橡の木の下で

俳句と共に

草稿07/01

2014-07-01 10:12:51 | 一日一句

梔子の立ち居にかをる屋内かな

見つけたり今朝七月の蝉の殻

亜紀子


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「創刊三十周年にあたり」橡会報 平成26年7月号

2014-07-01 10:00:00 | 俳句とエッセイ

創刊三十周年にあたり      亜紀子

 有楽町駅を出ると東京は初夏の光に包まれていた。街路樹の若葉がことのほか眩しい。花を掲げた紅花栃の木の下を通りお濠へ出て、日比谷公園の外周を眺めて行く。地下鉄口から出てくる人々の静かな行列は「緑の感謝祭」の立て看板の林野庁のイベントへ向かっているようだ。溢れる公園の緑。おうちの花の煙る紫。

 今年の五月大会は創刊三十周年を迎え、晴れやかな気が満ちていた。懐かしい顔も見える。その皆がみな口にされるのは、主宰との吟行が如何に楽しかったかということ。ちょうど主宰の卒寿記念の選集が発刊されたばかりである。選集中のあの句、この句がそうした吟行の折の作品であろう。誰もが忘れることのできない思い出として、つい昨日の出来ごとのように語られる。三十年は過ぎ去ってしまった時ではなく、いつも生き生きと胸の内にある時間。この時間の上に私たちの今がある。もし私たちがこの瞬間にオギャアと生まれたばかりであったら、そこにあるのは輝く混沌だけである。三十年の間に誰の上にもさまざまの時が流れた。それぞれの歳月の積み重ねの上に、「今」がいっそうの意味を持って輝く。この輝きをさらなる未来へ繋げ、俳句が俳句の魅力によって自ずから行き渡る道を見つけるために何ができるかを考える。


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