先週、知人の事務所で打ち合わせ中、小休止となって、「冷蔵庫にミネラルウォーターとか生茶とか入ってるから、勝手に開けて適当に飲んで」と言われた通り勝手に、適当にやっていたら、奥のほうにキリンビールらしき缶を、推定半ダース発見。
事務所に昼間からビールをストック?と訊いたら、以前は“昼オンタイム用”と“夜オフ用”の2基、冷蔵庫を設けていたそうですが、1基壊れたのでオンオフ兼用にしたとか。
意味がよくわかりませんね。
それはともかく、キリンビールはキリンビールでも、全面金色の見慣れない缶だったので、サッポロにおけるヱビス、SUNTORYにおけるザ・プレミアムモルツ的なポジションのラベル?と訊いたら、「残念でした。発泡酒。生活苦しいから」とのこと。
“KIRIN円熟 ENJUKU”。そう言えば昨年の今頃か、ハチャトゥリアン『仮面舞踏会』の一楽章が流れるCMを見かけた記憶があるような。
打ち合わせが明るいうちに終わってしまった上、一旦帰社するメンバーもいるので、いくらなんでも自分だけ勝手に一本いただいてくるわけにもいかず、帰途コンビニに寄ったら置いてなくて、お米屋さん兼業の、大きな酒屋さんにはありました“円熟”。
発泡酒・新ジャンルの“なんちゃって辛口”にはたびたびプチがっかりさせられているので、alc.6%と謳われてもどんなもんでしょう…と半信半疑で飲んだら、素直に美味しかった。嗜好品ですからあくまで個人の好みですが、同じKIRINの淡麗生シリーズよりこっちのが、断然と言っていいくらい美味ですよ。
ヤツがオフ用に推定半ダース、他の銘柄をさしおいてこれをストックしてあった理由がわかりました。今度は深い時間に打ち合わせが終わるようなタイミングで押しかけて行って、1本と言わず3本ぐらいかっぱらって来るとしよう。
KIRIN製の発泡酒は、同社の誇る“ラガー”の味をどこかでスタンダードとして、念頭に置いて作っているような傾向がありますが、この“円熟”は6%にもかかわらず、5%のラガーよりマイルドに感じます。高度数でありながら、ハードにドライにではなく、まろやかにこっくり方向なのは好感持てますね。
近場のコンビニ常備ではない様子なのが残念ですが、酒屋さんでは淡麗生、ZEROとも、サッポロの生絞りみがき麦、アサヒのスタイルフリー等ともお値段は一緒でした。高級、プレミアムっぽい金色缶に尻込みしては損。ちゃんと庶民の発泡酒です。
ビールの味って、化粧で言えばアイメイクのようなものだと思います。いくら目パッチリ、目鼻立ちくっきりの美人でも、日本人女性の顔の“目まわり”面積なんて知れています。ほんの1センチかそこらの幅に2色も3色も、4色ものアイシャドウやハイライトを塗り分け、アイラインが1ミリ長い短い、0.1ミリ細い太いで顔の印象がこんなに変わる、こんなに目が大きく見えるって騒いでいる。
ビールも同様で、泡が出てホロ苦くて飲みクチ・後味がサッパリ、というベースはみんな一緒で、あとは香味やらコクやらキレやらの、ほんの狭い範囲での高低・凹凸の世界です。
極端な話、「暑くて喉がかわいていれば、よく冷えてたら何社の何ラベルでも美味い」というのも正論。
それでも季節季節の変わり目に、各社必ず新製品・新ラベルをリリースするのは、ビールファンの心理に一定量「いつも飲んでるやつより、もっと美味いのがあるのではないか、あるに違いない」「いままで無くても、これから出るのではないか」という、静かに飽くなき野次馬根性みたいなものが存在するからでしょうね。同じ左党でも、ウイスキーや日本酒がメインの人には、こういう心理はないんじゃないでしょうか。
だから、ビール、発泡酒って、新しいのを出せば、少なくとも出した当座は、それなりに売れる。
「ただ洗うだけじゃないか」「ただ洗った後しっとりするだけじゃないか」と思うのに、次から次へとTV・新聞広告に登場する洗顔石鹸やスキンケア製品のよう。皆さん、もうウン十年も、毎日顔洗い続け、洗った後、何かしらつけ続けているのに、「ワタシの肌をもっと良くしてくれる、もっと良い石鹸が、化粧水が、美容液があるのではないか、あるに違いない」と心のどこかで思っている。だから次から次へと、異業種まで参入して、洗顔石鹸、スキンケア製品はリリースされ続けるのです。
肌をいまより良くするためには、肌の上っつらにいろいろ、ぺちゃぺちゃつけるより、まず内臓、内分泌代謝から。
早寝早起き、偏食間食、ジャンクフード、深酒を避けるのがいちばん………って最後の一つはどのクチが言うんだか。