないというのがいまひとつ世にブレークしない理由かな、なんて思ってしまう。
でも大方の前後関係が本編でも分かったので構わず読み進めた。便利屋の数年後がかいま見えたり興味深いのであるが、ちょっと待ってよ、ここまで来る前の作品があるんじゃないの?と少々あわてたりもした。
しかし、そんなことはどうでもよくなるほどのスピードと迫力で物語りが進行し、結果、一気読みしてしまった。
う~ん、この作家、ただもんじゃないぞ!


#59『孤立突破』 ★★★☆☆ 読了日11/13
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原題:TENTH MAN DOWN
著者:クリス・ライアン
発行:早川書房 2001年11月5日 第一刷
価格:\900 
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『襲撃待機』『弾道衝撃』『偽装殲滅』に続くSAS隊員ジョーディー・シャープのシリーズ第4作目。
物語の舞台はアフリカ。カマンガ政府(もちろん架空の国)の要請で政府軍コマンド部隊の訓練にあたっていたSASのチームは、一台のトラックが引き起こした交通事故により、現地の呪医(呪術師)から10人の白人が死ぬだろう、と予言される。
ま、これ以上のストーリー紹介はやめておくが、なんか「呪術」を持ち出すことによって今までセミドキュメンタリー・タッチの描写が影をひそめ、作者自身が呪術にかけられてしまったような作品になってしまった。
著者描くところの「アフリカ人」のあまりの愚かさ、野蛮さには辟易する。全く事実ではないわけではないけど。
そんな中で登場するジェイソン・フィリ(最後まで行動をともにする現地人)の存在に多少救われる思いがするのだが。
これでこのシリーズは終了のような気持ちにさせるエンディングだ。


#60『ニカラグア密航計画』★★★☆☆ 読了日11/16
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題名:ニカラグア密航計画
著者:宮内勝典
発行:KYOIKUSHA 1986年12月
価格:\1500(当時) 
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全体が12章からなるある種の紀行文なのだが、表題の『ニカラグア密航計画』は10~12章に記されている。あとの部分は著者がニューヨークを起点にアフリカ、スリランカ、カリブなどを旅した旅行記となっている。
著者が最初に足を踏み入れたのは恐らく1980年代の中頃よりちょっと前ではなかろうか。西アフリカから東アフリカに移動、さらに北アフリカ(一度ヨーロッパに入った後)を回るのであるが、僕自身が旅した軌跡とかなり重なる部分があり興味が持てる。
ケニア在住の著者の友人がソマリ女性と結婚し子供をもうけている箇所では、やはり著者の目にもソマリ女性、そして隣国のエティオピア女性が極めて魅力的に映る記述にひとりうなずいてしまった。

さて、後半のニカラグアへの密航であるが、これは著者が合衆国のインディアンとの繋がりから成り行きで行なわれたものである。カリブ諸国内では先住民としてのインディアンはほとんどスペインを始めとする“征服者”たちの手によって放逐された。ここニカラグアも2,30万人の先住民がかって住んでいたものの、彼らもやはり1934年のソモサ軍事独裁政権によって国を追われ隣国のホンデュラスなどに難民として逃れていった。
その後ソモサ政権は左翼系ゲリラ組織、サンディニスタ民族開放戦線によって打倒されるのだが、生き残った先住民であるインディオ(作品中は意図的にインディアンと称している)はミスラサタ(MISURASATA)というゲリラ組織をつくりその自治権を求めて戦いを始めた。
ゲリラたちは満足な装備はなく、手にする武器も各国のものでバラバラだ。割り当てられた弾丸もわずか4,50発というありさま。食べるものにも困窮し、ジャングルの中で細々と政府軍に抗っておりその勝算は絶望的に見える。先住民族の物質文明へのスピリテュアルな戦いとしては極めて意義のある戦いなのであるが.........
著者宮内勝典氏は野間文芸新人賞を受けているくらいの文才に恵まれたお方だ。現在も米国に在住。

#61『ススキノ・ハードボイルド・ナイト』★★★★★ 読了日11/17
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題名:ススキノ・ハードボイルド・ナイト
著者:東直己
発行:寿郎社 2001年4月18日 第一刷
価格:\1800+tax 
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北海道新聞木曜版「道新おふたいむ」紙上で1996年から2000年にかけて連載されたコラム『すすきのバトルロイヤル』からの抜粋である。以前同名で北海道新聞社刊で出されたそうだがその中でもれてしまった作品を集めたとのこと。
これは東氏が実際すすきので出会った人々と彼らの周辺で起こりえたエピソードを綴っているのだが、作者自身もそうとうの飲んべいであることから自然に酔っぱらいにまつわる小話が大半を占める。
自らのドジも含め周囲ののんべえが繰り広げる失敗例または狂態は著者のエスプリをきかせた語り口と更にウィットとユーモアにあふれる文章は読者をして抱腹絶倒させシンミリとさせ時には深い反省を促したりもする。
このクレージーな世界に出入りする氏はその著作であるススキノ便利屋シリーズの「俺」にかなり投影されていることが分かる次第。こんな面白いエッセイ?はそうそう無いのでは!

#62『T.R.Y.』★★★☆☆ 読了日11/22
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題名:T.R.Y. トライ
著者:井上尚登
発行:角川文庫 平成14年7月15日 四版
価格:\667+tax 
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なんか最近ローマ字3つの題名の本が多いのはどういうこったろ?お初の作家である。1900年代初頭から欧州、ロシアそして日本、中国をまたにかけて活躍した稀代の“詐欺師”伊沢修の物語。読んですぐ感じたのは映画の『スティング』。これぞと狙った相手を大仕掛けで騙す手口の妙がなんともあのP.ニューマンやR.レッドフォードの映画を想起させる。
同じことを巻末の解説のところで映画監督の催洋一氏が記されていた。とにかく騙し騙され最後のドンデン返しは読者をも欺く。さ、あなたも騙されてみます?
ところでこの作品、織田裕二主演で映画化されこんどの正月明けに公開されるそうな。期待していいのかは?。


#63『探偵は吹雪の果てに』★★★☆☆ 読了日11/24
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題名:探偵は吹雪の果てに
著者:東直己
発行:早川書房 2001年12月31日 初版
価格:\1800+tax 
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シリーズ4作目『探偵はひとりぼっち』から時間がいっきょに十年以上経っている設定で、「俺」はもう45歳となっている。あれ、前回から今までの間が飛びすぎてんでないかい?と思うのだが、この間の物語といえば先日読んだ『残光』であろうか。あの春子先生とはどうなってしまったの?という向きにはネタバラシするわけにゃイカンわけ。どうぞ読んでのお楽しみ?ってか。
さて、今度はある事情で「俺」はススキノを離れ、吹雪が舞う深川の奥地“斗己誕”(トコタン)という過疎地に行く事にあいなる。
吹雪の雪原に繰り広げられる死闘。。。というわけだが雪道でスッテンコロリンと転んでしまう「俺」はいつものススキノを闊歩するようなわけにはいかんのだった。十五年前に別れた恋人が現れ「俺」が北大に通わなくなった頃の理由が明らかにされたりするのだが、何故か甘ずっぱい感傷ともいえる描写が垣間見える。これも「俺」が45歳という年になったせいか。なんかこのシリーズ、これにて終了!という気もしてきた。




#64『日輪の翼』★★★★☆ 読了日11/29
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題名:日輪の翼
著者:中上健次
発行:文春文庫 1992年9月10日 第一刷
価格:\480+tax 
*図書館より借り出し
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熊野の「路地」に住む主人公ツヨシほか3名の若者と7人の「オバ」らが改造冷凍トレーラーで伊勢、一宮、諏訪、恐山そして最終目的地皇居に向け「聖地巡礼」の旅に出る。

中上健次の作品は熊野に興味を抱くものにとって必読なのであろうが、なぜか“おどろおどろしい”イメージがありなかなか手を出しかねていた。
読み始めた途端、その特異な文章のリズムに戸惑いを感じる。普段はハードボイルドを中心とした短いテンポで切れがある文章に慣れ親しんでいる自分には苦痛であった。
また、冒頭より「オバ」らの強烈な熊野言葉の方言やそのいちいち辛気臭い言動に惑わされ、このまま続けて読むのがイヤになりかけた事もあったが、読み進むにつれ「中上ワールド」にぐいぐい引き込まれていった。

車(本作品の場合は巨大なトレーラー)で移動しながら進行する手法はけっこうポピュラーなものがあり、こうした小説はロード・ムーヴィーならぬロード・ノヴェルとでも呼ぶのであろうか。
複数のいわくくある登場人物たちが、道中でこれまたいわくありげな人々に出会いながら物語がつくり出されていくのだ。
それにしても7人の「オバ」らの神仏への敬虔な信仰心とは対照的にツヨシと「田中さん」らの奔放な性行動は見事なコントラストをなす。過去と未来、男と女、老いと若さ、信仰と背徳、都会と田舎、こうした相対するもの全てを内包しながら奇妙な巡礼の旅が続き、ある意味では「幻想的」なエンディングを迎える。

作中、多少主人公より年上とはいえ、同じ仲間の田中という登場人物に「田中さん」と敢えて“さん”をつけた理由はなんだろ?などとどうでもいいことに疑問がわいてしまった。単にふだんからそう呼んだに過ぎないのかも知れないの。ま、いいっか。
主人公ツヨシはまぎれもなく作者・中上健次自身を投影しているのだが、それにしてはちょっとハンサムすぎやしませんか?



以上。それにしても読書傾向が10年前からほとんど変わらんなぁ(苦笑)




読書の秋

2012-10-18 23:34:15 | ノンジャンル
今年の夏は特別に酷暑となった。そのせいかすっかり読書ペースが落ち、気がつけばすっかり涼しさを通り過ぎて肌寒いくらいの秋が到来した。
先週北海道に行った折友人から本の寄贈を得たのを機会にちょっと読書ペースを上げようっと。頂いた本は添付画像の通り。

また図書館にリクエスト中のものとして

1.コーディ・マクファディン著   「遺棄上・下」


2.樋口明雄著           「 竜虎(ロンフー)」


3.百田尚樹著           「 海賊とよばれた男 上・下」


4.垣根涼介著           「勝ち逃げの女王 」


以上。う~ん、楽しみだ。


        「

Eric Clapton&Steve Winwood Japan Toure 2011

2011-12-13 22:57:20 | ノンジャンル
12月6日(水)、冷たい雨が降る中17時40分頃武道館に着いた。会場は18時からであるが多くの聴衆が既に列をなして並んでいた。
武道館は初めてだ。というか、東京に出てきてから始めてコンサートに来た。
武道館は想像していたほど巨大ではなかったが、今まで経験した室内コンサート会場では最大だと思う。
平日のコンサートだから満杯にはならんだろう、と高をくくっていたら開演前にはびっしりと聴衆で埋まった。
さすがクラプトン、ファンの年齢層も厚いのには感心させられた。僕の前列には20代前半の女の子が二人座っていたのだが、そこへもう70代と思われる老婆が二人やってきて、自分たちの座席の番号が老眼?で読めず、若き女の子たちにチェットを見せどこにあるんか訊いていたw

演目はほとんど聴いたことのない曲ばかりであった。今回共演するスティーブ・ウィンウッドとの兼ね合いもあり、自らの古いヒット曲は差し控えたのであろう。
全般的にブルースっぽい曲目が多かった。エレクトリック・ギターでもアンプラグドの生ギターでも十分に彼のギター演奏の魅力が発揮されていた。
ヴォーカルとしての歌声も声量があり全然衰えを感じさせない。
演奏は超絶技巧とは違った円熟味あふれる確かなテクニックを持ち、聴衆には深いインパクトを与えてくれる。
今回あらためてクラプトンの原点はブルースなのだと認識した。ブラック・ブラックなブルースよりもホワイトっぽいブルースが僕は好みなので、今回のブルースの数々は満足出来た次第。
とはいえ、「レイラ」はやはり聴いてみたかった。これが最初で最後のクラプトン・コンサートとなるだろう、との予感を持って9時過ぎに武道館を後にした。

映画『一命』

2011-10-18 17:55:16 | ノンジャンル
物語のあらすじは

Cinema cafeより引用

「戦国の世は終わり、平和が訪れたかのようにみえた江戸時代初頭。徳川の治世のもと、大名の御家取り潰しが相次ぎ、仕事も家も無くし生活に困った浪人たちが続出していた。そして、困窮した彼らの間で、裕福な大名屋敷に押しかけ、庭先で切腹を申し出ると面倒を避けたい屋敷側から職や金銭を与えられることを利用した「狂言切腹」が流行していた。そんな中、名門・井伊家の門前に津雲半四郎(市川海老蔵)と名乗る浪人が現れる。家老・斎藤勘解由(役所広司)は、数ヶ月前にも同じように訪ねてきた若浪人・千々岩求女(ちぢいわ もとめ/瑛太)の起こした狂言切腹の顛末を話して聞かせる。すると半四郎は、自分が切腹に至るまでの驚くべき事実を語り始め…。」


中世の封建社会が矛盾に満ち満ちていることは古今東西の歴史をみれば明らかなことではある。
また勝者が敗者を支配するのは動物社会同様、人類においてもジュングル・ルールが厳格に適用されてきた。ただその適用の仕方がサムライ社会においては現代よりもより厳格に行われてきたのは事実。
本作を撮るにあたり三池崇史監督が目指したものは何だったのであろう?
単なる武士社会の矛盾と欺瞞を暴き、虐げられ侍の最後の“矜持”の発露か!?もちろんそれもあるだろう。だが何故今古臭い映画『切腹』のリメイクを行ったのか?

本編を観ながら僕の頭の中に浮かんだのは現在の日本、そして現在の世界であった。
それは時が経ても変わらぬ「格差社会」の現状である。
勝ち組と負け組の鮮やかでかつ残酷なまでの差違。負け組が一生かけても決して浮上できないシステムは正に現代も中世のまま。
竹みつで井伊家の侍達に切り結ぶ津雲半四郎の最後の叫びは、「それがしどもは単に生きたかっただけなのだ。おぬしらに憐憫の情というものはないのか!」であったが、このセリフは300年後の日本の政治屋、官僚ども、そして自らの利益しか追求しない大企業に向かって投げつけるべきかも知れない。

<余談>

本編の配役は市川海老蔵、瑛太、満島ひかり、役所広司ほかであるが、市川海老蔵に関しては彼が根っからの歌舞伎役者であることを認識させてもらった。が、あの事件を忘れることは出来ないが故に心の隅でシラケさせる部分があったことは否定しようがない。
瑛太は正嫌いな役者のひとりであるが、今回の演技に関しては大いに評価したい。
役所広司は日本の時代劇にあける重鎮とも言える存在になりつつある。お見事。
満島ひかり・・・・・



韓国映画『アジョシ』

2011-09-29 21:19:32 | ノンジャンル
おススメ度:★★★★★

正直なところ韓国映画ってめったに見ない。
記憶している作品と言えば随分前になるが「八月のクリスマス」や「猟奇的な彼女」、「僕の彼女を紹介します」(実はチョン・ジヒョンのファンなのだ)とかで、アクションものでは「シュリ」くらいなもんだろう。
なにげに本作評判がいいようなのであまり期待しないまま「久しぶりに韓国映画を観てみるか」と軽い気持ちで出かけた。

いやぁ、ぶったまげた!韓国映画、なかなかやるじゃん!!!
この映画は正にハード・ボイルドである。人間の皮を被ったクズどもを容赦なく抹殺する様は小気味よい。
余計な?ヒューマニズムなんぞ交えず徹底的に殺戮するところが良い。
だが、ただ単に人間を抹殺する殺人狂ではなく、心に致命的な傷を負った主人公が、自分の全てを投げ出して“少女”を救出しようと立ち上がる。
まるで自らの妻子を守ってあげることが出来なかった贖罪をはらすかのごとく敵に立ち向かう。自分は少女にとって隣のアジョシ(おじさん)に過ぎないのだが。

この辺りの主人公の心象風景はかの「レオン」における暗殺者に重なるものがある。そうだ、まさに韓国版「レオン」と言えまいか!
主演のウォンビンの陰のある演技とその対照的なありし日の笑顔の落差が素晴らしい。
日本のオバサン達がキャーキャー騒ぐのも分かる気がするが、本作を見たらグロさに卒倒しかねないだろう(苦笑)
そんな日本の韓流オバサンたちの思惑を越えて本作は徹底的に“ハードボイルド”ムービーなのだ。

ストーリーは映画の公式サイトでみてみて。

http://ajussi2011.jp/pc/

映画『探偵はバーにいる』

2011-09-13 16:32:12 | ノンジャンル
この映画のタイトルは実は東直己の「ススキノ便利屋・俺」シリーズの最初のもので、原作は二作目の「バーにかかってきた電話」である。
何でこんなめんどくさいタイトルになったかは監督に聞くしかないが、確かに映像化するのは二作目のほうが良いのかも知れない。

ところで「原作を越える映画にはお目にかかったことがない」というのが僕の持論であるが、この作品も例外ではない。
この辺りのことは東直己氏も充分に承知しており、彼の新作「半端者」の作者後書きでもこう述べている。

“自分は小説と映画は全く別のものだと考えているので、自作の映画化は今回で二回目だが、どちらの場合も、一切口を出さないようにした。映画は、基本的に監督のものであって、原作者のものではない”
と。

したがってこの映画は原作と全く別の作品であると割り切って観るべきものとあいなった。
そもそも「俺」役が大泉洋、高田役が松田龍平と聞いただけで、原作の登場人物といかにかけ離れているか瞬時に理解出来る、というものだ。
ストーリーの原作との乖離はあるものの、舞台設定はまぎれもなく北海道の札幌であり、なかんずく北日本最大の歓楽街ススキノである。

僕なんかはこのススキノをどう描写するのか?だけの興味で観に行ったと言っても過言ではない。
観ていて、「おっ、ロビンソン・デパートの裏、新宿通りだ!あ、ジンギスカン・だるまの看板が見えたぞ。俺が追い詰められた小路は新宿通りからだるまに通じる小路じゃね?お、ススキノ交番ビルの屋上で撮影してるぞ!」なんぞワクワクして見入ってしまった。
ところで、雪の降るススキノ歓楽街を身をすぼめて歩く大泉洋が何ともサマになっているのは彼が準地元民のせいであろうか。
高田役の松田龍平とのコンビぶり、会話のコント的やりとりは十分楽しめる。これは全く別の「探偵物語」になり得るのでは。
初期の「俺」シリーズにはなかなか読みごたえのある作品があり、あと2,3作シリーズで映画化してくれたらまた観に行くぜ♪

映画『日輪の遺産』★ネタバレ注意★

2011-09-02 00:27:57 | ノンジャンル
5年ほど前に浅田次朗著の同名の原作を読んでえらく感動した記憶がある。
その時の感想は↓

http://blog.goo.ne.jp/snapshot8823/e/983fad56b1c874c64b1b1bffb365010d

さて、これが映画化されたということで観に行った。


映画の公式HPはこちら ↓

http://www.nichirin-movie.jp/


ここから完全にネタバレなので、映画を観ていない方は読まないほうが良いかも・・・・


★ネタバレ警報★









原作ではマッカーサーの200兆円ともいわれる金を秘匿した軍人の残した「黒い手帳」に記された内容を巡って、3人の金の亡者たちがしのぎをけずるというスリリングな展開で始まる。
この手帳の信憑性が高まるとともに、この秘密隠蔽作戦に加わった35人の少女達の結末が最大関心事となってくるのだが。
この点を浅田次朗氏は彼流のアサダ・マジックを使って読者を完全に翻弄し、そして感動をもたらしてくれるのであるが、映画ではあろうことかこの少女たちを殺してしまった。ひとりの少女を除いて。

これではまるで「ひめゆりの塔」ではないか!殺してしまってはイカンのだ。そもそも彼女らが自ら死を選択する過程が説明不足ではないのか!?
これで映画の観客の涙を誘おうというのは邪道というものだ。何故原作に沿った脚本を書かなかったのか?この脚本を著者である浅田氏は読んで許可したのであろうか?

同作品の監督(名前は知らん)のインタビューによると、浅田氏の原作通りに作品化すると製作費がかかり過ぎるので内容を変えただと!ああ、それなら映画化なんてするべきではなかったのでは。

唯一救われたのは俳優陣の演技が素晴らしかったことか。主演の堺雅人をはじめ、福士誠治、ユースケ・サンタマリア、中村獅童の演技が光っていた。
特に中村獅童演じる兵隊役は、かって彼がよく演じた頑ななまでの軍国主義者と違い、素朴かつ純朴な兵曹役で好感が持てた。
彼にとってもイメチェンが図れてよかったのでは。
日本人俳優陣とは対照的に米国側俳優陣、とりわけマッカーサーはいただけなかった。
こんなチンケな?マ元帥はかってみたことがない。いくらギャラをけちってもこんな俳優を起用する監督の神経を疑う。
最後にたったひとり生き残った66年後の少女、八千草薫の前に亡霊となって現れた19人の少女と教師のシーンはいかにも“お涙頂戴”を狙ったもので極めて後味の悪い結末となった、と言わざるを得ない。

今年読んだベストは

2008-12-31 13:53:41 | ノンジャンル
大晦日です。
今年も思うような読書は出来なかったのだけど、今年刊行されたもの、そうでないものひっくるめて私的にベストだと思った作品は何だったろ!?

今年★5つ付けた作品は

・ディック・フランシス著『再起』4月

・宇江佐真理著『雷桜』5月

・コーマック・マッカーシー著『ザ・ロード』8月

・ケン・フォレット著『鴉よ闇へ翔べ』9月

・横山秀夫著『クライマーズ・ハイ』10月

・大沢在昌著『黒の狩人上・下』11月

・矢作俊彦著『傷だらけの天使 魔都に天使のハンマーを』12月

であった。

この中で

日本作家のベストは

大沢在昌著『黒の狩人上・下』

外国作家では

コーマック・マッカーシー著『ザ・ロード』8月

であろうか。

全体的に洋物の読書数の割合が少ないので2009年は数を増やしたい。