医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

便潜血を考える

2005年09月10日 | 消化器
「降水確率」という言葉(アメリカではchance of rainといわれています)は今では誰にでも受け入れられています。この表示が始まった当時「降水確率50%」といわれても、雨が降るとも降らないともとれる表現に誰もが戸惑ったものでした。私は「ほとんど大丈夫」などという表現を使わないように努めています。そこにはどれくらい大丈夫かの情報が含まれていないからです。考えてみれば「曇り一時雨」というのは非常にあいまいな表現で、雨がどれくらいの確率で降るのかピンときませんね。

さて、秋の健康診断の季節です。皆さんは便潜血という言葉をご存じですか。便潜血とは便の中に血液が潜在していたという事で、肉眼的にみえない便中の血液反応(ヘモグロビン)を調べることにより消化管出血(腸からの出血)を診断する検査方法です。特に免疫学的便潜血検査では胃や十二指腸からの変成したヘモグロビンは検出しないので、大腸癌の有無を調べるために用いられています。これはほとんどの健康診断で検査項目に含まれています。大腸癌が存在するのにたまたま出血していなかった日がある可能性もあるので、通常は2日間にわたり2回調べられます。二日法は一日法より大腸癌の検出率が1.3倍高いのです。

便潜血が陽性の場合どれくらいの確率で大腸癌が存在するのでしょうか。1,000人の便潜血を調べると陽性の人はその中の60~70人、さらにその中で実際に大腸癌である人は1~2人にすぎません。この検査は大腸癌がありながらそれを見逃してしまう事をできるだけ避けるよう採用されています。従って便潜血が陽性の場合でも大腸癌でない確率の方がずっと高いのです。大腸癌でなくても潜血が陽性になってしまうのは、痔からの出血があったり、大腸憩室といって大腸の壁が外側に突出し嚢状になった部位から出血があったりしても陽性になるからです。

さて、便潜血が陽性といわれて注腸検査(おしりからバリウムを浣腸してX線写真を撮る検査)の日まで不安な毎日を過ごしている皆さん、こんなことなら医者は「ほとんど大丈夫」というよりも、「1,000人の便潜血を調べると陽性の人はその中の60~70人、さらにその中で実際に大腸癌である人は1~2人にすぎない」と言ってほしいですよね。私は必ずこう言うようにしています。

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1 コメント

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Unknown (らら)
2013-03-07 22:02:53
先生のコメントをよみ、救われました。
陽性がでて、内視鏡まで不安な日々をすごしています。

眠れないくらい不安ですが、安心しました。
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