全然ダメだった「火口のふたり」の口直しに、「帰れない二人」を続けて見ました。
「ふたり」シリーズか。笑
大好きなジャ・ジャンクー監督で全然悪くはないんだけど、これはいまひとつ乗れなかった。
「Cold War」と同じで二人だけの世界だけを描く閉じた感じの映画が、
どんなに深くうまく描かれていても、どうももう個人的に興味が薄くなってしまったのだなぁ。
この監督の「罪の手ざわり」唸ったし「「山河ノスタルジア」も映像最高だったし
何より最初に宝塚映画祭事務局で見た「世界」の素晴らしさが忘れられないんだけど
それ以上を求めてしまったから、すこし物足りないのかなぁ。。。
今回、前の映画のブログを見てて「山河ノスタルジア」と似すぎているとも思った。
描き方は少し違うんですよ、今回の方がシンプル。主役二人の関係に的を絞ってある。
でも若い時の生き生きしたヒロインが辛い境遇になって、
また逞しく立ち直っていくのは全く同じだなぁ、と既視感が。
音楽の使い方なんかも似てるんですよねぇ・・・
任侠の世界(字幕では「渡世」という言葉が使われてました)の美学みたいなのも、
あまりこだわると映画の世界が小さくなるようにも思ったし。
スケールの大きな作品を取れる監督だから、もっと大きなものを撮って欲しいなぁと思う。
やくざの恋人を救うため発砲して捕まった女。
男をかばって自分の方が重い罪になったが、男は出所後にも面会に来ない。
出所した女は男を探そうとするけど、男には別の恋人と仕事があって女から逃げ隠れする。
やっと捕まえて話をするものの、なじりながらも結局は男を自由にしてやる気丈な女。
ところがその後、生活を立て直した女のところに男がやってきて・・・という話。
ストーリーはいつものように、メロドラマ的ですが映画自体は全然メロドラマっぽくなくて
良い作品です。
途中で、ある男と知り合い、その男が女に心を開いたときに
一緒に行けば普通のささやかな幸せがあるかもしれないのに
そっと汽車を降りる女の、自分はカタギでは生きられないみたいなところは
よくあるヤクザ映画みたいなのに、やっぱりそうは見えず
なんとも切ないシーンで、本当にこの監督はそういうのが上手いな。
しかしまあいつも、男はダメだな、という感想は同じですね。笑
ただ、
人間の値打ちって、付き合ってる友達や恋人で上がるということは実際にはないはずだけど
この男は、いい女に惚れられたおかげで、ただのつまらない負け犬のような男にも
何か値打ちがついたように見えるなとは思った。
外向きに箔がつくのではなく、彼という人間の内側に何か意味があるように。
この女だって世間的にすごいいい女というわけではないだろうけど、
心持ちのきれいでまっすぐな強い女だから、それに愛されることで
この裏切り者の調子のいいクズ男の中にもひとかけらのきれいなものを、
映画を見ている人に感じさせることができるのだろう。
誰かに真剣にどこまでも愛されるのは、愛される人の値打ちもあげるな。ダメ男でも。
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