min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

シャドウ・ダイバー

2005-11-25 08:51:30 | ノンフィクション
題名:「シャドウ・ダイバー」
副題:深海に眠るUボートの謎を解き明かした男たち

ロバート・カーソン著 早川書房 2005.6.30 初版 \2,200+tax


先ずレックダイバーとは深度70mを越えるダイビングを行う特殊なダイバーである。
珊瑚礁や熱帯魚を楽しむファン・ダイビングとは決定的に違う
全米で1000万人以上のスキューバ・ダイバーいるといわれる中、レックダイバーはせいぜい2,300人程度しかいない。
レックダイバーは常に“死”と背中合わせにいる。特に深海での窒素酔いの恐怖は凄まじい。血中に窒素が混入することによって時に幻覚症状をみることがあるという。その場合正常な判断を下すことが出来なくなりとんでもない事故を引き起こす可能性がある。ちょっとしたパニックに陥るともう直ぐ隣には“死”の世界が待っている。
自分はダイビングの経験は無いが筆者の卓越した描写によりレックダイビングの危険な世界が容易に想像でき、まるで彼らの脇に一緒に潜っているような気がするほどだ。

普通「沈船ダイビング」といえば大航海時代に存在した宝船の「トレジャー・ハンター」を想起させるが本編での沈船ダイブの対象はそうした金銀、財宝といった金目のものとはほど遠い、第二次世界大戦で沈没したUボートである。
本編に登場するチャタトンとコーラーはレックダイビング界でもその実力はトップクラスにあるふたりである。彼らは出来得る限りの私財と時間を費やしてUボートの謎を探るダイビングを行うほか米軍の資料室、図書館、関連雑誌などなど陸上での調査を徹底的かつ緻密に連綿と続ける。今や二人はこのUボートの謎解きをすることが生きる目的と化す。
そういう意味ではレックダイビングを通して二人の冒険者たちの壮絶な生き様を綴った物語ともいえ、並みの冒険小説・ミステリーを読むよりも臨場感、真実味にあふれ面白い。

最後に当該Uボートの謎解きを終え、ドイツに残された遺族を訪問して事実を伝えたい、とするコーラーの鎮魂への思いは読者に限りない感銘を与える。人種、時空を超えたふたりの冒険者たちの比類の無い「魂の旅」の物語ともいえる。

ハバナの男たち(上下)

2005-11-16 18:04:09 | 「ワ行」の作家
スティーヴン・ハンター著 扶桑社ミステリー 2004.7.30第1刷 上下共838+tax

ボブ・リー・スワガーの父アール・スワガー・シリーズの第三作目。物語は1950年代初頭のキューバを舞台にしておりアール・スワガーの役回りがアーカンソー出身の議員の護衛という名目のもと実はフィデル・カストロの抹殺にあった。
のっけからちょっと異質なストーリー展開であり、若き日のフィデル・カストロが実名で登場する他ヘミングウェイまで実名で出てくる。ハンターにかかれば両者ともボロクソに書かれており興味深い。
今回アール・スワガーとともに重要な役どころとなるのがスペスネフというロシアの秘密工作員。シベリアの収容所に入れられたものをこの「カストロ暗殺阻止作戦」のために投入されるといった切れ者。彼とアール・スワガーの一騎打ちがどのようになるか?が読者の最大の関心ごとになるのだが、その期待?はある意味裏切られることになる。
ともあれアール・スワガーの自己規律はそのままであり、彼の周りでは彼があずかり知らない謀略が進行する。この分が物語りの進行テンポに水をさすかたちになり多少いらいらさせられるが、最後のアール・スワガーの爆発的活躍が救いか。