min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

上田秀人著『奥右筆秘帳 国禁』

2012-08-14 16:58:24 | 時代小説
上田秀人著『奥右筆秘帳 国禁』講談社文庫 2008.5.15 第1刷 
619円+tax

おススメ度:★★★☆☆

ふと気がつけば当ブログの更新は先月13日以来されていないことに気がついた。僕も人並みにロンドン・オインピックのゲームに見入る日々が続き、かつ連日の猛暑のせいでなかなかじっくり本を読む生活から離れてしまったようだ。

こんな時期に集中して読める本は少なく、なるべく軽めの本ということで本作『奥右筆秘帳 国禁』を選んだのだが、実は僕の友人の勧めであった。
ところで“奥右筆”とは一体何だろうか?そもそも何と読むのか?
“おくゆうひつ”と読み、徳川幕府にかかわる一切の書類の作成と保管を行う部署である。
奥右筆組頭である立花併右衛門とその警護役である柊衛悟のコンビが主人公なのだが、奥右筆組頭は身分こそ低いものの、幕府の秘密を一手に扱うということからその権限は強いものを持っている。
実は本編は同シリーズの2作目であって前作「密封」では、田沼意知刃傷事件が十代将軍家治の世継ぎだった家基暗殺へと繋がり、幕政の闇がどこまでも広がっていく。その闇を主人公の一閃が切り裂いた。時代背景としては継続中の佐伯泰英の「居眠り磐音江戸双紙」シリーズとかぶっており、親しみが湧く。
今回の幕政の闇は、津軽藩の突然の石高の高なおしを要求してきたことに端を発した、津軽藩の背後にいる一橋治済の蠢動と彼に使役される冥府防人と絹の兄弟やその他の陰謀勢力との戦いとなる。
津軽藩のロシアとの密貿易といった、ちょっと現実離れした物語の設定にとまどうものの、全体の流れとしては他に例を見ないテイストを持った時代小説だ。
本編は直ちに第三作「侵蝕」へと物語が続くのであるが、ま、一息ついてから読むことにしよう。