教育史研究と邦楽作曲の生活

一人の教育学者(日本教育史専門)が日々の動向と思索をつづる、個人的 な表現の場

学校教育改革・教師の働き方改革の第一歩―学校ボランティア・支援員募集とコミュニティスクール制度

2022年02月13日 22時26分00秒 | 教育研究メモ
 私が思うに、働き方改革・学校改革でまず進めるべきは、学校ボランティア・支援員の募集と、コミュニティスクール制度の開始だと思います。これが始まってしまえば、「教師がしなくてもいい仕事」を特定することが本格的に可能になります。教師がやらないならやめるのか、やめてはいけないのではないか、じゃあ誰がするのか、という堂々めぐりの議論の突破口となる選択肢が増えるようになるからです。
 学校の業務見直しや、支援スタッフの配置などについては、中央教育審議会「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)」(平成31年1月25日、51~54頁)や、文部科学事務次官「学校における働き方改革に関する取組の徹底について(通知)」(平成31年3月18日、6~7頁)に示してある通りです。すでに実践事例集(ページ中頃10)が複数年度作成されています。実行の時はすでに始まっています。
 ボランティア・支援員募集のやり方事例は、文科のまとめた事例集にも見られます。令和2年度版の「全国の学校における働き方改革事例集」では、大学・ハローワーク・シルバー人材センター・学習塾との連携が紹介されていますね(同115~117頁)。横浜市の職員室業務アシスタントの事例(平成27年度開始)もわかりやすいですね(令和元年度事例集PDF44枚目)。コミュニティスクール制度を基盤にした学校ボランティアの募集については、大阪府守口市立さつき学園の「さつきフレンド」の事例がとてもわかりやすかったのでおすすめです(文部科学省「地域とともにある学校づくり推進フォーラム2021(愛知)」の動画参照)。
 コミュニティスクール制度は即効性は感じられにくいけれど、うまく続けていけばだんだん効果が実感できるようになってくるようです。コミュニティスクールは学校運営協議会制度による学校のことですが、コミュニティスクール実施率全国一位の山口県では、学校運営協議会の効果に対する実感は、開始2年目に下がるが徐々に上がって、開始8・9年目に最高値に達した、という研究成果が出ています(長友義彦ほか「コミュニティ・スクールの効果と課題 : 教諭を対象とした調査から」『教育実践総合センター研究紀要』46、山口大学教育学部附属教育実践総合センター、2018年、127-136頁)。コミュニティスクール制度の有効性は、何と言っても、学校改革に取れる手だてが増えるところにある、と私は思います。

 これらを進め始めれば、停滞する学校教育改革・教師の働き方改革に一石を投じることができると考えます。たくさんの先行事例がありますから、思いつきではありません。
 この手だては、まずもって行政と管理職、地域住民の役割が重要になります。学校や子どもたちを救うには、教師だけでなく、みなさんの力が必要です。
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3 コメント

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意見です。 (作って遊ぼう)
2022-02-15 11:43:39
 浅野と申します。お話聞かせてもらいました。地域からの学校支援に関わっているものとしてお話をさせてください。
〔自己紹介〕
 熊本県の公立中学校に理科教師・教頭・校長として34年勤めて行政経験は4年指導主事と3年教育事務所指導課長として2回です。ちょうど10年前に退職をしました。その後県統括コーディネーターとしてコロナの始まったところまで非常勤職員でした。県統括コーディネーターの仕事は県に5人いて管轄する市町村教育委員会の地域の学校支援の組織づくりを手伝う役割です。個人的には最寄りの小学校を中心に県下各地で《作って遊ぼう教室》をクラブ活動や支援学校の授業、放課後子ども教室、幼稚園、不登校生の適応指導教室の講師としてボランティアに励んでいます。
 今はコロナのために休止中ですが、ホームページやブログの発信に努めています。
「社会に開かれた学校の応援」で検索してもらうと観ることができます。
〔意見〕
 県統括コーディネーターの役割は地域学校協働本部の構築や地域学校協働活動支援員(地域コーディネーター)の設置を推進する仕事です。県教育委員会の社会教育課が所属なので、学校や教育委員会に出向いて話を聞いてもらえるように私たち校長や行政経験者をその任に当てたのだと思います。
 まさしくあなたのブログに書かれているような地域や学校の仕組みを作っていくことです。具体的な活動は「社会に開かれた学校の応援」のホームページを見てもらうとわかります。
 実は重点の置き方が少し違っています。コミュニティ・スクールは地域の学校として地域の皆さん数人が代表として学校経営に権限と責任を背負って学校経営に参加します。学校の中の仕組みとして作ります。コミュニティ・スクールは委員になった方が意見を言うだけではうまくいきません。「○○をしよう!」となったとき学校任せにするのでなく地域の皆さんと一緒になって取り組む必要があります。それが地域の皆さんが学校を支援する仕組み〔地域学校協働本部〕です。学校が「こんな人にきてほしい。」というとそれだけで地域人材が派遣されてきます。そのためには地域の皆さんに〔育てたい子どもの姿〕を理解してもらって「学校へ行こう」という意思を持ってもらう必要があります。それも私の役割でした。直接は難しいですから行政や学校管理職、地域の有識者にその任を担ってもらうようにします。現在、ほとんどの小中学校のある地域に地域学校協働本部を作ることができました。まだ100%ではありません。
〔課題〕
 コミュニティ・スクールの知名度が大きくて地域学校協働本部の存在価値がよく理解されていません。コミュニティ・スクールをつくれば地域学校協働本部が付いてくるような理解が蔓延しています。教育に精通した人であっても私の話を聞いても「頭をかしげる」人も多いです。コミュニティ・スクールに地域コーディネーターだけがあるのが以前(平成10年代)の仕組みでしたが、地域参加が活発になるにしたがって、地域コーディネーターが心身を病んでいくことが多くなりました。そこで〔学校応援団〕が自然とできてきて、平成18年度から文部科学省から〔学校支援地域本部〕〔地域学校協働本部〕と名前を変えながら充実した仕組みが提案されています。
 本県の課題は学校教育課でコミュニティ・スクール、社会教育課で地域学校協働本部を勧めています。両課で協力しようという動きはありますが、垣根は高くて厚いです。県統括コーディネーターとしてコミュニティ・スクールや教育課程について避けて通れず話していますが、「そこは話してはいけません。」という制約をたびたび受けるようになって話せなくなってしまいました。

 たくさん書きましたが如何だったでしょうか。参考にしていただけたら幸いです。 
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Unknown (作って遊ぼう)
2022-02-15 15:01:23
 先ほど働き方改革について記述しませんでしたので書かせてくだだい。
 中学校でしたから空き時間があって授業の計画や準備、予備実験をする時間は確保できました。歳を重ねるにしたがって引き出しもドンドン増えてきます。ゆとりはありました。勤務時間中に生徒はいつもいますので対応するのが自分の務めと思っていました。いま小学校に主に出向いていますが児童が早く帰るのでそれからが教師の自分の時間のようです。残っている児童は私たち地域人材が面倒を見ています。
 私の私見としては午前中は子どもたちは学校で勉強して給食を食べ、午後からは地域で地域の人々と一緒に自分の志向にしたがって多彩な活動をするような仕組みにしてはどうかと思います。ホームページの中に30年後の日本の教育システムについて記述したところがありますのでみていただいたら幸いです。
 学校は午後は児童生徒がいません。そこで自己研鑽する時間や教育活動の充実のための準備をする時間とすればいいと考えています。午後の時間の対応としては児童生徒を引き受けるのは私たちリタイアした高齢者の役割ではないでしょうか。文化センターやスポーツセンター、ボランティアセンター、公民館、〇〇協会、△△部 ーーー などにサークルのようなものを作って一緒に活動すればいかがでしょうか。
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たくさん情報提供ありがとうございました (白石崇人)
2022-02-15 18:33:00
 浅野様、はじめまして。ブログ執筆者の広島文教大の白石崇人と申します。
 平成27年以前の中教審答申・平成29年の地教行法改正以前からの活動を踏まえた、貴重なご意見ありがとうございました。私の先の意見は、コミュニティ・スクールと地域学校協働本部とを混同していると思われても仕方ない意見だったと気づかせていただきました。確かに、コミュニティ・スクール制度ができても、地域学校協働本部が当たり前にあると思っていてはいけませんね。私の場合は、コミュニティ・スクール制度によってまず学校の当事者を増やすことが先決と思っていました。しかし、地域学校協働本部の機能あってはじめて学校支援は可能になる、というご意見、ごもっともだと思いました。
 まず設置からという地域もあるでしょうし、本部に類する組織があってもいろいろな事情で不十分な活動しかできないおそれもあります。地域学校協働本部でなくても、PTAや学校後援会、おやじの会などがしっかり機能していればいいか、と思ってしまい、突き詰めて考えることができていませんでした。勉強させていただきました。
 現在の学校支援の地域組織は課題山積のようですが、地域学校協働本部が地域の学校支援を志す人々が集まれる場をつくるきっかけになればいいなと思います。コーディネーターの方々のご苦労、推察いたします。また、地域学校協働本部を前提で考えれば、社会教育行政がかかわれるようになるので、大事な視点だなと思いました。生涯学習・社会教育の立場からも、学校支援がもっと重要な問題になっていくといいと思っています。その点、教育行政内部の学校教育・社会教育行政の縦割り状態が思わぬ障害になっているとのご指摘、極めて大事な情報提供でした。
 また、続いて働き方改革についてもコメントいただきました。中学・高校については部活動の問題があって話がややこしくなっていますが、全体としては、まったくおっしゃる通りだと私も思います。この形をつくっていくためにも、地域学校協働本部と、その活動を学校運営と接続するための学校運営協議会が必要だと改めて思いました。私がいま問題だなと思っているのは、学教法施行規則・指導要領の標準総時間数ですね(既習事項ではなく)。これをクリアでき、子どもにとっても教師にとってもいい案を考えなければならないと思っています。
 いろいろ教えてくださってありがとうございます。今後の考察の参考にさせていただきます。
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