min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

星川 淳著『タマサイ 魂彩』

2014-12-24 10:45:10 | 「ハ行」の作家
星川 淳著『タマサイ 魂彩』南方新社 2013.11.11第1刷 1,800円+税

おススメ度:★★★★☆

1545年3月、種子島のリュウタは訳あってひとり琉球へ向かって船を出した。だが途中酷い嵐にあって船は流されどこを漂っているかも分からなかった。更に飢餓のため生死の境をさまよっていた。
その時薄れゆく意識の底に耳慣れぬ掛け声のような音を聞いた気がした。気付いた時には女の膝枕。たどたどしいが和人の言葉をかけられた。女は松前藩にいたアイヌのチマキナであった。
船は双胴船のカヌーでかこ達(漕ぎ手)は顔や体じゅうに入れ墨を施した異形の民であった。着いた先はなんとカナダの東岸であった。

2013年、ユキは親友のアメリカ人考古学者パメラの招きでカナダのクィーンシャーロット島に向かった。そこでパメラが示した物は男女と思われる白骨2対であった。白骨体はカヌーらしき中にあったと思われる。その木質と思われる部分を後日炭素年代測定法で調べたら約7,000年前のものと測定された。

1,500年代のカナダに向かったアイヌのチマキナの胸と現代のユキの胸には全く同じようなターコイズ(トルコ石)がかかっていた。実はチマキナには姉がおり彼女も同じターコイズを持っていた。
物語は時空を超え、数千キロの距離も厭わず二つのターコイズが惹かれあうように会うべき二人を結びつける。

著者いわく誰かがこの物語はSF(ソウル・フィクション)ですねと言ったそうであるが、確かにその類の物語である。
著者は15年前にモンゴロイドたちが氷河期のベーリング海を渡って北米大陸に移動したことを描いた「ベーリンジアの記憶」を上梓した。
だがその後南北アメリカの先住民を調査するにつれ、モンゴロイドの拡散は陸路だけではなく海路にこそあったのだという確信に到った。
物語は上述の二つの異なった年代の主人公たちがやがて7,000年前の男女の物語に収斂されていく様をファンタジックに描いたものである。
しかし、別の見方をすると各章の初めに著者の調査資料や見解が載せられており、それらはある意味著者の調査のフィールドノート的存在となっている。
環太平洋をめぐる壮大な人類の移動、いわゆる“グレート・ジャーニー”に興味ある方は大いに楽しめるはずだ。

さて、本書にも述べられている幾つかの証拠事例に私自身の意見も含め、モンゴロイドの一員である日本人の祖先たちの旅について記したい。

1.3.11の東日本大地震で500万トンにも及ぶ東北沿岸部から流出した建物や船の残骸が、その内150万トンほどがアラスカ、カナダ及び米国の西海岸に漂着し我が国はその補償を余儀なくされた。このことは明確に日本から北米大陸に向かって強い海流があることを証明している。

2.アイヌ民族は松前藩によって禁止される以前は自ら刳り舟を操り、カムチャック半島は勿論、対岸のロシアまで航海し、アムール河上流域まで進出し交易を盛んに行っていた
海洋民であった。
縄文時代は紀元前15,000 年から2,000年まであったと言われるが、彼らはこんな長期に渡って原始人のような狩猟採取の生活を続けたのか?否!近年の三内丸山遺跡の発掘で明らかになったように大規模な集落を持ち畑作なども行っていた。
そして、明らかに彼らは船出した。
何故バヌアツ共和国のエファテ島に5,000年前の縄文土器があるのか。何故南米エクアドルから縄文土器が出て来たのか?

3.3,500年前のインディオのミイラからズビニこう虫の卵が発見された。この虫は寒さに弱くもしもこのインディオの祖先がベーリング陸橋を渡ってやって来たとしたら、この虫が生き残る可能性はない。

その他まだまだあるのだが、我々は学校の教科書では決して習わなかった事項・事例がたくさん出てきている。今後もっと多角的に、統合的に調査を行ってもらいたいものだ。

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