医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

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胃潰瘍の治療薬

2006年04月06日 | 消化器
逆流性食道炎、胃潰瘍、胃炎、十二指腸潰瘍は、胃酸の分泌が粘膜保護能力(粘液、血流、プロスタグランディンなど)を超えると発症しやすくなります。そこでこれらの疾患の治療にはヒスタミンレセプター2・ブロッカー(H2ブロッカー)やプロトンポンプ・インヒビター(PPI)という胃酸の分泌を抑える薬が使われます。一般にPPIはH2ブロッカーよりも胃酸分泌抑制作用が強いと言われています。

H2ブロッカーは昭和63年から発売されていましたが、10年ほど前にPPIが開発され、厚生労働省から定められた薬価はPPIがH2ブロッカーの2倍ですから、製薬会社は売り込みの姿勢を強めていきました。

しかし、日本人は欧米人に比較して胃酸分泌が弱いため、高い料金を払ってPPIを使用する必要があるのかという議論がありましたが、日本人での研究があまり進んでいませんでした。無作為試験ではないのですが、昨年にやっと日本行われた大規模臨床試験の結果が発表されました。

Minimal change oesophagitis: a disease with characteristics difference to erosive oesophagitis.
Alimentary Pharmacology & Therapeutics. 2005;Suppl 2:19.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

胃カメラが施行できた606人の外来患者さんを対象として、582人が解析可能でした。そのうち347人は非治療群、235人が治療群でした。

結果は、
1、逆流性食道炎は日本人の場合、非びらん性の場合が多くH2ブロッカーでコントロール可能であること。
2、上部消化管出血に関して、我が国では一般的に内視鏡的止血術が行われており、ヒスタミン刺激による胃酸分泌が主である絶食時にはH2ブロッカーの胃酸分泌抑制作用はPPIと同等であること。
3、抗炎症剤による潰瘍の場合、H2ブロッカーも有効であり再発抑制にも有効であること。

PPIはH2ブロッカーよりも胃酸分泌抑制作用が強いからPPIを使用するというのは、両者の薬価が同じ場合に言うことができるのであって、PPIの薬価がH2ブロッカーの2倍というのであれば、まずH2ブロッカーを投与し無効の場合PPIを使用するのが適切ということになりますが、最近では製薬会社の宣伝にのせられ、最初からPPIを処方するケースが増えてしまっています。

PPIとH2ブロッカーの薬価(胃潰瘍に1日2回使用する場合の1回分)
H2ブロッカー
ガスター20mg 68円
ザンタック150mg 59円
アルタット75mg 59円
アシノン150mg 57円
ストガー10mg 57円
タガメット400mg 40円

プロトンポンプ・インヒビター
オメプラール10mg 134円
オメプラゾン10mg 134円
タケプロン15mg 141円
パリエット10mg 231円


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