医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

慇懃無礼(いんぎんぶれい)

2006年07月31日 | 雑感
留学から帰国し、日本で診療を始めて1カ月がたちましたが、留学以前と変わってきた状況にとまどう事もあります。その中の1つに「患者様」という呼び名があります。

医療機関もサービス業であるという意味から、ファミレスの店員さんが客のことを「お客様」と呼ぶように、病院の事務員が患者のことを「患者様」と呼ぶのは納得できます。しかし、医者が「次の患者様お入り下さい」と呼ぶのが時代を先取りしているかのような風潮には疑問を覚えます。

初対面の患者さんならまだしも、過去に入院された時に徹夜で治療をし退院後も外来で担当している患者さんとの間には命を託した者と託された者の信頼関係が築かれています。そんな患者さんをあらためて「患者様」とお呼びするのは、患者さんにとっても水くさいと感じられるのではないかと思うのです。

慇懃無礼(いんぎんぶれい)という言葉があります。辞書によると「表面の態度は丁寧だが、心の中では相手を軽くみている・こと(さま)」ですが、医者にとって「患者様」という言葉はなにかしら慇懃無礼な感じがします。

さらにこの言葉は、医者が患者さんを別の専門医に紹介する時の紹介状にも現れてきます。「この患者様は5年前から糖尿病で・・・」というぐあいです。私は医者同士でも患者さんを患者様と呼ばなければいけないような風潮に違和感を覚えますし、そしてその違和感は、例えば市役所の職員同士で市民を「市民様」と呼ばなければならないと仮定した時に覚える違和感と同様だと思えます。

たしかに「市民」には弱者的な意味がなく、「患者」という言葉には弱者的な意味合いがあるかもしれないので状況が違うかもしれません。しかし、弱者的な意味合いに配慮している努力の証として「様」という言葉を付加して、それで解決したと解釈してしまうのも一種の思考停止だと思うのです。

このブログでは一貫して「医師」という言葉を使わずに「医者」という言葉を使ってきました。これは「医師」という言葉が「医療という技術を修めた者」として患者さんとの関係を含蓄していない言葉であるのに対して、「医者」という言葉は「医者」と「患者」、つまり医療を行う者とそれを受ける者という平等の関係を含んでいると感じているからです。

私は、患者に「様」を付けることよりも「医者」と「患者」の信頼関係こそが大切であり、信頼関係があれば「様」はいらないと思うのです。

みなさんはどうお考えでしょうか。


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