橡の木の下で

俳句と共に

「父のこと」橡会報 平成27年4月号

2015-04-05 11:06:18 | 俳句とエッセイ

父のこと   

 松明けて九日に父が緊急入院の知らせを受けました。二年ほど帰省しておりませんでしたので、今年こそは会いに行こうと心積もりしていた矢先でした。その日が山と聞かされて狼狽えましたが、幸いに一命を取り留め、それから約ひと月の闘病の末、二月二日に還らぬ人となりました。入院中は落ち着いた寝息の中に静かに眠り、安らかな寝顔のまま旅立ちました。一病を抱えながら母と姉の介護によって毎日規則正しい生活を続け、九十一歳の齢を全うすることができました。こうしたことは、人の世の常として皆様もご経験されたこと、あるいは今看取りの日々を送られている方もあるかと思います。

 俳人星眠のことは、私よりも皆様の方が深く理解してくださっていることでしょう。物心ついて此の方、父といえば小さな手帳と鉛筆を持って歩いている姿が思い浮びます。「俳句ありき」とも言える一生であったろうと思います。父の手伝いを始めた時から背伸びに背伸びをしてきた私を、今もどこかで笑いながら見ていてくれてやしないかと思います。優しい人でした。長い間父が大変お世話になりました。心より感謝申し上げます。

                亜紀子