医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

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バイパス治療はうつ病を増やすが認知症は増やさない

2011年09月06日 | 神経
前回、心臓の血管3本ともに狭窄がありSYNTAXスコアーという重症度を評価するスコアーが33以上の重症の場合は、ステント治療は心臓バイパス手術と比較して3年間の死亡・心筋梗塞・脳梗塞が多いことをお伝えしました。

今回は、治療後うつ病認知症はどうかという研究です。
Dementia and Depression with Ischemic Heart Disease: A Population-Based Longitudinal Study Comparing Interventional Approaches to Medical Management.
PLoS One. 2011 ;6:e17457
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

今年発表されたばかりの比較的調査人数の多い研究です。

カナダにおいて1998年から2003年の間に動脈硬化性心臓疾患であった37,186人を調査した結果、薬物治療だけを受けていた人35,237人、ステント治療を受けた人711人、バイパス手術を受けた人1,238人が2006年まで調査されました。

調査する途中で何らかの理由で調査が継続できなきなった人を除くと、最終的に調査できたのはそれぞれ34,508人、629人、1,124人で、治療後の認知症、うつ病の発症率が調べられました。

結果は上の図のように、薬物治療のみ(IHD Medical)に比べてステント治療(PCI)は1.26倍、バイパス手術(CABG)は1.32倍うつ病(Depression)を増やしました。ステント治療とバイパス手術の比較では差はありませんでした。

認知症(Dementia)は、薬物治療のみに比べてステント治療は0.65倍に減らしました。しかし、バイパス手術は0.90倍と、統計解析上減らしているとは認められませんでした。ステント治療とバイパス手術の比較では差はありませんでした。

なぜステント治療やバイパス手術ははうつ病を増やし、ステント治療は認知症を減らすか、その理由は今後の研究を待たなければならないと書かれてあります。

私が考えるこの研究の限界は、もちろん無作為割り付けがなされていないこともそうですが、多変量解析がなされていないということです。バイパス手術群ではステント治療群と比べて男性が多く、糖尿病と高血圧が少ないなど、両群の条件がそろっていません。これらの因子をバイパス手術なのかステント治療なのかという因子に加えて多変量解析する必要があります。

この研究の背景(研究が行われた地域、国、医療レベルなど)においては、男性は認知症になりやすく(例えばの話です)、バイパス手術群では男性が多いので、それが結果となって現れたという交絡因子が否定できないからです。

前向きで、無作為割り付けで、多変量解析で分析する研究が待たれます。

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