min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

ジョッキー

2005-04-25 12:33:01 | 「マ行」の作家
村松剛史著 集英社文庫 2005年1月

日本には多分“競馬小説”なる小説ジャンルなどないと思われる。この小説は一騎手の視点からとらえた優れた「競馬小説」であるとともにそれ以上に爽やかな「青春恋愛小説」である、とも言える。
主人公中島八弥は競馬学校を卒業し美浦トレセンにあるマイナーな厩舎に所属する騎手である。だがこの千葉厩舎は経営難に陥り、窮余の策として有力な馬主兼生産者の大路に援助を仰いだ。その見返り条件は大路の息子を千葉厩舎の専属騎手として配することであった。
中島八弥はそのおかげで千葉厩舎を出るはめになり、フリーランスの騎手として生きざるを得なくなったのだが生来の性格と兄弟子の影響を受けてか自ら騎乗の鞍を得る営業は行わなかった。
したがって日々の食費にも事欠く有様であった。そんな彼にある日思いもかけぬチャンスが巡ってきたのだが・・・。
今や30才を目前とした不遇の騎手八弥は果たしてそのチャンスをものにし一挙に一流ジョッキーへ浮上できるのであろうか?
中央競馬会の様子や彼を取り巻く強烈な個性を持つ馬主やら調教師、厩務員、同僚のジョッキーらが織り成す物語は普段窺い知れぬ世界であるが故に興味深いものがある。

されど修羅ゆく君は

2005-04-20 16:26:44 | 「ア行」の作家
打海文三著 徳間書店1996年

ミステリーサスペンスなのであろうか。題名からみるとほぼ手を出さないであろう作品であるが、かの打海文三の作品ということで読んでみた。
13歳の少女(離婚した家庭に育ちかつ登校拒否児童である)が一時父母と共に過ごした山梨県のとある山間部へ出かける。目的は自殺行であった。元住んでいた場所には往時の家はなくかわりに丸太小屋が建っていた。そこで暮らす男と出会い、そして切った丸太の上に死体らしきものを発見し逃げ出した。物語はこんな出だしから始まる。前半から後半にかけちょっと乗りにくい調子が続くが事件の陰に警察の公安が出てくるあたりから一挙に“謀略”小説の舞台に入るか、と思われる。が、しかし事の本質はもっと“小粒”なことであることが判る。全般的なスケールは小さく、一種の恋愛・痴情小説ともとられかねないが、登場人物がいい。
特に13歳の姫子という少女の大人顔負けの“恋の鞘当て”により周囲のマッチョな元警官、野崎を含め全ての大人達が振り回される図は滑稽で愉快だ。内容がどろどろした謀略と痴情のもつれなど陰湿ではありながら読後感がすがすがしいのは何故?
「ハルビンカフェ」や「裸者と裸者」とは一線を画した作品で興味深かった。

雨の暗殺者

2005-04-12 08:51:18 | 「ナ行」の作家
鳴海章著・光文社kappa novels

「冬の狙撃手」の続編で4年後を描いている。前回のストーリーの大半を忘れ去ってしまった我がカラス頭に先ず当惑してしまった。本編の主人公である警視庁機動捜査隊員・加藤裕子って前回出ていた?ま、出てきたらしい?ということで前作の主人公、公安特殊部隊のスナイパーに恋をしてその主人公は死んでしまった(らしい?)

雨の降る夜、東京都下の小さなスナックで店主、客7名が銃撃を受け全員殺された。同時にある議員宅が銃撃され更に中国系銀行も銃撃された。この3つの事件に関連があるのか。
機捜の裕子と相棒の岸本は不眠不休で事件を追うのであるが、やがてかって恋人が属した公安特殊部隊(さくら銃撃隊)が現れ、この一連の事件の実行部隊である「鉄虎会」のメンバーの“抹殺”を始める。やがて裕子は背後に、公安内部や政財界に生まれた「闇の勢力」の存在を知る。その闇を白日の下に知らしめる為に途方も無い計画を立てるのであった。
この作品において鳴海氏はあたかも大藪春彦ばりに「銃器オタク」となる。拳銃、狙撃銃の詳細な解説に熱がこもる。その筋の方々は充分に満足するかも知れない。

悪党

2005-04-08 18:46:49 | 「ハ行」の作家
ロバート.B.パーカー著『悪党』

このシリーズも本作で24作目となり、いささか飽き始めた感がある。特にこの前の「スターダスト」や「真紅の歓び」にはげんなりし、前作「突然の厄災」ではスーザンの過去(前夫や浮気の相手?)の清算話にもひたすら退屈感を覚えたものだ。
本作は久しぶりに“武闘派”路線に戻った感じで一挙に読み上げた。スペンサーは恐らくシリーズ中最も重大な危機に陥り、九死に一生を得る。この作品では特にスペンサーの“生き様”や“マッチョとしての存在意味”を追求した印象がある。いよいよこの作品も残り少なくなってきたようだ。
最後まで読む?かどうかは成り行きにまかせよう。