教育史研究と邦楽作曲の生活

一人の教育学者(日本教育史専門)が日々の動向と思索をつづる、個人的 な表現の場

授業についての悩み

2012年11月18日 23時09分31秒 | 教育研究メモ

 最近寒くなりましたね。風邪引いていませんか?

 さて、夏ごろ、準備にいそしんでいた新規科目の「教育原理Ⅱ」。幼児教育の歴史と思想をテーマとする2年生の選択科目です。計100時間以上かけて作り上げてきた(まだ完成してないけど…)科目。しかし、実際のところ、うまくいっておりません。
 テーマに沿ってはよく内容をまとめている自信はありますが、何より学生とのマッチングがうまくいっていない様子。3分の1くらいの学生は必死でがんばって食らいついてきているようなのですが、残りの3分の2の学生の様子が…。かなり内容が難しいので、本来はしっかり学生にそのことを考えさせて履修させるべきでした。しかし、履修者数を少しでも増やしたいという欲が出てきてしまって、アピールの仕方をミスったかもしれません…
 これまで、他の科目以上に準備に時間をかけたり、説明を工夫したりしてきました。先週は、学生の理解を助けようと特別な教材を作ってみたものの、うまくいきませんでした。そのため、先週末は意気消沈状態。

 とはいえ、当初の科目設定の想いである、保育者に幼児教育の歴史・理念の知識と、過去から教育を考える姿勢とを身につけて欲しいという想いには変わりはありません。
 歴史なき実践や制度はいかに。
 理念なき実践や制度はいかに。
 1年や2年で保育職をやめるなら、歴史や理念、過去から教育を考える姿勢など必要ないかもしれません。しかし、保育者の専門性は1年や2年で確立するものではありません。保育者が専門性を高めるには、先輩(故人も含むと私は思います)から考え方や技術を学ぶ必要があります。また、長く務めれば、部下を率いて教育を経営していく必要もあります。そのとき、歴史や理念を知らず、過去から発想することもなしに、自分の思いつきだけで人がついていくでしょうか。人は、過去の生き方や経験から生じる様々なしがらみやこだわりの中で生きています。そのしがらみやこだわりを一つ一つ解きほぐし、よりよい方向へ導くことこそ上に立つ者の仕事です。過去から教育を考えていく姿勢は、保育者を長く務める上で不可欠だと思います。
 歴史は理解し、乗り越えるべきものであり、無視するものではありません。同じ変革にしても、過去の実績や先人の努力を無視して変えることと、それらを知った上で継承すべきことと変えるべきことを判断して変えることとでは、まったく意味が違います。歴史を乗り越えるには、必ず歴史を知らねばなりません。
 もちろん、複雑な因果関係にある歴史を知ることは容易ではありませんので、指導者・支援者が必要です。その指導・支援ができればと思い、幸いにもその機会を与えていただけたため、私はこの科目を手に、学生たちの前に立ちました。せめて、保育者集団の将来を担う若い保育者の卵たち(または保育者への理解者・協力者の卵たち)には、幼児教育の歴史と理念とを知ろうとする姿勢とそれらを知るための基盤を形成してもらいたい。山陰最大の定員数を有する所属養成校の教員として、保育者養成の実践者として、この仕事は重要な仕事だと思っています。私は教育史を専攻する教育学者のはしくれですから、この養成校で仕事をする限りは、私にしかできないこの役割を果たしたいと思っています。

 第1回目にそんな感じの話をしました。学生はこれを聞いた上で履修したわけですし、目を輝かせていた学生も中にはいましたので、たぶん、私の想いはそれなりに伝わっているのだと思います(そう思いたい)。授業づくりにおける改善はこれまでもしてきたし、これからもしていくつもりです。
 では、その上で何をすべきか。そのために今考えているのは、予習(復習)教材の提供です(先週配ったのは授業中に使う教材)。学生を見ていて、この科目に関する事前知識がほとんどないことが問題の根幹にあるなと感じています(事前知識になるはずの学習は、1年次にやってるはずなのですがね)。そこのところに対応し、わかりたいと思っている学生がよりわかるように支援するとともに、小レポートとも連動させて、わかろうとする学生を少しでも増やしたいと思います。学生を見る限り、単位が欲しいだけの学生も少なくないような気がしていますが、そんな学生でも腹をくくってやる気になるようにもっていきたいですね。改善授業の15回終わった後、もしかすると授業に対する満足度はあまり芳しくないかもしれませんが、少しでも「自分は勉強がんばった」と思える学生が増えるようしたいです。
 教師とは、「学生をやる気にさせる」存在でもあります。経験上、口頭での叱咤激励だけでは学生はやる気にならないことはわかっています。学生たちをやる気にさせるしかけ(知的な意味での)について、まだまだ考え、工夫し、実践してみるべきことは残されているようです。

 あ、改善を続けてきた他の既存科目は、今まで以上にうまくいっている気がします。

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