min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

桜木紫乃 著『起終点駅(ターミナル)』

2015-09-18 10:35:21 | 「サ行」の作家
桜木紫乃 著『起終点駅(ターミナル)』小学館 2012.4.16 第一刷 1,500円+tax


おススメ度:★★★★☆


「ホテルローヤル」で直木賞を受賞した今話題の北海道出身の女流作家の作品。北海道出身の女流作家といえば、寒いところの出身が多い気がする。
古くは「氷点」の三浦綾子を思い出す人が多いかも。
この桜木さんも少女のころ同じ釧路出身の女流作家、原田康子の「挽歌」を読んで感動しその後大きな影響を受けたという。

さて、本編はこの本の表題となった「起終点駅(ターミナル)をはじめ
「かたちのないもの」
「海鳥の行方」
「スクラップロード」
「たたかいやぶれて咲け」
「潮風の家」
の6編よりなる。どれも力作といえる。表題作「起終点駅」は近々映画化されると言うことで話題となっているようであるが、僕としては「海鳥の行方」
と「たたかいにやぶれて咲け」を評価したい。この2作に登場する新米新聞記者山岸音和がなかなか良い感性を持っている。
また「潮風の家」は今なお後を引く出自の問題はずしりと重い感情を残す。
とまれ、久しぶりに読む文芸作品は翻訳ものの文章とは異なり、やはり日本語の奥深さを感じ取れるものであった。

垣根涼介著『君たちに明日はない5 迷子の王様』

2015-09-09 10:06:23 | 「カ行」の作家
垣根涼介著『君たちに明日はない5 迷子の王様』新潮社 2014.11.14 発行


おススメ度:★★★☆☆


★一部ネタバレあり★




このシリーズが始まったのは2005年であった。上梓された当時は何とも奇妙な商売を描くものだなぁ、と感心した?記憶がある。
しかしこの業界も実際盛業?を迎えた時期があったのかも知れない。だが10年経った今、静かにこのシリーズも幕を閉めるようだ。
目次は
File1:トーキョー・イーストサイド
File2:迷子の王様
File3:さざなみの王国
File4:オン・ザ・ビーチ
以上4編の短編で構成されている。
File1からFile3まではいつもの通りのリストラ勧告をする真介と助手の川田女史が描かれいつも通り進行するのであるが、File4にていきなり物語が転回するのであった。
ある日突然社長の高橋が社の幹部クラスを集め宣言したのであった。私はこの会社をたたむつもりだ、と。
今までの積み上げた利益を入社歴により配分するが、諸君はこの社を去るもよし、残って社業を続けるのも良いだろうと。
考えてみればこの稼業が何時まで続くかは疑問であり、その後同業他社も数社出てきて校合するようになった。しかし、このような業務内容で他社と競り合うような営業もするつもりはない。じり貧に陥る前に手を引こうと考えた、という。
さて、村上真介はどうするつもりであろうか!というのが今回のミソ。
以前にも書いた通り、垣根涼介氏という作家さんは「ワイルドソウル」に代表される作品のように骨太な冒険小説を生み出した作家であり、本編シリーズのような作品は当初亜流ではないかと思ったものであった。
だが、いざ上梓された本編は今までのような長編とは違ういくつもの短編を積み上げた構成になっており、短編は短編なりの手際良さが感じられ、ああ彼はこうした分野でも十分手ごたえのある仕事が出来るのだなと感心した。
が、しかし、やはり以前からのファン心理としては今一度原点に戻り強烈な冒険小説を書いてもらいたい!というのが本音である。


小川一水著『天冥の標3 アウレーリア一統』

2015-09-08 15:39:45 | 「ア行」の作家
小川一水著『天冥の標3 アウレーリア一統』ハヤカワ文庫 2010.7.10

おススメ度:★★★★☆+α


第一作で登場した《酸素いらず》(アンチ・オックス)アウレーリア一統を描いた第三作。本シリーズで登場するキャラクターの中でも特に注目する人々、個人である。
なんたって、宇宙の真空状態に適応するために人体改造を行った一統なのだから。その戦闘艦隊を率いる館長はあのスコットランドのキルトを身にまとった金髪の美少年とくる。前作とタイムラグはかなりあるのだが、登場する館長の風貌は変わらずの美少年。
物語は彼らの祖先が何故、どのように人体改造を遂げたのか、その起源となる物語を語る。そしてこの当時銀河系宇宙を暴れまわる海賊たちを狩るハンターとして縦横無尽の活躍を行うのであった。
この戦いの中核には謎のリアクター、ドロテア・ワットを手にしたと思われる救世群の女指導者グレアがおり、更に医師団の一員セアキがいた。
彼らもまた第二作で登場した人物たちの末裔であることが覗いしれた。更に更にこのドロテア・ワットを残したのは宇宙人であった模様でその不気味な一端が披露される。
実は本編にはちょっとしたどんでん返しがあるのだが、それは読んでのお楽しみとしておこう。
とにかく本三作目は過去の二作とはまた趣を異にし、ある意味アウレーリア一統が織りなす海賊戦艦群との熾烈な戦闘を描く手に汗握る一大スペースオペラを見る思いだ。実に楽しいのだ。
さて物語はまだまだ続くようだがこのあたりでひとまず中休みとし他の作品に手をだそうかなと思う。