min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

スティーグ・ラーソン著『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士(上・下)』

2010-03-27 13:30:30 | 「ラ行」の作家
 
スティーグ・ラーソン著『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士(上・下)』 早川書房 2009.7.15 初版 1,619円+tax

オススメ度:★★★★★

ミレミアム3は公安警察の陰謀を暴く諜報ミステリーと裁判小説?ともいえる展開となる。
ある連続殺人事件の容疑者となったリスベット・サランダルはマスコミによって“小学生の頃から暴力的で、精神を病んでおり、売春容疑で何度か検挙され、悪魔教を崇拝するレズビアン”の連続殺人鬼と報じられる。
ミレミアム3ではこうした彼女の嫌疑を晴らし名誉を挽回する壮絶な戦いが描かれる。
シリーズを通してのテーマは「虐げられた女性の解放」であることは明白。女性の尊厳を傷つけるあらゆる男たち、機関・組織、国家に対して敢然と立ち向かうミカエルとリスベット、そして彼らの仲間たち。

本編で繰り広げられる公安警察、刑事警察、更にミカエルや彼を支援するセキュリティー会社間のエスピオナージ戦は圧巻だ。

スティーグ・ラーソン著『ミレニアム2 火と戯れる女』

2010-03-27 13:08:00 | 「ラ行」の作家




スティーグ・ラーソン著『ミレニアム2 火と戯れる女(上・下)』 早川書房 2009.4.15 初版 1,619円+tax

オススメ度:★★★★★

冒頭、少女が革紐で小さなベットに縛りつけられ、胸郭はハーネスで押さえられているシーンで始まる。このおどろおどろしさは、まるでサイコ・ホラー小説を想起させる。
果たしてこの少女は何者かによる新たな犠牲者となるのか、はたまたリスベット・サランダルの回想シーンであるのか。
ミレミアム1で登場したリスベットは全くの謎の女性だ、と前回記した。どのような謎を持った女性かと言えば、彼女は次のように描写される。
“頭脳明晰、映像記憶能力を備えた天才ハッカーでありながら、どういうわけか中学校を中退、一人前の成人として生活できないとの烙印を押され、後見人がついている”
こんな彼女の過去に一体何が起こったのか?彼女の言葉を借りると“最悪の出来事”とのみ語られる謎の過去なのである。
ミレミアム2では彼女の“最悪の出来事”が単に過去の出来事ではなく、現在も彼女の前に立ちはだかる最悪、最大の敵であることが徐々に明かされる。
その内容はここで明らかに出来ないのが残念であるが。
本編は彼女の最大の敵との対峙が中心となって描かれ、極めてハードボイルドなタッチで物語が進行する。この結末を知るまでページをめくる手は止まらない、たとえ夜を徹しても・・・
本編のラスト部分で考えられないようなドンデン返しがあり、読者を狼狽させるのであるが、この続きは更なるスエーデンという国の闇の部分へ足を踏み入れていくことになる。


スティーグ・ラーソン著『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女(上・下)』

2010-03-13 15:56:15 | 「ラ行」の作家
スティーグ・ラーソン著『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女(上・下)』 早川書房 2008.12.10 初版 1,619円+tax

オススメ度:★★★★★

2005年にこの本がスエーデン国内で刊行された時、センセーショナルな話題が沸き起こり空前の大ヒット作となった。その後世界中の主要な国々で翻訳され、今や全世界でシリーズ本が2千万部を越えて売れているという。
我が国でも昨年当りから「このミス・・」初めいくつかのメディアの読書欄で第一位となったことはご承知の通り。
なにか一時の「ハリポタ」現象みたいな様相を呈し、ヘソが横を向いている僕なんかは最初のうちは完全に無視してかかった。
その後やはり気にはなっており、札幌時代は市の図書館に予約したものの、半年以上待っても順番が回ってこなかった。
が、つい先日読書仲間からシリーズ全作を借りることができ読み始めた。当初、シドニーシェルダン的安易なエンタメ物かと高をくくっていたのだが、全く別物であった。

ストックホルムにある「ミレニアム」という経済雑誌の編集長を務めるミカエルは友人からの情報提供でスェーデンでも屈指の実業家のひとりであるヴェンネルストレムに関する告発記事を掲載したのだが、友人の情報の裏をしっかり取らなかった事に加えヴェンネルストレム側からのガセネタの策略にひっかかり、名誉毀損という逆提訴の攻撃を受けあえなく裁判で敗れた。
「ミレミアム」からは広告主が相次いで去ってゆき、本人も懲役刑を待つ中、同国の歴史ある大企業であるヴァンケル社の会長から奇妙な調査依頼がミカエルに舞い込んだ。もう40年近くも前の孫娘失踪に関する調査依頼であった。

いわば密室犯罪に例えることも出来るような孤島、ヘーデビー島での謎の失踪事件。調査を進めるうちに照射される一族であるヴァンケル家の隠された闇の部分、そして浮かび上がる連続殺人魔の存在。物語は意外な展開を見せ始める。
この小説は単なる謎解きミステリーではなく、スェーデンの現代史をも語りながら意外と外国人には知られていない闇の部分(性犯罪、経済犯罪)を抉り出していく社会派ミステリーとも言える。

とにかく登場人物の数が尋常ではない。また、見慣れない名前(スェーデン人の名前は我々には馴染がない)に戸惑い読み進めるのにかなり難儀する。

だが、登場人物、とりわけ主人公のひとりミカエルの魅力と途中で運命的な出会いの後ミカエルの命の恩人となる“ドラゴン・タトゥーの女”ことリスベット・サランデルの存在に魅了されてしまう。
この一見少女に見えるリスベットは全く謎の女性で、何と形容してよいのやらほとんどわからない存在なのである。
ミカエルばかりではなく読者である僕も彼女の虜となってしまった。

とにかくアメリカの小説にはみられない読後感というか、この小説世界のテイストは例えるなら初めてA.Jクィネルの作品世界に触れた時の感情に似ているかも知れない。
それはやはり英米とは馴染のない北欧の国と人々の生活様式や行動、考え方がもの珍しいせいなのか?

ボブ・メイヤー著『抹殺』

2010-03-08 22:38:48 | 「マ行」の作家
ボブ・メイヤー著『抹殺』(原題:CUT-OUT) 二見文庫 1996.6.25 初版 690+tax

オススメ度:★★★☆☆


実は前回読んだ「チャイナ・ウォー13」の次に「バイオ・ソルジャー」というのがあって、本作はライリー・シリーズの第三弾ということである。
「バイオ・ソルジャー」が見付からないので飛ばしてしまった。本編で登場するドナ・ジャニーニというシカゴ市警の女性警部補はこの「バイオ・ソルジャー」でライリーと出会い、ライリーの命の恩人となったということだから、本当はこれも読むべきであったろう。
とはいえ、物語の連続性はない模様なので大した問題ではない。

さて、物語の内容は、犯罪組織のボスを裏切り、法廷にてボスの有罪を確定させた不動産業者のコップ。彼は更にボスの金まで着服していたようだ。
妻のリサと共に政府の証言者保護プログラムで身を隠そうとしたのだが、彼らの前に現れたのは謎の暗殺者たち。
コップは殺され、からくも逃れたリサが助けを求めたのは前述のシカゴ市警の女性警部補ジャニーニであった。
事の重大さを察知したジャニーニはライリーの助けが必要と感じて彼に連絡したのであった。
彼らは犯罪組織と謎の暗殺者集団の双方から追われる状況となり、徐々に追い詰められていく。
彼らが最後の決戦場に選んだのはかってライニーがジャニーニを連れてトラッキングしたグレート・スモーキー山系の深い山中であった。ここで生き残りをかけた壮絶な銃撃戦を繰り広げる。
今回は軍のミッションではなく、個人的な事件、それも米国内の事案ではあるが、使用する武器及び戦闘の派手さは国内とは思えない代物。
最後に究極のドンデン返しが待っているのであるが、ちょっとこれは説得力にかけるところがあるか。
ライリーのプロの軍人としての強靭さの中に、シャイで献身的なストイックさが際立つ一遍である。



ボブ・メイヤー著『チャイナ・ウォー13』

2010-03-03 00:00:04 | 「マ行」の作家
ボブ・メイヤー著『チャイナ・ウォー13』(原題:DRAGON SIM-13) 二見文庫 2003.9.25 第七刷 829+tax

オススメ度:★★★★☆

本書の裏表紙の紹介文から

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古参の軍曹ライリーが所属する米陸軍特殊部隊のチーム3に蜜命が下った。
中国の石油パイプラインを壊滅せよ!
交戦中ではない国を攻撃することに疑念を覚えつつも、ライリーたち12名は中国の山中に決死の潜入を図る。自分たちが恐るべき策謀に利用されているとは、知る由もなかった。
襲いくる中国軍を相手に孤立無援の戦いを強いられるチーム3の運命は?
白熱の軍事アクション!
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これを読むといかにも荒唐無稽で、あり得ないストーリーと思えるのであるが、ここは著者が合衆国陸軍士官学校出身で、自らもかって特殊部隊に所属し、退役後はジョン・F・ケネディ特殊戦学校及びフォート・ブラッグ基地学校で教鞭をとっている生粋の軍人であることから、軍事作戦の策定や武器・兵器に関するディテールは圧倒的な説得力を持つ。
また、本作品の時代背景が中国の天安門事件にからむ時期に重なっており、本書でも登場するような「軍事シミュレーション」は当時はさかんに行われていたであろうことは疑問の余地がない。
著者は、本来「軍事シミュレーション」であるはずのものを、極めて巧みに現実の「作戦行動」にまで持ってゆく仕掛けをこしらえる。それには上述の著者ならでは持つ軍事知識によるものであろう。

本書における戦闘場面は圧巻である。またチーム3における団結力、戦友同士の絆は読者の涙腺を緩めることになろう。
本書は期待以上の出来栄えになっており、軍事オタク以外の読者をも大いに楽しませること請け合いの作品。