sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

映画:オール・ダート・ロード・テイスト・オブ・ソルト

2024-01-20 | 映画


「オール・ダート・ロード・テイスト・オブ・ソルト(all dirt roads taste of salt)」って、
何かわかりやすい邦題つけてあげて欲しいけど、これは「A24の知られざる映画たち」という特集の一本。
A24という映画の制作や配給をしているスタジオの会社が、
日本で一般上映はされてない佳作を集めて上映する特集の中の1本なんです。
だからほぼここだけの上映で、1本1本にちゃんとした広告や予告編を作る予算も付けてなくて、
いうなれば並行輸入の品物を、日本でのパッケージをかぶせずにそのまま並べて売ってる感じ。
A24の映画といってなんのことかわかる人、あるいはそもそもA24の映画が好きな人以外には
全然見てもらおうという気のないそのままのタイトルです。

→「ムーンライト」のバリー・ジェンキンスがプロデューサーで、監督は詩人で写真家のレイブン・ジャクソン、
と聞いて感じた通りの映画だった。とにかく、97分の尺が150分くらいに感じるすごいゆっくりさです。
先日見た大概ゆっくりした映画「ファーストカウ」よりはるかにゆっくり。笑
ものすごーくゆっくり長回しだらけなのに、説明的なシーンは全くなくて、
どんなに長回しでじっくり映しても物語は全く進まないし、セリフも極端に少なく
途中で時系列は前後するし、うっすらとした物語すらも掴みにくい映画で、
まさにこれは映像詩というものだと思う。
そういうことを考え考え見てたら、あああれだ!色調も詩情のタイプも違うけど、
これは→テレンス・マリックだ!と途中で気づいた。起承転結も因果応報もない。
フィルム撮影のようで雨や水のシーンのしっとり湿度の高い密度の濃い情緒が美しい映像詩。
でもテレンス・マリックのようなスタイリッシュさやスノッブさはなく、もっとプリミティブな感性。
水の中の泥を掬っては流すシーンを始め、水がすごく印象的に撮られています。
きらきらと、ねっとりと、ぬるりと、あるいはさらりとした水の表現。

サイトには「ミシシッピで暮らすある女性の生涯を美しい映像で描き切った感動的な大河ドラマ」
書かれてるけど「ミシシッピ」と「美しい映像」以外は大嘘です。
生涯でも大河でもドラマでもなく、ある女性の人生のいくつかのシーンを超丁寧に超ゆっくりたっぷりと
美しく見せる映像詩、と言えばいいかな。

主人公のマッケンジーという少女が父親と釣りをするシーンで始まりますが、
これが何かの伏線になっているということも、何かの物語に続くということもなく
ただただ少女の手元を延々見せる。
母親が?娘を産むシーン、マッケンジーが娘を産むシーン、それらは前後して現れるので混乱するけど
まあどっちでもいいのかも。ただ飽きるほどゆっくり流れる美しい映像に身を任せたらいいのだろう。

手持ちで揺れるカメラのシーンと、被写体にすごく近づいて顔や足をトリミングしたような画面が多くて
想像の余地が多いというか、ほぼ全部が想像の余地、という映画ですね。

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