イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

裸で悪いか

2009-04-23 15:11:34 | CM

コント55号を離れて、ピンでの活動が多くなってからの萩本欽一さんは、どこがどうというわけではないのですがどうも苦手で、おもしろいと思えなくなったので、“視聴率100%男”として絶頂にあった頃の萩本さんの番組はほとんど見ていません。

従って清水由貴子さんも、欽ちゃんファミリーの一員というイメージはあまりなく、“『スター誕生』でピンク・レディーよりもプロダクションの入札件数が多かった子”として細く長く記憶していました。

デビュー当時から、“母子家庭育ちで病身のお母さんと幼い妹のために頑張っている”という属性を前面に出しての活躍だったせいでしょうか、笑顔の写真でも底抜けに明るい感じにならず、どこか遠慮したような、おずおずした佇まいが印象的でした。10代の頃は線が細くはかなげなイメージでしたが、欽ちゃんファミリー押しになってからは庶民的雑草的な、働き者でたくましく生活感に満ちた肝っ玉お姉さん寄りでドラマでも顔を見ることが多くなり、ぶりぶり可愛い子ちゃんアイドルよりもこっちのほうが持ち味に合っていたなあと思っていました。

ただ、いま思えば東海昼帯ドラマの中でも高評価人気作の『幸福の明日』(2000年)で我が子が取り違えられる平凡な主婦に扮したときも、それなりのヘアメイクであるにもかかわらず、どこか骨の髄までオカンではなかったように思う。“自分が母親でいいのか?”“母親という立ち位置に戸惑っている”ような気配がつねに微量あり、それが劇中の橋本かな子が遭遇する数奇な運命や状況での翻弄され感につながって、我が子取り違いドラマのテンションを保つのに貢献していたような気がするのです。

先日の、あまりにショッキングすぎる自殺の報に接すると、清水さん自身が一度も結婚の経験がないだけではなく、幼少時から“お父さんお母さんが揃った安定した満ち足りた家庭”の味をまったく知らずに、懸命に台本を読み込み、想像力をはたらかせて演技していたのだなと、改めて胸を打たれます。

現場の状況が状況でもあり、母上の介護に専念するため芸能活動引退していたなど、ここ数年の暮らしぶりが報じられるにつけ“長年月の介護疲れ”もしくは“自身の更年期(49歳)と相乗しての鬱状態”“老実母と独身長女ゆえの共依存”などと取り沙汰されていますが、個人的・家庭的すぎ、実態が媒体を通じての又聞きの、そのまた又聞きになるせいか、月河はあまりそっち方向には深刻な感銘を受けません。

それより、“元気”“明朗”“前向き”“頑張り屋さん”というセルフイメージが強いる消耗の残酷さを思います。なんとなく、ZARD坂井泉水さんの闘病中転落死とも重なる。

「いつも笑顔で、明るく元気」でなければ、“清水由貴子”という商品が成立しない。30年来の実績もあり顔もつながっていて実入りもいいはずの芸能の仕事から退いた原因はそこなのでしょうが、顔をさらさない仕事に転職しても、たとえば月河のような地方在住のいちシロウトにすら“ピンク・レディーを上回った”ぐらいの記憶は持たれている。自分でも「明るく愛嬌あってこその私」「明るい笑顔のできない私なんか、私が嫌い」と思ってもいたのではないでしょうか。落ち込んだとき落ち込んだ顔をし、不機嫌なとき仏頂面をし、情けないとき人目もはばからず泣きべそをかく自由は、清水さんは生涯一度も持てなかったはずです。

人類史上類例をみない長生き社会、少子化社会日本において、実親の老後にどう対応するかは万人の“そこにある危機”です。老後をまたず両親ともに若々しいまま逝ったという人は少ないでしょう。

それプラス、最近の日本は“明るさ”を過大評価しすぎ、というよりほとんど「どうにかして明るくしていないと大変な事になる」という強迫観念に浸されているような気さえする。

スターやアイドルに憧れた幼い日も人並みにはあった月河ですが、月河を“いつも明るくほがらかで、笑顔と元気を振りまいている”人間と思っているであろう人は、何と幸せなことに、近隣にも身内にも職場にも誰もいません。賭けてもいいがいません。

もちろん社会生活上、なるべく好感度高く、“無愛想な人”“感じ悪い人”“根暗な人”と思われないほうが圧倒的に世渡り有利だったに決まっていますが、清水さんの生前の、茶目っ気と温かさに満ち、一抹の含羞をただよわせた笑顔の遺影を媒体で見る機会が増え、“暗いとき好きなだけ暗くしていられる”身の幸せをつくづく思ったこの一両日でした。

あと、今日はニュースページを見て一言「どうするんだ地デジ」

……そうでなくても拙速だ、利用者置き去りだとさんざん言われ、麻生さんが選挙対策かたがた買い換え切り替え支援策発表したばかりなのに、よくよくけちのついた施策になってしまいましたねぇ。

それと、酒は本能の重石を取っ払い解放すると言いますが、飲むと脱ぎたがる人、果てしなく最後の一枚まで脱ごうとしてやまない人っているものですよね(月河は違いますよ)(本当に違いますよ)。その一方で、飲むと着込みたがる人って見かけませんから、やはり人間の、本能に忠実な姿はマッパなのか…ってこの話は改めてまた。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする