教育史研究と邦楽作曲の生活

一人の教育学者(日本教育史専門)が日々の動向と思索をつづる、個人的 な表現の場

新旧教育基本法の文面比較(最終)

2007年03月26日 18時38分54秒 | 教育研究メモ
 今日は早起き。明日も早起きできればいいな。
 朝から登校して、科研費や学振の報告書をつくる。また、資料提供をしてくださった方々にお礼状を書くため、資料を印刷しました。これが意外に時間をくってしまい、昼飯を食べたのは午後3時に(笑)。
 午後から、再審査論文の見直し。うーん、英文校正が返ってくるまで先に進めない(^^;)。予定より若干時間が余ったので、久しぶりに教育基本法のお勉強。つーか、もういい加減終わらせるべきなので、残り一気にやってしまいました。まぁ、ここまで引っ張るような内容じゃないんですがね(^^;)。

 旧教育基本法と現行教育基本法の単なる文面比較なので、以下は「お勉強」です。第13条以前の比較は、このブログのどこかにあります(笑、昨年12月から始めました)。昨年施行された教育基本法を新教育基本法とし、旧教育基本法の諸条文と比較しながら、文面上、どこが変わったのかを明らかにしています。基本的には、文面上の変化のみを淡々と挙げるにとどめ、その変化の意味するところや評価は行っていません。それは、私がそれを行うには、私には未だ知識・見識・経験・能力などが不足していると考えるからです。教育基本法改定の歴史的・社会的意味や価値観的評価については、世間に出回っている提言や書誌を参考にしてください。

 【第14条】
○旧教育基本法第8条(政治教育)
 1 良識ある公民たるに必要な政治的教養は、教育上これを尊重しなければならない。
 2 法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。
○新教育基本法第14条(政治教育)
 良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない。
 2 法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。

 旧法第8条の1の文面では、「良識ある公民たるに必要な政治的教養」が「これ」(政治的教養)を「尊重しなければならない」と読むことができる。新法では、「良識ある公民たるに必要な政治的教養」を「尊重されなければならない」と修正している。新法の表記では尊重する主体が不明瞭であるが、「教育上」において尊重するのであるから、教育に関わるすべての者・機関が尊重するという意味であろう。
 旧法第8条の2では、法律に定める学校において、特定の政党の支持・反対のための教育と政治的活動を禁止することが定めされていた。これは、新法第14条の2にそのまま維持されている。

 【第15条】
○旧教育基本法第9条(宗教教育)
 1 宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない。
 2 国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教活動をしてはならない。
○新教育基本法第15条(宗教教育)
 宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならない。
 2 国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。

 旧法第9条の1と新法第15条の文面における主客体の不明については、先述の政治教育におけるものと同じ。
 旧法第9条の1では、教育上において尊重されるものとして「宗教に関する寛容の態度」と「社会生活における宗教の地位」が挙げられた。新法第15条では、これらに加えて「宗教に関する一般的な教養」が挙げられた。また、旧法第9条の2では、国立・公立学校における特定の宗教のための教育・活動を禁じることが定められていた。これについては、新法第15条の2でも維持されている。

 【第16条】
○旧教育基本法第10条(教育行政)
 1 教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。
 2 教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。
○新教育基本法第3章第16条(教育行政)
 教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。
 2 国は、全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、教育に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない。
 3 地方公共団体は、その地域における教育の振興を図るため、その実情に応じた教育に関する施策を策定し、実施しなければならない。
 4 国及び地方公共団体は、教育が円滑かつ継続的に実施されるよう、必要な財政上の措置を講じなければならない。

 新法16条では、教育行政が規定されたが、旧法第10条に比べて大幅に増訂されている。教育行政が基づくべき自覚は、旧法では、「教育は不当な支配に服さないこと」と「教育は国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきもの」という自覚であった。新法では、これらの自覚のうち、後者の、教育は国民全体に対し直接責任を負うとする自覚が、教育基本法および他の法律に従って行うとする自覚へと変更されている。
 新法第16条の2~4については、旧法になかった規定である。基本的には、第15条までに述べられてきた国・地方公共団体の教育に関する役割が定められている。内容は条文参照のこと。

 【第17条】
○旧教育基本法
 (該当条項なし)
○新教育基本法第17条(教育振興基本計画)
 政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定め、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。
 2 地方公共団体は、前項の計画を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定めるよう努めなければならない。

 新法第17条では、政府・地方公共団体による教育施策の計画立案が定められている。つまり、基本的な教育施策を計画立案する主体は、文部科学省でなく政府であり、地方公共団体であるとする規定である。政府は、国会への教育振興基本計画の報告、および一般への公表を義務づけられた。ただし、国会における教育振興基本計画の立案・審議などは定められていない。また、地方公共団体の立案した教育振興基本計画は、府県議会などへの報告や一般への公開を義務づけられていない。

 【第18条】
○旧教育基本法第11条(補則)
 この法律に掲げる諸条項を実施するために必要がある場合には、適当な法令が制定されなければならない。
○新教育基本法第4章第18条
 この法律に規定する諸条項を実施するため、必要な法令が制定されなければならない。

 新法第4章は、「法令の制定」について定めている。教育基本法の定める諸条項を実施するため、各種の法令を定める必要があることが定められている。
コメント (1)
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